第55話 資源循環が可能な社会へ~列強各国との軋轢
平和主義者であるユージにとって、戦争とは無益で不毛で、忌むべきもの。
しかし、お互いがお互いの正義と利益のために、戦わざるを得ないのか?
ユージたちタスクフォースは、またもこの難局を乗り切ることが出来るのか?
「リシューン!!
どうにかしてくれぇ!
俺はまだ死にたくないよぉぉぉ。」
鳴きながら俺はリシュンの足元にしがみつくのであった。
「普通に戦ったら、勝てる訳ないよね?
瞬殺だよね!
俺はさ、平和主義者なんだよ!
もう誰も殺したくないの!
頼むよリシュン!
敵の兵器が使えなくなって逃げだすような、なんかすごいの考えてよ!」
少し考えていたリシュンは、つぶやいた。
「そうだな。
強力な電磁パルスで最新の兵器にダメージを与えるのは、ありなんだけどな。
ただ、最近はEMP耐性設計されてる兵器が多いんだよな。」
俺は聞いた。
「電磁パルス?EMP耐性設計?
なんじゃそりゃ?」
リシュンは薄笑いを浮かべて言った。
「リーダー、太陽フレアって聞いたことあるか?」
「う~ん、なんとなく」
「じゃあ、そこからだな。
太陽フレアってのは、太陽の表面で突然発生する爆発的な増光現象で、膨大な量の電磁波や高エネルギー粒子を宇宙空間に放出するんだ。
特に、強力なパルス状の電磁波のことをEMPと言って、電子機器の回路を損傷・破壊するんだ。
最近、小さな家電だって電子制御の技術を使ってないものなんかほとんど無いだろ?
軍事機器も同様なんだ。
自動照準とか、自動追尾とか、熟練の兵士じゃなくても、上手く扱えるものばかりだが、それらがすべて使えなくなったら、って想像してみたらいい。
恐ろしいだろ?
ドローンだって飛ばないし、カーナビもスマホも役に立たないんだぜ。」
「そりゃ困るなぁ。戦争どころじゃなくなるじゃん!
通信も出来ない、飛行機も飛ばない、船も航行不能、トラックも動かないってことは、とてもじゃないけど戦争どころじゃないじゃん!
尻尾を巻いて逃げ帰るしかないね!
ざまあ見やがれってやつだよ!
しかも人殺しもしないで出来るんでしょ?
いいねえ、それやってよ!」
ところがリシュンは、難しそうな顔で言った。
「いや、事はそう簡単じゃないんだ。
確かに、EMPの影響で、戦争継続は難しくなるが、事が重大なため、その対策も行われている。
EMP耐性設計の軍事機器も増えて来ているし、バックアップ機能の強化も行われている。
もちろん、すべての軍事機器がそういう対策を施されている訳じゃないが、重要な施設や機器は優先的に何らかのEMP対策が施されていると思った方がいい。」
「じゃ、ダメじゃん!
でもさ、その対策ってのも、完璧じゃないんでしょ?
だったらさ、それを上回るスーパーな電磁波を見舞ってやったらいいんじゃない?」
リシュンは、あごに手を当てながら言った。
「高高度核爆発か?
廃炉にした魔導発電所に残った燃料から、濃縮魔素を作って、宇宙空間で爆発させることで、太陽フレアを大きく上回る強力かつ広範囲な電磁波を発生させることは可能だ。
その場合、今のEMP対策技術では防ぎきれない影響が生じて、すべての電子機器が作動不能もしくは誤作動を起こすだろう。
しかしさすがに高高度核爆発を使うと、俺たちの国への影響も甚大になるし、戦後処理のことを考えても、ちょっと無いな。
いや、AIの愛ちゃんのおかげで、敵の軍事施設の正確な位置や規模などの詳細は掴んでいるから、指向性EMP兵器でそこをピンポイントに狙い撃つってのはありか。」
AIの愛ちゃんは、RPGを通じてすでに全世界に広がっており、各国の国民から個別に情報を収集していた。
その中には、軍事関係者も多く、自慢話や愚痴の中から、AIが的確に情報を纏め、複数人の証言からその正確性を担保していたのである。
特に、地位が高い者ほど孤独にさいなまれており、愛ちゃんのトークにメロメロになっていた。
「主要なインフラを壊滅的な状況に追い込んでから、サイバー攻撃を仕掛けたら、戦わずして敵国の無力化は可能だな。
リーダー!それだ!あんたの案を採用するぜ!」
そう言いながら、リシュンはまた走り去って行ったのであった。
後に残された俺は、冷や汗をかきながら、独り言ちた。
「それって何?
あんたの案ってどういうこと?
ちゃんと説明して欲しいんですけど…」
その後、程なくして、リシュンは最新鋭の指向性EMP兵器を完成させたのだった。
まさに、天才のなせる業と言えた。
そしてこれにより、戦局は大きく変化することになることを知る者は、この時まだ誰一人いなかった。
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さあ、作戦と準備は出来上がりました!
いよいよ殺さない戦争の始まりです!




