第51話 資源循環が可能な社会へ~RPGの使い方
人は、基本的に現状打破が苦手な生き物です。
冒険物語に人気が出るのも、リスクを負わずにワクワクできるからだと思うんですよね。
でも、腹落ちした途端、意見が180度変わるのも、これまた良くあることです!
リシュンが作った新しいRPG”理想の幻想国家”はまごうこと無き傑作だった。
ただのゲームでは無かった。
それは、魂を揺さぶる叙事詩であり、プレイヤーの人生に刻まれる芸術作品だった。
国家と信仰、技術と魔法が複雑に絡み合う、まるで現代社会の縮図のような世界観。
音楽も、ただの音楽では無い。
たった数音で、プレイヤーを過去へ、未来へ、そして心の奥へと誘う、まさに記憶を呼び起こす魔法だった。
そして、「正義とは何か?」「犠牲の上に成り立つ平和に意味はあるか?」「記憶は人を縛るか、導くか?」といったプレイヤーへの問いかけが秀逸だった。
しかも、プレイヤーに問いを投げかけつつも、答えを強要しない。
選択の自由を尊び、物語の余白にこそ真実があると教えてくれる。
そのゲームは人生の一部であり、魂の旅路であり、そして何より、人間の想像力が生み出した奇跡だった。
そしてそれは、単なる娯楽ではなく、思想と感情の交響曲なのだった。
「リシュンすげえ!
こんな面白いゲーム、初めてやったよ。
しかも、俺たちの考えと完璧にシンクロしてやがる。
これなら、プレイヤーはイチコロだな!ぐふふふ。」
何やら、ゲスなことを考えている輩がいた。
そう、我らがユージだった。
そんなユージに気付かず、ゲームをクリアしたタスクフォースのメンバー達が、口々に思いの丈を述べていた。
「すご過ぎる…。
これをリーダーが考えたと?
なんという、深遠な思索とエンターテインメントに溢れた思考、そして芸術的な世界観。」
「この人は、とんでもないものを盗んで行きました。」
「いいえ、おじさま。あの方は何も取ってなんかいませんわ。」
「いや、奴が盗んで行ったのは、あなたの心です。」
「はい!確かに!」
そんな名作アニメにそっくりな会話が、ミーティングルーム内に流れた。
俺は、皆に向かって言った。
「じゃあさ、このゲーム流行らせてよ!
世界同時発売とか、全星が泣いたとか適当に言って、国民を煽ってさ、この国だけじゃなくて、この星に住んでる人たちみんなに広めようよ!」
サトータは、腕を組みながら言った。
「そうだな。プロモーションは大事だな。
そして、この傑作が全世界の人々に浸透した時、歴史が動くな。」
ナーチャンがそれに続いた。
「では、ワタクシのタレント、戦略と、リシュンさんのタレント、情報を活用して、プロモーション施策を展開しましょう。
「まあでも、リシュンはAIの開発もしなきゃだから、ここは温存して、タケシトでも使ったらどう?」
どうせあいつ、何もしてないんだから、少しぐらい働かせてもいいだろう、と思っての俺の提案だ。
それを聞いたナーチャンは、ポンと手を打って言った。
「そうですね。タケシトさんのタレント、エンターテインメントを使った方が、自然に世界に浸透するかもしれませんね。
さすがユージさまです。
人の使い方が素晴らしいですね!」
うーん…。
俺は単に忙しいリシュンにこれ以上仕事させるよりも、暇を持て余している奴を働かせた方がいいと思っただけなんだけどな。
人なんか使ってないし。
まあでもいいや。
適当に答えておこう。
「いいかいナーチャン、俺は昔、ばあちゃんからこう言われたんだ。
”人の嫌がることを進んでやりなさい”ってな。
俺は、その教えをいままでずっと守って来た。
今回もそれと同じさ。」
少し考え込んでいたナーチャンは、こう答えた。
「なるほど、人を強制的に働かせると、自分に不満を持たれたり、嫌われたりすることがありますね。
ワタクシにその役目を負わすのではなく、ユージさま自ら嫌われ者になるリスクを負って、タケシトさんに仕事を振ったと、そういうことですね!」
俺は即座に否定した。
「いや、違うんだけど。
俺は、怠け者のタケシトに仕事を振ったら、タケシトが嫌がるだろうなぁと思って、進んでタケシトの嫌がることをしただけだよ。」
皆が口を揃えて言った。
「ちが~う!!!おばあちゃんが言いたかったことはそうじゃ無い!」
俺はきょとんとして言った。
「え?違うの?なんで?」
ナーチャンが、いつものジト目で俺を見下しながら言った。
「ユージさまのおばあ様がおっしゃりたかったことは、他人が嫌がって敬遠するような仕事を、他人に押し付けるのではなく、損だとわかっていても自ら率先して引き受けることによって、徳を積むことができるという意味です。
決して、人をいじめて喜べという意味ではありません!」
俺は頭をかきながら、
「なんだそうだったんだ!
俺はすっかり誤解して、いままでさんざん人の嫌がることを進んでやってたよ、ははは!」
ナーチャンは額に青筋を立てながら言った。
「ははは、じゃありません!
今まで嫌がらせをして来た人たち、一人ひとりに頭を下げて誤って来てください!
ホントにもう!」
そして俺は、ミーティングルームを追い出されて、菓子折りを買って謝罪行脚をするハメとなったのだった。
まったくツイてないぜ、トホホ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
こんにちは、作者のアズマユージです!
『産廃屋のおっさんの異世界奮戦記』を読んでくださりありがとうございます!
もし「ちょっと面白いかも」と思っていただけたら、ブックマークや感想をいただけると励みになります。
今後も、異世界×環境問題×おっさんの奮闘を描いていきますので、よろしくお願いします!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
RPGで、現実とファンタジーの境を取り除いて、人の心を動かす。
あり得ないことでは無いのでは?




