第46話 ポスト資本主義~暗殺部隊
「諸君!
諸君に作戦を伝える。
我々は、明日の午前2時、マルフタマルマルに、彼らのアジトに突入する。
目的は、タスクフォースのリーダー、勇者ユージの暗殺と、他のメンバーの無力化だ。
サポート部隊は、その直前に対人センサーと監視カメラをジャックしておけ。
突入は、俺を先頭にアタック部隊全員で行う。
この作戦には、西側諸国の命運がかかっている。
くれぐれも抜かるなよ。
さあ、掃除の始まりだ!」
CIIAからの連携により、特殊部隊である『デルタ地帯』がジャポネ王国に派遣された。
その中でもトップクラスの実力を持つチーム、通称『宵闇の黒パンツ』のリーダー、グロゲーロは、作戦を隊員に伝達した後、緊張の面持ちでその時を待つ。
「リーダー、やけに気合い入ってるな。
なんかあったのか?」
序列第二位のスカトーロは、からかうように隣りに控える同僚に聞いた。
「そりゃそうだろ。
何せあのスランプ大統領様の肝入り案件なんだぜ。
成功すりゃあ莫大な報酬が約束されているが、失敗したら悲惨な未来が待ってるって訳だろ?
そりゃ気合いも入るってもんだぜ。」
「しかし、相手はたったの6人、しかも半分は女で、残りも一般人なんだろ?
わざわざ大国No. 1の俺たちが出張って来る必要なんかあるのか?
トゥーマッチだろ?」
「念には念をってことなんじゃないのか?
まあ、お前の言うことは間違って無いと思うがな。
つまりはチュートリアルレベルのサービスステージだってことだろ?」
「まったくだ。
しかも報酬がとんでもないと来た。
ホントツイてるな、俺たち。」
宵闇の黒パンツの面々は、楽勝ムードに気を良くしながら、その時が来るのを待っていた。
そして、時計が午前2時を指し、いよいよ作戦決行というその時、太った男がスキだらけの姿勢で彼らの前に立っていた。
ダボっとしただらしない服を着て、武器すらも持っていない。
後方部隊が無力化したはずのセンサーが反応して、緊急を告げるサイレンが鳴り響いている。
赤色灯が点滅して、危機感を煽る。
スカトーロは軽いステップを踏みながら一歩前に出て、ファイティングポーズをとった。
太った男は、緊張感に欠ける表情で、鼻くそをほじりながら言った。
「お前ら何してんの?
ここはお前らが気軽に入って来ていい場所じゃないんだけど?」
それに対し、スカトーロはは余裕の半笑いで答えた。
「残念ながら、俺たちは、さる筋から頼まれてやって来ててな。
悪いけど、見られた以上は捨て置けないんだ、死んでもらうぜ。」
そう言うや否や、グッと踏み込んで、男の腹にボディーアッパーを叩き込んだ。
「ちょっと何すんだよお前!
いきなり人のお腹を撫でるとは、さてはスーパーセクハラ野郎だな!」
「誰がセクハラ野郎だ!
ってか、俺のボディーアッパーくらって効いて無いのか?!」
それを聞いた男は、両腕を軽く上げながら半身に構えて言った。
「お前はもう死んでいる、アチャー!!」
スカトーロは、腹を押さえながら叫んだ。
「な、何だと!いつの間に!!
この野郎!!」
その直後、スカトーロのズボンがスルスルとずり落ち、派手な杖を持った魔法少女のマンガが描かれたパンツが衆目に晒された。
それを見たリーダーのグロゲーロが叫んだ。
「お前!なんちゅうパンツ履いとるんや!
俺たち宵闇の黒パンツが履くパンツは黒に決まってるだろ!
無いわぁ!魔法少女は無いわぁ!
恥を知れ!!」
慌ててずり落ちたズボンを引っ張り上げ、スカトーロが叫んだ。
「リーダー、それどころじゃねぇ!
こいつ、アホみたいに強いぞ!
対峙した俺にはわかる!」
「ん?」
宵闇の黒パンツのリーダー、グロゲーロは、その太った男をじっと見てから、ハッと驚いた顔で言った。
「タケシトさん?
いや、間違いない!あんた、タケシトさんですよね?
あの、史上最強、空前絶後、焼肉定食の二つ名を欲しいままにした、デルタ地帯、最強最悪の伝説の工作員、タケシト・ミザワさんじゃないですか!
こんなところでお会いできるなんて、感激です!
もし良かったら、握手してください!」
「ちょっと何言ってるかわかんないんですけどぉ」
そう言いながらも、タケシトはグロゲーロの手をしっかり握って言った。
「もういいたろ?気が済んだら帰ってくんない?」
グロゲーロは、天を仰ぎながら言った。
「わかりました。
タケシトさんが相手なら、特殊部隊が全員で束になってかかっても、カスリ傷ひとつつけられないでしょう。
ここは潔く引くとしますよ。
しかし、こんなところでタケシトさんにお会い出来るなんて、ホントびっくりです!
この手は一生洗いませんから、ご安心ください!」
「いや、洗えよ!家帰ったら真っ先に洗えよ!
あと、俺のことは内緒な!
誰にも言うなよ。」
「わっかりましたぁ!
大船に乗ったつもりで、おまかせくださーい!!」
「こりゃ言うな。」
「ああ、すぐに言うな。」
「ってか、みんなに自慢までするな。」
「間違いない!」
異口同音に、次のグロゲーロの行動が読まれてつぶやかれていた。
それほどまでに、彼の感情はだだ漏れだった。
西側諸国最強を誇る、特殊工作部隊『宵闇の黒パンツ』のリーダーにして、現役最強のグロゲーロが、である。
タケシトは、それほどまでにレジェンドだったようだ。
ちなみに、対人センサーと監視カメラは、リシュンの防衛プログラムに守られていたので、しっかり作動しており、この映像が後日の外交における重要な切り札となったのは、言うまでも無い。
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