第41話 ポスト資本主義~最大の抵抗勢力
抵抗勢力の一翼が見えて来ました!
その頃、城内では最大与党フリーダム党の党首イソバ・スグルと、国内最大財閥のスミビシグループ総裁である、ゼンザワ・ナオーキが、その側近たちとともに密会をしていた。
「イソバさま、最近タスクフォースの連中が目立ち過ぎでいますな。」
「そうじゃな。しかし、あれだけの成果を上げられたら、認めざるを得んのだ。」
「しかしですな、国家レベルでの人材のトレードや、ドラフト制度など、我々の優位性を脅かすものに他なりませんぞ!
我々の利益を損なうとなれば、多額の政治献金についても考え直さなければならなくなりますぞ。」
「それは困るよゼンザワ君。
政治には金がかかるのだ。まあ待っておれ。
どうも彼らは、またもや良からぬことを考えている様子だ。
裏から手をまわしてこれを潰すことで、国王さまからの彼らへの信頼に泥を塗るようにしようじゃないか。
これ以上、奴らの好きにさせてはおけん。
この国は、我々フリーダム党が牛耳って来たから、ここまで発展したんじゃ。
一度焼野原になったこの国が、こんなにも豊かになったのは、誰のおかげじゃ?
国民にも、それを再認識させねばならんし、ましてや、いくら王女が召喚したからと言って、ぽっと出の若造に好き放題させる訳にはいかん!」
「その通りです、イソバさま。
奴らに任せておけば、公平平等の錦の御旗を掲げて、我々特権階級に不利な改革を行うでしょう。
しっかりとしたリーダーのいない組織に、未来はありません。
ここはぜひ、奴らをぎゃふんと言わせましょう!
我々も全力で協力しますぞ!」
「おー、ゼンザワくん、頼もしいのお!」
「とまあ、白昼堂々と、王城内でとんでもない話をしていた連中の映像だ。」
リシュンが、メインモニターを指さしながら言った。
俺は、リシュンに向かって聞いた。
「おい、リシュン!これはどうやって手に入れた映像なんだ?」
「国王さまの許可を頂いて、王城内のすべての部屋に、AI制御の盗撮機をセットしておいたんだ。
会話の内容をAIが判断して、コンプライアンス上問題ありと判断した場合のみ、映像を公開する。
これによって、プライバシーに配慮しつつ、公安的な動きが可能って訳だ。」
「なるほどね。
確かに、映像を人がチェックしてると、手間暇もかかるし、見ちゃいけないものも見えてしまうもんだ。
だから、感情の無いAIにチェックさせるってのは、理にかなっているな。」
「まあ、どこまでがコンプライアンス上問題かっていう線引きは必要なんだがな。
不倫現場をキャッチしたとして、それを問題視するかどうかって話だ。
しかし、光源氏が不倫しまくっているドラマを見て感動してる奴らが、芸能人の不倫は許せないってのも、おかしな話だよな。
そもそも、1947年の刑法改正で姦通罪が廃止されて以降、不倫を裁く法律は無いんだ。
つまり、不倫は犯罪じゃないってことだな。
せいぜい、民法上の不貞行為として、配偶者や、不倫相手の配偶者から損害賠償請求をくらうくらいだな。
それが、芸能人の不倫がバレたとたん、関係ない人たちがわらわらと寄ってきて、ネットを中心に批判の嵐だ。
まあ、有名税だと言えばそれまでなんだが、なんか変な世の中だよな。」
俺は、腕を組みながら言った。
「まあ、そうだよな。
企業もさ、セクハラやパワハラを断罪する姿勢を強化するのは、すごくいいことだと思うよ。
いままで、セクハラされても泣き寝入りしていた人たちが、ちゃんと声をあげられるようになったんだからね。
でもね、おかげで課長以上の偉いひとたちは、飲み会の2次会に参加しちゃいけないなんて通達が出来たりしてるらしいよ。
確かに、セクハラは酔っぱらってる時にしちゃうことが多いってのはわかるけど、みんなが2次会に行くのに、じゃあ俺は課長なんで先に帰るわ、なんて言って帰って行くなんて、なんか寂しいよね。」
サトータも頷きながら言った。
「その通りでござるな。
転勤があれば送別会、誰かが昇進したらお祝い会、年度の終わりにはご苦労様会、ほかにもクリスマス会やハッスル会など、何かにつけて飲み会をするのが、普通の会社なのでござるよ。
その都度、部長や課長の寂しそうな後ろ姿を見るのは、忍びないでござる。」
リシュンは、気を取り直して言った。
「すまん、俺のせいで話が横道に逸れてしまったな。
元に戻そう。
とにかく、フリーダム党とスミビシ財閥は、抵抗勢力で決まりだな。
それと恐らく、各政党や大手企業の役員クラス以上、中小企業のオーナー、地主などの資産家なんかは、みんな抵抗勢力と見て間違い無いだろうな。」
それを聞いて俺はつぶやいた。
「みんな力のある連中だよね。
まさに、今のこの国で幅を利かせている奴らってことだよな。」
「そういうことだ。
なので、国王も二の足を踏むし、ナーチャンもリーダーのタレントを使いたがっている。
それだけ難しい案件だってことだ。」
「だからそれは嫌だってば!
1回使えば、全身ツルツルで二度と毛が生えない、2回使えば男としての機能がなくなって、3回使えば死んじゃうんだよ!
甘んじて1回目のツルツルを受け入れたとして、いつまた2回目を使わざるを得ない事態が起きるかわかんないじゃん!
それじゃないと人類が滅ぶとか言って、無理やり2回目使わさせられたら、目も当てられないじゃん!
そういうのは、温存しとかないとダメなんだよ!」
俺は必至で抵抗したのだった。
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