第40話 ポスト資本主義~敵を知り己を知れば
敵を知り己を知れば百戦危うからず。
孫子の兵法の有名なフレーズですね。
まずは、誰が敵対するかを見極めるのが重要です!
「結局さ、誰が抵抗しそうかって話だよな。
平等公平になって困る奴ってのは、要するに今、いい思いをしてる連中だよな。」
リシュンが続く。
「日本の個人金融資産の世帯別平均値は、約3000万円なんだ。
なんか、多い気がするだろ?
これは、一部の大金持ちのせいで、平均が上がっちゃってるせいなんだ。
より、実態に近いのが中央値って言って、左から順番に並べると、ちょうど真ん中の数字なんだが、これはだいたい1000万円から1500万円。
まだ多いと思うだろ?
さらに、最頻値って言って、まあ、一番多い層だな。
これはなんと、300万円から500万円なんだ。
とても平等公平とは言えないよな。」
「なるほどねぇ。
その個人資産をガラガラポンして、貯金の上限を作っちゃおうって話かぁ。
真ん中よりちょっと上の1500万円くらいにしたら、国民の半数を敵に回すってことだな。
そりゃキビシイなぁ。」
ナーチャンはすかさず言った。
「ですので、ユージさまのタレントを使ってですね!」
その言葉を途中で遮って、俺は叫んだ。
「シャラ~ップ!!それは嫌だって言ったでしょ!しつこい!!」
その様子を見ていたリシュンが、笑いながら続けた。
「まあでも、一番抵抗が強いと思われる、金融資産残高1億円以上の連中ってさ、全体の3%しかいないんだぜ。
民主主義の原則の多数決を取ると、間違いなく貧困層が勝つぜ。
まあ、それもこれも、制度設計次第なんだけどな。
最も多い層に刺さる政策を掲げることが大事だな。」
隣で聞いていたイコタンが、口を開いた。
「そもそも、国民の声を代弁するはずの政治家が、金持ちだったり金持ちの後ろ盾で活動したりするから、大多数の国民のための政策が出て来ないんですよね。
選挙前になったら、財源の無いばら撒き政策をアピールして人気取りをしたり、奥さんと一緒に土下座して同情票を狙ったり、やることがいちいちセコいんです。
選挙に行く人の何割が、立候補者の政策全体を俯瞰して、その妥当性を確認しているのか、疑問です。」
「確かにその通りでござるよ。
政策を調べてる人だって、子育て世代だから授業料免除を政策に掲げている候補者を選ぶとか、直接自分にメリットがある政策にしか気にして無い。
で、その財源は?とかを考えないと、ますます国の借金が膨れて、そのツケが子供たち世代に回されることになることには気付かないか、気付かないフリをしている。
それでも、政策を確認してる人はまだマシで、大半の人は、何となくこの政党、とか、なんか聞いたことあるからこの人とか、顔がいいからこの人、とか、適当に選んでいるのが実態でござるよ。」
「そうだね。まあ、それでも選挙に行くだけでも偉いよ。
一票なんて、関係無いやって投票を放棄しちゃう人も多いからね。」
リシュンが、目を輝かせて続いた。
「そうなんだよ、リーダー!
国民の政治への意識が薄れてしまっているということは、民主主義の制度事態に歪みが出ているってことで、つまり現状の民主資本主義自体が、時代遅れになっているってことなんだ!
だからと言って、帝国主義や共産主義って言うのも短絡的だ。
俺が言いたいのは、これからは、民主資本主義の欠点を改良した、新たな統治制度とポスト資本主義への改革が必要なんだ!」
「わかるよ!それはわかるんだ!
だから問題は、俺のお毛毛ちゃんを犠牲にしないで、どうやってそれを実現するのかってことだろ?
そこんとこ、どうなのよ?」
ナーチャンが、いつものように少し俯いて考え込みながら、パっと表情を明るくして話し出した。
「そうですね!ユージさまのおっしゃる通りです!
いつもながらさすがです!
選挙で政治家を選んで、その政治家に国の運営を託す方式は、もう古いです!
我々には、シャチョーさん1号があります!
これを改良して、国民が日々対話したくなるAIを開発し、それぞれの意見を全て集約した上で、AGIが政策案を出す。
そしてそれを国王が承認して、官僚が動く!
こういう仕組みにすれば良いのですね!」
しかし、そんなナーチャンに、俺は静かに言った。
「たぶん、解決の方向性は、それで間違っていない。
問題は、どうやって反対派を抑え込んでそれを実現するかの方法論だ。
現在、政治的に最も力を持っているのは、財政・経済・外交を担う各大臣たちだ。
そして、彼らはみんなお金持ちだ。
そいつらを敵に回して、勝算はあるのか?」
そう、俺は今まで、長いものには巻かれる方針を貫いてきた。
言いたいことをぐっと堪えて、愛想笑いをして来た。
それもこれも、争いになると、間違いなく今より大変になるからだ。
しかもここは異世界。
下手をすれば殺される。
クビちょんぱなんて、まっぴらごめんだ。
なんで俺が、縁もゆかりもない国の国民のために、殺されるほどの危険を冒さないといけないのか?
いや、冒さないといけない理由は無い。
つまり、わざわざ俺が動く理由が無い!
そう思っていたのだが、ナーチャンが嬉しそうに言った。
「もう、ユージさまったら、謙虚って言うか、奥ゆかしいって言うか、つまり、シャイなのですね!」
いや、違うし!
俺はただ単にあぶないことが嫌いなだけなんだってば!
勝手に俺を聖人君子に祭り上げて、危ないところに連れて行かないで!
ホントの話。
俺は、そう思いながら、ナーチャンに言った。
「いやいや、いつも通り俺は単に感想を言っただけで、深い意味は無いよ。」
それに対して、ナーチャンは、
「ユージさま、わかってますよ。
いつもと同じですよね?
ユージさまは、ワタクシたちの何歩も先を見越して、情報を小出しにしていらっしゃるんですよね?
今回も、ワタクシには概要しかわかりませんが、必ずやユージさまの思いの深淵に少しでも近づけるよう、精進して参る所存でございます。」
いや、ホント違うから!
そういうの、やめて!!!
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相変わらず、話がかみ合いませんが、なんとなくいい感じになって来た、のかな?




