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産廃屋のおっさんの異世界奮戦記〜適当に異世界に召喚されたのに、世界を救えなんて無理ゲーじゃね?〜  作者: アズマユージ
ポスト資本主義

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第39話 ポスト資本主義~ポスト資本主義って何?

ユージの能天気なやる気なし発言を受けて、みんなはどんな反応をするのか?

まあ、皆が働き好きってのも、なんか変ですよね。

「でもやっぱりさ、あんまりあくせく働かなくてもいいようになって欲しいね。

それにさ、生まれた時から平等公平じゃないってのも、なんだかなぁって感じだよね。

俺だってスタイル良くてイケメンで、親が金持ちでかわいい幼馴染の女の子がいる世界に生まれたかったよ。」


俺のアホな子供のような発言に、ナーチャンが少し考えた後で言った。


「そうですね。極限まで労働生産性を高めて、生産労働人口が少なくても老人を含めた国民の生活維持が可能になれば、とりあえず少子高齢化問題はあまり気にならなくなりますね。

もちろん、介護問題などの課題は残りますが、それも介護ロボットなどで将来的には対応可能でしょう。

ただ、現在の制度では、生まれながらに格差が生じており、皆が平等公平に支え合うことは難しいでしょうね。

累進課税制度や社会保障制度で、ジニ係数は0.33まで緩和されていますが、再配分前のジニ係数は0.49と大きいのが実情です。」


「ジニ係数?なんじゃそりゃ?」


「所得や資産の分配の不平等さを測る指標です。

ジニ係数は、0から1の数値で表されて、0だったら完全平等、1だったら完全不平等です。

0.33というのは、諸外国と比べて、まあまあ平等ですが、格差は大きいと考えた方が良いですね。」


俺はあごに手をやりながら、

「なるほどねえ。でもさ、人間生まれながらに不平等ってのは、なんか納得行かないよね。」


ナーチャンは、少し残念そうに言う。

「そうですね。まあでも、容姿だって運動神経だって頭脳だって、生まれながらにしてある程度決まってしまいます。富の偏在はどうしても生じますし、資本主義社会の根幹ですから、なかなか改善は難しいですね。」


俺はあまり考え無しに言った。

「やっぱりさ、その資本主義がもう限界なんじゃないの?

かと言って、共産主義もちょっとねえ。

他に無いのかね?」


ナーチャンは頷きながら言った。

「そうですね!

ポスト資本主義とか、分配型市場社会とか言われているものがあります!

定義はさまざまですが、私が推すのは、ベーシックインカムと蓄財制限を併用した社会です!

ちなみに、ベーシックインカムは、BIと言います。

労働生産の成果は、一時的に国が保有します。税率100%ってことですね。そのかわりに、国民全員が、健康で文化的なかつある程度ゆとりのある生活を送るための必要資金を国が分配します。

その差分は国家財政に帰属することになります。

ただしそれでは、一生懸命働いた人とサボった人とが同じだけのお金を配分されてしまうので、労働意欲の減退につながります。

したがって、個人の労働の評価を行ったうえで、それに見合った金額を国が支給しますが、その蓄財に上限を設けます。

ちなみに労働の評価は、リシュンさんのAIにやってもらいましょう。

相続も認めません。

これにより、労働意欲の低い人はベーシックインカムのみの支給で満足し、労働意欲の高い人は、それなりに稼ぐことが出来るため、完全なる共産主義の課題である労働意欲の促進についても、一定の対策とはなります。

つまり、AIとBIによる平等公平で快適な社会の出来上がりです!

そういうことですね!ユージさま!

いつもながら言葉足らずで困ります。

一瞬、ただの怠け者かと誤解するところでした!」


うん、俺の発言はその、ただの怠け者の意見ってことで誤解じゃないんだけどな。

そして俺は言った。

「そっかぁ。リシュンの最新鋭AIであるAGIと、自動開発ロボットの開発で、すべて問題解決!タスクフォースはこれにて解散、ご苦労様でした!ってなるかと思ってたら、まだまだやることは多いんだな。まあ、ハード面とソフト面の両方の改善が必要ってことか。」


「その通りです、ユージさま。

やはり、リコタンの施策を考える際にも問題視しましたが、現在の資本主義社会は無駄が多すぎます。

今までは、それでも景気が良くなるから、大量生産、大量消費、大量廃棄を放置して来ましたが、星の環境が悲鳴を上げている今、そもそもの社会の仕組みを変えなければ、人類は破滅します。

まあ、そうならないための我々タスクフォースなんですけどね。」


「ってことは、政治家とは遅かれ早かれ全面対決しなきゃなんないってことか…。」


そんな俺のつぶやきに、ナーチャンが、すごくいい笑顔で俺に言った。

「その通りです!では、ついに毛根を無くす決心がついたってことですね!」


俺は間髪を入れずに言った。

「それは違う!嫌なものは嫌だ!

俺のタレントを使わないでやれることを考えてちょーだい!」


ナーチャンはがっかりして

「ほかのやり方ですか…。」


「じゃあさ、やっぱ王様に頼んで国の制度変えちゃえばいいんじゃない?

王様なんだからさ、一番偉いんでしょ?

だったら好き放題じゃん!」


その時、久しぶりにマイヤンがミーティングルームに入って来た。


「タスクフォースのみなさん、この度の活躍、お見事でした。

国王からも、皆さんへの感謝のお言葉をお預かりしております。

次の課題を解決したら、また多額の報酬をお支払いしないとならないと言って、財務大臣が顔を青くしているくらいですよ!」


それに対して、リーダーとして俺は言った。

「いや、もうお金は十分貰ったからいいよ!

それより、そのお金と一緒に元の世界に戻してくれたら嬉しいかなぁって思ってるんだけどさ。

ああ、別に独り占めしようって思ってる訳じゃないから安心して!ちゃんと6等分してくれていいからさ。」


ほとんど貢献していない俺が、みんなと同じに貰うのも何だが、金はあって困るもんじゃない。

勢いで言ってみた。


しかしマイヤンは、余裕の笑顔で答えた。


「それは出来ない相談です。

今回は、大地震という不測の事態を上手く乗り切ったというだけで、皆さんの目的である、この星の環境の抜本的解決は、まだまだ始まったばかり。

それがすむまで、お返しすることは出来ませんよ、オホホ。」


チクショー!忘れてなかったか。


「それはそうと、ユージさま。

国家権力の濫用は、例え王といえどもリスクを負います。

最初の任務の際も、王にはかなりの強権発動を行って頂きました。

しかも、今回皆さんが考えておられるのは、全政治家、つまりほぼすべての貴族を敵に回しかねない施策です。

さすがに王様にこれ以上のご無理をお願いする訳には参りません。」


じゃあ、どーすればいいの?


まだまだ課題は山積みなのだった。


(次回に続く)







☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

こんにちは、作者のアズマユージです!

『産廃屋のおっさんの異世界奮戦記』を読んでくださりありがとうございます!

もし「ちょっと面白いかも」と思っていただけたら、ブックマークや感想をいただけると励みになります。

今後も、異世界×環境問題×おっさんの奮闘を描いていきますので、よろしくお願いします!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


やはり強硬手段は取りづらいようですね。

さあ、第三の策はあるのか?

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