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第4話 異世界召喚~遅ればせながら自己紹介

社会派ファンタジーを名乗るからには、こんな話も必要だと思います。

皆さん、お付き合いください!

俺の名は、アズマ・ユージ。


年齢は、45歳。


人間50年なんて言葉があるが、もしそうならあと5年の命だ。

日本人男性の平均寿命は、新型コロナの影響でほんの少し下がったとはいえ、80歳を超えている。

つまり、あと5年と思って自堕落に生きて、もし死ななかったら、その後30年も赤貧生活を送らなければならなくなるので、要注意だ。


また話が脱線したので、元に戻そう。

俺は、それなりの大学を出て、一流と言われる上場企業に就職した。


ちなみに、日本の中小企業は約360万社あるのに対し、上場企業はわずか4千社。

比率で言えば、0.1%未満に過ぎない。

もっとも、社員数で比較すると、上場企業に勤める人は、全体の約30%。

残りの70%は中小企業で働いている。

つまり、上場企業に就職したということは、それだけで、ある種勝ち組と言えなくもない。

ただし、ただ入社すれば良いかと言うと、そうでもない。

会社に入るやいなや、多くの優秀な同期や、先輩後輩との出世競争が始まる。

最初の新人研修で、すでに落ちこぼれている者や、やたらアピールして出世欲を丸出しにする者、落ち着いてまわりを見ながら、虎視眈々と計算している者、はしゃいで騒いで調子に乗っている者など、多種多様だ。

その中で、役員にまで生き残る者はごくわずか。

その数少ない椅子を奪い合って、日々鎬を削るのだ。


俺は、途中まではいい線を行っていると思っていたが、35歳の時に挫折して退社した。

退社した俺は、再就職で苦労した結果、産廃屋に転職した。


「ユージさま、顔色がすぐれないようですが、何かお困りですか?

ワタクシにできることであれば、お力にならせていただきますが?

あっ、でもワタクシをとおっしゃるのであれば」


「いや、いい」


俺は、ナーチャンのお約束のセリフを遮って、ごめんなさいを言わせないようにした。

あれ言われると、おっさんの胸は結構痛むのよ、ほんとの話。


「それより、メンバーの紹介は何時頃になるんだ?」


とにかく、俺の今一番の関心事は、どんな仲間がやってくるのか?だ。


「今、準備中とのことなので、もうしばらくお待ちください。

あと、あまり過度な期待は、ハードルを上げるだけですので、ほどほどになさった方がよろしいかと存じます」


えっ!何?

今、しれっとすごいこと言わなかった?

仲間に全面依存しようと思っている俺の期待が、過度とか言った?

いやいやいや!

俺はしがない産廃屋なんだから、全部丸投げできる仲間がいないと、何もできないよ!

わかってるのかね、あの残念パワハラ王女さまは!


「ふっ…」


冷たくこぼれたナーチャンの笑顔が怖かった。

大丈夫だよね?ちゃんとした人来てくれるよね?


ちなみに産廃屋と言うと、ちょっと近寄りがたいアウトローなイメージがあるが、昭和45年に制定された廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)により、現在ではすっかり浄化されている。

ただし、職場環境は必ずしも良くない、というか、かなり悪い。

労働災害率が一般の製造業の工場の1.6倍と高い。危険・汚い・きついのいわゆる3K業種の代表格だ。

某国会議員が環境大臣になって一躍注目されたが、現場の状況に大きな変化は無い。

ごみ問題は根が深い。

衛生的な生活を送るためには、適正なごみ処理は必須であり、古来首都が遷都を繰り返した背景には、ごみ問題の影響も少なくない。

中世ヨーロッパで、ハイヒールやシルクハット・マントなどが流行った理由も、香水が流行った理由も、日常的に住民が窓から排泄物を道に投げ捨てていたからだという説が有力だ。


産廃屋に転職して、産業廃棄物についていろいろ学んで、初めて知ったことが多くて驚いた。

約10年、この業界で働いたことにより、以前の会社では見えなかった社会の裏側の実態を実感した。


高いスーツを着こなし、スマートに都会で働くエリートだって、排せつもするしごみも捨てる。

誰かがそれを処理しないと、都市はごみと汚物に塗れて、衛生状態の悪化によって崩壊する。

しかし、エリート達は、産廃屋をまるでごみを見るような視線で見下している。

いや、これは被害妄想なのかもしれない。

きっとそうなんだろう。


退社と同時に、離婚した。

妻は、上場企業のエリートである俺と結婚したのだろう。

いや、俺が家庭をないがしろにして、仕事がすべての生活をしていたのがいけなかったのだろう。

気が付いた時には、すでに取り返しが付かない状況まで、悪化していた。


使う暇がなかったため、そこそこ貯めていた貯金は、すべて妻に渡した。

幸い、子供はいなかったので、養育費の負担は無かったが、会社も、妻も、すべてを失ってしまった。

そして、1DKのボロアパートでの一人暮らしが始まった。


転職して10年がたち、仕事にも慣れてきたところで、憎めないながらもおっちょこちょいな後輩に、重機でぶん殴られ、俺はこの世界に転生した。

俺の死体、どうなったんだろう?

無縁仏かな…

まあ、死んだ後のことなんて、どうでもいいけどね。

俺は無神論者だ!

そもそも、神道仏教キリスト教なんでも来いの日本人にとっては、宗教なんて関係ない。

強いて言えば、八百万の神々を奉っていれば、丸く収まるんじゃないかな。

ん?なんか俺今、いろんな人を敵に回したかも…

宗教と政治の話はとってもセンシティブなのだ。


とにかく、そんなこんなで今俺は異世界にいる。

しかし何だ。せっかくの異世界なんだから、魔法とか冒険とか、そんなファンタジー要素は無いんかい?

俺もやってみたいよ、こうやって手のひらを前に突き出して、

「ファイア・ボール!」


ボン、ドギューン!!ガッシャーン!!


ビックリしたぁ!!!

ファイア・ボール出ちゃったよ!


ってか、室内でファイア・ボールは不味くね?

一人あたふたする小心な俺だった。

ちょっと汚い話を書いてしまい、サーセンでした…。

でも、嘘は一切書いていません!ホントの話です。

それよりも、魔法ですよ、魔法!

いよいよファンタジー感が出て来ましたね。

さて、いよいよ次回!

新メンバー登場?したらいいな…

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