第37話 ネクストフェーズ~ユージ出世する
さて、大きな成果をあげた後には、お楽しみが待ってる、かもしれません!
時刻はちょうど午後3時を回った。
タスクフォースのミーティングルームでは、お茶請けにユージが作っておいた、一口スコーンを食べながら、ユージを除いたメンバーが駄弁っていた。
ちなみに、このスコーンは、ホットケーキミックスに溶かしバター、牛乳を混ぜた上で、チョコチップ、ミックスナッツ、ドライフルーツをそれぞれ練りこみ、丸めて焼いただけの簡単なお菓子だが、これが案外美味い。
ふと気が付いた様子で、サトータが皆に聞いた。
「ところで、今日はリーダーがいないが、どうしたのでござるか?」
ナーチャンがいつも通り冷静に、
「ユージさまは、国王様に呼ばれて、城に行かれました。
恐らく、先日の任務成功に対する報酬のお話かと思われます。」
イコタンは、軽くうなずきながら、
「そうですね。あれだけの功績を上げたのですから、それ相応の報酬は頂かなければなりません。
プライスレスな働きに対しても、しっかりとその対価を頂くのが、我々の権利であり、そして義務でもあります。
ただ働きは一見美徳のようですが、他の労働者に対しても示しがつきません。」
リシュンは、いつも通り爽やかで自信満々の表情で言った。
「まあ、リーダーの働きを目の当たりにすると、王家としては多額の報酬を支払わざるを得ないよな。
これで報酬をケチったら、王国の威信にかかわるしな」
実際は、ユージはほぼ何もしていないのだが、彼らが勝手にユージの適当発言を深読みして、問題を解決してしまったのだが、そんなことは微塵も思わず、ただただみんなでユージを称賛していた。
一方その時、ユージはというと、国王陛下の前で固まっていた…。
「タスクフォースのリーダー、勇者ユージよ!面を上げよ!
此度の働き、実に見事であった。
なんと、SFの世界の夢物語であったAGIの開発に成功したうえ、その実用実験を兼ねたAI人事制度の導入、官民の垣根を越えた人材トレード制度の導入に加えて、総合ドラフト制度による人材の偏在の解決による全社会的な人員効率の大幅改善、はたまたすべての国民それぞれの意見や要望を瞬時に吸い上げて緻密に分析する仕組みなど、その功績は、枚挙にいとまがない。
そして、未曾有の地震災害への対応も、見事であった。
魔素拡散という多くの国民を巻き込んだ重大災害を防ぐとともに、この国のライフラインを抜本的に見直して、安全な電力供給と廃棄物処理を両立するという、まさに一挙両得、一石二鳥の対策を施すなど、他に類を見ないものであった。
この国始まって以来の大いなる成果に、余は感謝の言葉を述べるぞ。
勇者ユージ!大儀であった。
報酬として、金貨100万枚と、名誉子爵の爵位を授与する!」
「ははあ!ありがたき幸せ!謹んでお請けさせて頂きます!」
ちょっ、ちょっ、ちょっ!
金貨って、1枚10万円相当って言ってたよね?
それが100万枚って、一体いくらなの?想像もつかないぞ!
だから、ゼロが11個ってことは…
いっせんおくえん!!!?
例の二刀流の日本人大リーガーの10年分の年棒じゃん!!!
これ、俺みたいな一般人がもらっていい金額じゃないよ!
こんな金もらったら、会ったこともない親戚や友人がわらわらと現れて金を無心に来るに違いないよ!
異世界だから、そもそもそんな人絶対いないんだけど!
しかも、子爵って何?
俺、お貴族様になっちゃうの?
俺、晩餐会で気の利いた挨拶も出来ないし、ダンスも踊れないよ!
かえって困っちゃうよ!
内心そう思って引き攣った表情をしていたら、国王トクガワ19世が言った。
「そう緊張せずとも良い。
余は、これでも少ないくらいだと思っておるのだが、財務大臣が渋ちんでのう。
国家財政が逼迫しておるから、これが限界だと言って聞かないのじゃ。」
いや、もっとすごい報酬考えてたの?
ちょっとびっくりするから止めてよ!
そもそもさ、俺は何にもやってないじゃん!
なんか適当なこと口走ったら、リシュンとイコタンが勝手に話を進めちゃったんじゃん!
俺がしたのは、国会の場でしどろもどろに施策の説明したぐらいだよ?
それがスーパースターの10年分の年棒と同じで、しかも貴族様になっちゃうって、ちょっとおかしいんじゃないの?
「いえいえ国王陛下、過分なるお言葉、感謝の念に堪えません。
また、本来報酬が欲しくて任務に就いた訳ではなく、この国をより良くしようとの思いからの行動でございます。
どうか、これ以上のご配慮はされませんよう、お願い申し上げます。」
これ以上報酬なんかもらっちゃったら、次も無理難題押しつけられちゃうじゃん。
絶対断れないやつじゃん!
困るよ!
俺は、成り行きでリーダーやってるけど、どこに出しても恥ずかしい一般人なの!
そんなに目立ちたくないの!
そう思いながら、頭を下げていると、
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。謙虚な奴よのう。
しかしまた、その謙虚さが良い。
次からも、励むが良い。
おー、なんなら娘のマイヤンを嫁に貰うか?
これは、器量良しじゃが、少々お転婆での。なかなか嫁に行かんのじゃ。
勇者の妻となれば、こやつにも異論はあるまい。
なんなら、もう少し身分を上げて、公爵ぐらいにして釣り合いを取るのが良いかのう。」
俺はその国王の言葉に対しては、即座に返事を返した。
「お断りします。」
ったりめぇだろ、このボンクラ国王!
こんな自分勝手でパワハラで暴力体質のクソアマなんか、誰が嫁にするかっての!
寝言は寝て言えって感じだよ、ホントにもう!
「ユージさま、即答で断るとは、ワタクシに対する配慮に欠けるのでは?
いえ、決してユージさまの妻になりたいという訳ではないのですが、秒で断られると腹立つんですよね。」
マイヤンが、引き攣った笑顔で言う。
「いや、そうは言っても絶対嫌だろう?お前と結婚なんて、一体どんな罰ゲームなんだよ、それ!」
つい言ってしまった俺は、またしても頑丈な杖でいつもより強烈に頭を叩かれて失神するのであった。
「とにかく、本日の国王への謁見はこれにて終了します。
皆さん、解散してください!」
何故かマイヤンが仕切って、授賞式は終了となったのだった。
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ユージが金持ちになって貴族になってしまいました!
次回からは、新章突入です!
次なるテーマは?




