第34話 ネクストフェーズ~雨降って地固まるってあるんだな
いよいよ、タスクフォースの本領発揮です!
未曽有の災害を防ぎ、大地震の被害を最小限に食い止めることができるのか?
ナーチャンの的確な指示によって、政府機関が動き出し、住民の避難は速やかに完了した。
道路網については、さすが異世界である。
魔法の使い手が大活躍し、幹線道路については瞬時に復旧し、魔導発電所への道路もすぐに回復した。
導線の確保は、今後の対策に大きな影響があるため、最優先で対応したが、いくら魔法といえども、さすがに魔力の消耗が半端なく、魔力増強剤が大量に消費されたとのことである。
住民についても、病人や老人については、転移魔法による避難が行われたが、いくら魔法といっても限界がある。
さすがに、自分で動ける者は、自ら避難してもらった。
マイヤンも、かなり活躍したらしい。
魔導炉の冷却も、想定通り上手く行き、メルトダウンを食い止めることに成功した。
その結果、全員無事に翌朝を迎えることが出来た。
しかし、大災害を直前で防いだということに過ぎず、今後引き続きの対応は必須である。
また、地震による被害は極めて大きく、電気・ガス・水道・通信・交通などのライフラインの完全な復旧は、いまだに目途が立っていない。
何はともあれ、発電所の安全確保のためには、とにかく、電源の確保が大切というのは変わっていない。
そして、地震翌日のステータスミーティングにおいて、画面越しにリシュンが現状の状況を発表していた。
「とにかく、なんとか2週間持たせてくれ!
現在、魔導石融合炉の開発を急いでいる。
それが完成して、送電網が復旧したら、魔導発電所の冷却装置を動かすくらいの電力は、安定的に供給できるようになるぜ。」
俺は、良くわからなかったので、軽く質問した。
「リシュンさぁ、魔導石融合炉って何?」
「リーダーか。
まあ、リーダーのお国の言葉で言うと、核融合炉の一種って感じかな。
核融合炉は、重水素とトリチウムを超高温高圧で反応させると、ヘリウムと中性子に変化するんだ。
その際、膨大な熱エネルギーが発生するから、これを使ってボイラータービンで発電する仕組みだ。
リーダーの国の映画に、未来と過去を車に乗って行き来するやつがあって、その続編で白髪の博士が車に燃料としてゴミを投入するシーンがあるって言ってただろ?」
「おー!それな!
あの映画は面白かったぞ!
車の名前は…。そう、デロリアンだ!」
「恐らく、ゴミの有機成分と水を分解することによって、水素とトリチウムに似た物質を生成して、核融合させて、推進力を得る仕組みだと思うぞ。
まあ、実際はそんな小型の融合炉は、作れる気がしないけどな。
1億度以上のプラズマを制御しなければならないからな。
車載用に開発するなんて、とても無理だ。
でも、夢があるとは思うぞ!」
「なるほどね。
でも、ゴミ処理と発電がいっしょにできるって、いいアイデアだな!」
「リーダー!それだ!
そうだな。単純に魔導石を使って、海水とリチウムと反応させることによって、重水素とトリチウムを生成して、魔導融合炉を作ろうと思っていたが、そっか、ゴミか!
少量の魔導石を触媒にして、ゴミを分解させて、重水素とトリチウムを生成させたら、廃棄物処理と安全で高効率の発電施設が同時に出来上がるって訳だ!
そもそも廃棄物処理自体が大きな課題だったんだから、まさに一石二鳥!
ホント、リーダーの発想は、いつもながら最高だぜ!」
いや、俺の発想じゃなくて、人気映画の設定なのだが…。
なんかみんな、俺が無邪気に言ったことを勝手にいい方に誤解しちゃうんだよな。
まぁいいけど、過大評価は化けの皮が剥がれた時が恐ろしいんだよな…まぁいいけど。
結局、まぁいいけどで済ましてしまうところが、ユージの悪い癖だ。
しかも、ワンフレーズで2回も言っている。本当に適当だ。
まぁいいけど。
なんだかんだで、リシュンのタレントであるテクノロジーは、その反則級の実力を存分に発揮し、考えられないスピードで魔導ゴミ発電施設が建設された。
その間、タケシトは相方のミキオダとともに、足しげく避難所を訪れて、炊き出しと慰安のための漫才やコントを披露していた。
そして、タケシトの持つリラックスの効果で、殺伐とした避難所の雰囲気がガラッと変わり、彼らが帰る頃には、皆笑顔になって、口々に感謝とお礼の言葉を二人に送るのだった。
「なんか、こいつ要らねぇと思ってたけど、タケシトも結構皆の役に立ってるんだな。」
俺は、改めて、エンタメの効用と底力を認識してつぶやいた。
ナーチャンも相変わらず、冷静な口調でミーティングを仕切っている。
「完全ではありませんが、必要なライフラインは整いつつあります。
もうあと一週間もすれば、住民の帰宅も順次行えるようになるでしょう。
とにかく、魔素汚染を防げたことが、非常に大きいです。」
なるほどね。順調そうで何よりだ。
必要な食料は確保されているとはいえ、そろそろ自粛ムードから解放されて、夜の街にでも繰り出したくなるよな。
それが人情ってもんだよな。
「ユージさま、復旧は順調だとはいえ、まだまだ地震により倒壊した建物の残骸は多く、不便を強いられいてる住民も数多くおります。
その方々が、以前の生活を取り戻すまでは、我々タスクフォースが夜の街で鼻の下を伸ばしている訳には行きません。おわかりですか?」
「わぁーてるよ!
ちょっと思ってみただけだよ!
悪かったな!
ってか、何度も言うけど、人の心読むんじゃないよ!」
「いえ、今のは心を読んだ訳ではなく、ユージさまの表情から推察いたしました。
若干上を向きながら、いやらしそうで締まらない笑顔をしていたので、すぐに考えていることがわかりました。」
「いやらしそうで締まらなくて、悪かったな!」
優秀な部下ではあるが、ホント腹立つわ、この子。
でも俺より強いんだよなぁ…。
そう思っていたら、ナーチャンが続けて言った。
「我々タスクフォースが解決しないといけない課題が、もう一つあります。」
えっ!まだなんかあるの?
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こんにちは、作者のアズマユージです!
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上手くいって良かった!
でも、まだ課題があるんだ…。
それは、次回明らかになります、きっと。




