第32話 ネクストフェーズ~魔導発電所がヤバいことに
魔導発電所に危機が迫ってます!
タスクフォースは、この難曲を乗り切れるのか?
午後4時5分。突然の地震が、魔導発電所を襲った。
中央制御室の地震計は、振り切れており、とてつもない大地震であることは明らかだった。
「地震だ!やばいぞ!」
技師長は、そう叫ぶとともに食い入るようにモニターを見つめた。
基準を大きく上回った地震加速度を検知したことにより、スクラムが発動した瞬間だった。
スクラムとは、魔導炉を緊急停止させるシステムのことであり、今回のように基準を超えた地震や炉心冷却材喪失、電源喪失などをトリガーに自動作動する。
もちろん、想定外の事態が生じた場合は、手動で発動させることも可能だ。
「全交流電源、喪失しました!」
「非常用ディーゼル、起動します!」
作業員の声が次々に響き渡る。
一瞬のブラックアウト後、非常用電源に切り替わった中央制御室内に、緊張が走った。
魔導発電所は、魔道石が変質する際に発する熱によって、ボイラーで水蒸気を発生させ、タービンで発電する、この世界特有の施設だ。
魔導石は、冒険者がダンジョンの魔物を倒すことによって無限に採取することができる上、CO2を発生させないため、非常にクリーンなエネルギーとして脚光を浴びた。
そして、化石燃料による発電から、魔導発電への切り替えが進み、今ではこの国の電力は、すべてこの魔導発電所によって賄われている。
ただし、光があれば影が生じる。
この、夢のような発電方法にも、数々の問題点があった。
一つは、魔素の問題だ。
魔素とは、魔導石が分裂する際に熱とともに発生するもので、ウランが核分裂した際に発生する放射能に似ている。人体への影響を図る単位も、放射能と同様、シーベルトで表記され、被ばく線量が100ミリシーベルトを超えると、明らかに発がんリスクが上昇する。
「電源はいつまで持つ?」
技師長の問いかけに、技師主任が答える。
「7日間は持ちます。」
「受動的安全装置は?」
「3日間です!」
「つまり、この10日の間に電源が復旧しないと、メルトダウンという訳だな?」
「ぞっとしますね。」
福島の原発事故では、自動スクラムが発動し、1~3号機のすべての原子炉は安全に停止した。
ところが、送電線鉄塔が倒壊したため、地震から30秒後に外部電源6系統のすべてが喪失した。
その約1時間後に到来した14メートルもの大津波により、非常用ディーゼル発電機が水没し、使い物にならなくなってしまい、約8時間分の直流バッテリーを除いて、電源を喪失してしまった。
原子炉というものは、スクラムによって安全に停止した後も、崩壊熱が発生する。そのため、引き続き冷却を続けなければならない。
通常は、スクラムの最終工程で、ECCSと呼ばれる緊急炉心冷却装置が作動し、崩壊熱冷却を行うのだが、福島の場合、電源喪失によりECCSは作動しなかった。
RCICと呼ばれる隔離時冷却系装置が、バッテリーにより一時的に作動したが、それもバッテリーが切れると同時に停止。
それにより、崩壊熱で炉心温度が上昇、空焚き状態になり、1号機は、スクラム後12時間で燃料の露出が始まり、その3時間後に炉心溶融、つまりメルトダウンした。そして3号機は、スクラム後約36時間で水素爆発が発生した。
つまり、放射能がバラまかれたのだ。
ヘリコプターからの海水投下による炉心冷却を試みたが、海水を投入すると原子炉は腐食し廃炉せざるを得なくなるため、時の政府は決断を遅らせ、真水での冷却にこだわった。
その後、ようやく海水注入を決断したが、時既に遅し。被害の拡大を抑えることはできなかった。
専門家の後日分析によると、1号機への海水注入をあと6時間早めていれば、メルトダウンは防げたかもしれないとのことだ。
その教訓を生かし、現在では受動的安全装置、つまり、外部電源や作業員の操作が不要な冷却システムを装備するようになり、早期海水注水の制度化や現場判断による海水注水を可能とするなどの規制改正も行われた。
それほどまでに冷却は大事であり、そのために電源が必要なのだが、ディーゼル発電システムの連続稼働はエンジンへの負荷が高く、7日程度しか持たない。
マイヤンが言っていた、一週間というのは、非常用ディーゼル発電の最長稼働日数のことだ。
電源が喪失されると、受動的安全装置に切り替えることになるが、これも、3日が限界だ。
つまり、10日以内に問題を解決しなければ、魔導発電所が内部から崩壊し、周囲に魔素を拡散させ、国中に死の灰が降り注ぎ、大半の生物が死滅する。
つまり、国と国民を守るためには、これからの10日間が非常に重要なのだ。
「つまり、電源確保をすればいいんだな?
だったら、止めてる火力発電所を動かせばいいんじゃないのか?」
そう言う俺に対し、ナーチャンは残念そうに言った。
「この国では、電源を魔導発電に一本化しており、火力・太陽光・風力・バイオマスなどの他の発電システムは既に風化しています。再稼働させるとしても、最低でも半年はかかるものと思われます。
それから、送電線も随所で切断されており、仮に発電が可能であっても、送電ができません。」
「そうなの?じゃあ、ダメじゃん、参ったな。。。
リシュン、なんか作れないの?」
「いかに俺のテクノロジーを駆使しても、10日ですべての発電所の電源を賄う設備を作るのは、ちょっとムリゲーだぜ」
「時間がないか…
仕方ないね。
じゃあさ、魔素が飛び出しちゃった時に人に被害が出ないような対策を打ったらどう?
もちろん、メルトダウンって言うの?それが起きないようにしようよ。
この際、発電所が壊れちゃっても仕方ないよ。
とりあえず危なくなくなったら、リシュンにもっといいやつ作ってもらえばいいじゃん!」
「さすがリーダー!その通りだ!ナーチャン、指示を頼む!
俺は、出来るだけ早く新しい発電システムを開発して来るぜ!」
そう言ってリシュンが部屋を飛び出して行った。
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ユージの適当なつぶやきを勝手に都合良く理解したリシュン。タスクフォースは、どんな策を講じるのか?
次回に続きます!




