第3話 異世界召喚~晩酌こそが人生
今回は、クールビューティーのナーチャンの、意外な素顔が見られるかもしれません!
最近の若者(なんて言ったっけ?Z世代とか言うんだったっけ?)は、あまり酒を飲まないらしい。
しかし、晩酌の楽しみを知らないってのは、人生まるっと損しているのではないか?と思う。
まぁ、冷静に考えれば、安酒とはいえ、金を使って、酔っぱらって時間を浪費して、成人病にまっしぐらの生活習慣は、あまりおすすめできるものでは無い。
でもさ、思うんだよね。
それで長生きして何になる?
人なんて、どうせ死ぬんだ。
節制して我慢して少しぐらい長生きするのも、好き勝手して早死にするのも、自分で好きな方を選べば良いと思わないか?
というのは、単なる不摂生の正当化なんだけどね。
あと、お酒飲めない人にはホント申し訳無い!
最近のノンアルはかなりレベルが高くなって来てるから、十分晩酌的な雰囲気を楽しめると思うよ。
許してちょんまげ。
ちなみにタバコは、のどが痛くなって、風邪をひく頻度が上がって、歯茎に悪くて、臭くて女の子から嫌われるから10年ほど前にやめた。
つまり、現在俺は晩酌中なのである。
しかも、テーブルに乗っているのは、普段通りのつまみの数々。
いつもと一緒なのだが、違いが二つある。
ここが異世界であることと、隣にナーチャンがいることだ。
「ユージさま、この焼き鳥というのは、なかなかイケますね!
グビッ、グビッ、グビッ、プハー!
この発泡酒ってのも、のど越しが良くて最高です!
おっ!冷奴もあっさりさっぱりしてて、この枝豆の甘さと塩気がたまりませんね!
グビッ、グビッ、グビッ、プハー!」
なんか、すっかりはまっている様子だ。
見た目はアイドルの中身はおっさんって感じだな。
いてっ!
ホント、勝手に人の心を読むのと、足癖が悪いのが玉に瑕だな。
「ユージさまぁ。ワタクシだってぇ、いつもいつもビシッとしていたい訳じゃぁないんですよぉ~
それなのにぃ、あのマイヤンの奴ったらぁ、ワタクシをこき使うんだからぁ、いやになっちゃいますよぉ
ヒック!ねえ、聞いてますぅ?」
これ、酒飲ませたらアカンやつや。
完全な絡み酒や。
でも、上司の悪口を肴に飲む酒ってのは、美味いんだよな。
いてっ!
「だからぁ、ワタクシは酔ってなんかいませんよぉ
今からユージさまの考えていることを読み取ります!」
ナーチャンは、少しトロッとした表情で、俺の顔をじっと見る。
なんか、距離が近い。
俺のパーソナルスペースに入り込む美少女なんて、生まれてこの方お会いしたことが無いから、緊張してしまう。
少し口があいていて、プルンとしたくちびるが、なんとも艶めかしい。
ゴクッ。不覚にも、俺が唾を飲み込む音が響いた。
「あぁ~!ユゥジさぁん、いまぁ、ワタクシのことぉ、色っぽいと思ったでしょ?いや、思いましたねぇ!でもぉ、ダメですょぉ!ごめんなさい」
「思ってねーし!」
ホント面倒くさい。でも実は少し思ってしまった自分がちょっと不甲斐ない…
「冗談はさておきぃ、真面目な話をしますねぇ」
ナーチャンの顔から表情が消え、目線は遠くを見つめる。
だらっとしていた姿勢も、本来の上品な座り方に戻る。
「我が国の環境問題は、単に1国家の問題ではありません。
環境に国境はありません。
この星に存在する、すべての国家が、一つの方向に向かって歩調を合わせ、しっかりとした基準で取捨選択を行っていかなければ、近い将来に人類は全滅します。
どんなに恐ろしい武器を持っても、たくさんの可哀想なロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ!と言い放った少女がいましたが、それは真理です」
それ、名作アニメのセリフですか?ナーチャンって、日本のアニメも網羅してるんですか?
「いえ、これは、ユージさまが意識的無意識的にかかわらずに思っておられることを、ワタクシが言語化したものです」
いやいや!おっさんがアニメのセリフ覚えてるって、バラさないでくれる?
確かに俺は若干オタクの気があるよ!認めるよ!
「う~。。。」
「キモいかどうかは、主観の話でしかありませんから、この際置いておきましょう。」
いや、やっぱりキモいって思ってるんじゃん!ダメじゃん!おじさん、落ち込んじゃうよ!
「それはともかく、話を続けましょう。
なにかをなすためには、金だけでは足りません。いろいろな要素が複雑に絡み合って、成果や実績をあげることができます。
ただし、いろいろな要素をうまく回すためには、まずとりあえず金がいります。」
やっぱり金かい!
「そうです。先立つものが無ければ、食事も取れず、生命維持もおぼつきません。
金で愛を買うことは実は意外と簡単ですが、愛があっても金は必要、というのが世の中の真理です。」
まあ、否定はできない。
貧乏人がどれだけ高邁なことを言っても、世の中は変わらないもんな。
「さて、すでに資料室にてご覧になられたようですが、わが国の財政は危機に瀕しています。
わずか25年の間に、500兆円だった国債発行残高は、3倍以上になり、5年後には2000兆円になると予想されています。
このままでは、この国は破綻します。
国債残高の半分を中央銀行が、4分の1を年金や国の機関が保有しており、他国の投資家の比率は10%強しか無いため、他国からの経済的な侵略を受けるリスクは低いものの、借金まみれで不健全であることは否めません。
一方で、税収の伸びは、今後の少子高齢化を考えると、まったく期待できません。
つまり、全世界の話をする前に、まずはこの国の財政規律を立て直すことが必要です。」
すっごく賢い!
でも、今の日本と全く一緒じゃん。ご都合主義に過ぎなくない?
ってか、俺いらなくね?
「いえ、これはユージさまの頭の中の情報を整理し、言語化したものですので、ユージさまがお考えになられていることです。
ご都合主義なのは、話の都合上ということでご理解ください。
そもそも、異世界で日本語が通じるところからして、ラノベお約束のご都合主義の賜物ですし。
ちなみに、ユージさまの頭の中は、50%がエッチなこと、30%が酒、残り20%が真面目なことで構成されていますので、その20%にフォーカスしてみました」
おい!
ご都合主義はともかく、俺の頭の中の半分はエッチなことで占められてるってところだけは納得がいかんぞ!
そんなんちげーし!
たぶんちがうと思う…いや、きっと違う…ちがうといいな…
それはともかく、当面の課題は明確になった。
後は、具体的にどうやって財政再建を実現するかだ。
ってか、優秀な仲間はまだか?
「言い忘れていましたが、タスクフォースのメンバーが決まったようです。
明日が、初顔合わせです。」
それ~、はやく言ってよぉ!
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『産廃屋のおっさんの異世界奮戦記』を読んでくださりありがとうございます!
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次回は、新メンバー登場の前に、ちょっと重たいですが、ユージの過去についてのお話です。