第26話 産廃屋としての矜持~おっさんの思い
「なんかさ、労働人口とか、高齢化とか、社会問題としては大事だってことは、俺にもわかるよ。
でもさ、みんなこの小説の題名って覚えてる?
そう、産廃屋のおっさんシリーズなんだよ?
なんかこのところ、産廃に関係無い話ばっかりじゃん?
題名に釣られてやって来た読者さまに申し訳ないじゃん?
勝手な想像だけどさ、俺たちがなんやかんやで環境問題を解決してこの国救ってさ、そんでもって調子こいてこの星を救ってさ、最後に晴れて俺が元の世界に戻って受付のヨーコちゃんと愛を確かめ合ってめでたしめでたし、っていう筋書が、王道でテンプレだと思うんだよね。
それなのにさ、読者さまの期待を裏切ったら不味いよね?
せっかくちょっとずつPVも伸びて来てるってのにさ、このまま期待外れじゃ、とても完結までたどり着けないよ。
俺、元の世界に戻れなくなっちゃうよ?受付のヨーコちゃんと再会できなくなっちゃうよ!
ねえ、どーすんの?」
俺は、あまり深く考えずにミーティングの席で思ったことをそのまま言った。
「さすがはリーダー!その通りだぜ!」
リシュンは優しいなぁ!
「拙者も、リーダーと同意見でござる!
読者あっての小説、題名と内容が違い過ぎるのは、ある意味詐欺でござるよ。」
サトータもそう思う?そうだよね!
「ちょっと何言ってるかわかんないんですけど」
お前はいい。
ナーチャンは、少し不満げに言った。
「ユージさまのご意見はごもっともですが、では、具体的に何をされたいのですか?」
俺は焦って言った。
「いや、具体的にって言われても困るんだけどさ。
なんか最近、リサイクルリサイクルってうるさいけど、みんなリサイクルの本質をわかって言ってるのか疑問なんだよね。この国でもそうじゃないの?」
リシュンが割り込んで来た。
「俺のリサーチによると、我が国の廃棄物処理の特徴は、焼却量の多さだな。
実に、約8割のゴミを焼却炉で燃やしている。
焼却のメリットは、ゴミの減容化と無害化だな。
ゴミを800度以上の高温で燃やすことによって、無害化するとともに、だいたい10分の1に容積を減らすことによって、埋め立て量の削減を図っている。
我が国の国土は狭いので、埋め立て地の確保が大変なんだ。
少なくとも、ウエスト大国の廃棄物処理みたいに、埋め立て中心に処理をすると、数年の間に埋め立て用の処分場が足りなくなるんだ。」
「でもさ、ゴミ燃やして出た熱で発電したら、リサイクルしてるって言えるんじゃないの?
俺はそう聞いたよ。」
「サーマルリサイクルってやつだな。」
「そうそう、そんな感じ。
8割燃やしてサーマルリサイクルしたらいいんじゃね?」
リシュンは、いやいやと首を横に振りながら言った。
「実は、サーマルリサイクルはヨロシク諸国ではリサイクルと認められていないんだ。
呼び方も、エネルギーリカバリーと言って、リサイクルとは一線を画している。
ちなみに、3Rという言葉があるんだが、リーダーは知ってるか?」
「ああ、それ習ったことあるよ。リデュース・リユース・リサイクルってやつだろ?」
「そうだ、良く知ってるな!
リデュースってのは、そもそもゴミを出さないってことだな。
ゴミが出なけりゃ処理も要らない。過剰包装とか、マイバッグ、マイ箸を使うとか、とにかく使い捨てを減らすってことだな。
次にリユースっていうのは、再利用だな。牛乳ビンとかビールビン、一升瓶などのリターナブルびんなんてのが筆頭だな。
最後がリサイクルなんだが、これもおおまかに言うと、3つに分けられる。
まずは、マテリアルリサイクル。
ペットボトルや、古紙、鉄くずなんかが代表格だな。
ただ、このやり方の難しい点は、洗浄したり同じ成分のもののみを集めたりすることが、大変だってことなんだ。
例えば、一番身近なペットボトルにしたって、キャップやラベルは同じプラスチックでも成分が違うから、分離回収しなきゃならないし、水入れて灰皿に使われたペットボトルも、綺麗に洗わないと再利用出来ない。」
「確かにな。
知り合いのペットボトル回収業者が嘆いてたよ。
自販機の隣のペットボトル回収ボックスに、関係ないゴミを入れるモラルの無い人が多くて困るってな。
ビンや缶入れる奴もいるし、中には、使用済みおむつとか、犬のふんとか捨てる奴もいるんだってな。
しかもさ、地域性があって、関西の方が異物混入率が高いって言ってたよ!」
関西人に怒られるかな?でも本当なんだってさ。
リシュンは続ける。
「つまりだ、分別して運搬して洗浄して破砕して再利用する工程を踏むうちに、どんどんエネルギーを使ってCO2を排出していくから、リサイクルイコール環境に優しいって一概には言えないんだ。
もちろん、損益分岐点ってのはある。
ただな、原油からプラスチックを作るのと、使用済みペットボトルを再利用するのと、どっちが環境負荷が低いかを良く見極めないといけないってことだな。
考えてもみろよ。ペットボトルを加工工場に運搬するだけで、かなりのガソリンを使うんだ。
あれは、空気を運んでるようなもんだからな。」
「そうだよな。
全国どこでも加工工場があれば話は別だけど、遠くの工場にほぼ空気のペットボトルを運ぶんだったら、近くの焼却場に運んで燃やしちゃった方が効率いいかもしれないな。
そう言えば、コーン系スナック菓子の軽いやつが関東で販売停止になったのは、売上低迷だけじゃなくて運搬コストがかさむからだって聞いたことあるよ。
あれ、四国の工場で作ってるんだもんな。」
「話が横道に逸れた。
マテリアルリサイクルの次は、ケミカルリサイクルだ。
廃棄物を化学的に分解して、原料に戻すやり方だ。
これは、一見良さそうだが、さらにしっかりとした分別が必要など、高コストで、技術的に難しいところが多く、大手化学会社が揃って研究しているものの、大々的な実用化には至りそうもない状況だ。
ただし、将来的にはケミカルリサイクルによって効率的で大規模なリサイクルが可能になるかもしれないと、期待はされている。」
なるほど、いろいろ大変なのね。
ってか、話が横道に逸れたのって、俺のせい?
不満げな俺を無視して、リシュンは続けた。
「最後に、サーマルリサイクルだ。」
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