第25話 初めての任務~飲ミニケーションって大事だと思うんだ
昔、ほぼ毎日会社帰りに飲んでました。
あの金を貯金してたら、なんてことは思いません!
会社帰りの一杯、これ無くしてサラリーマン生活なんかやってられるか!
なんて言うほど、ストレスが溜まってたのかもしれません。
「皆さん、初めての任務、ご苦労様でした。
思えば、ワタクシが召喚魔法を使ってユージさまをこの世界に召喚してから、多くのことがありました。
(中略)
ということで、ささやかではありますが、ぜひこの会をご堪能ください。
皆さんのこれまでの活躍と、今後のさらなる飛躍を祈念して、ワタクシの挨拶の言葉に代えさせて頂きます。」
マイヤンさまの、長い挨拶が終わった。
なんか、神妙な顔してるけど、たぶんみんな全く聴いてないな、これ。
国際的なスポーツの祭典の閉会式で、挨拶が長すぎて校長先生ってあだ名が付いた会長みたいだな。
朝礼で偉い人が、
「今日みなさんにお話ししたいことは、3つあります。」
とか言って話していたけど、翌日までその3つを全部覚えていた試しが無い。
でも、特に仕事には支障が無かったから、覚える必要が無い話だったってことだろう。
ってか、毎日3つ言われて、それを全部覚える能力があったら、今頃英語ペラペラになってるよ!
かのニーチェも、「忘却は行動の条件である」って言ってたしな。
なんてしょうもないことを考えていたら、式次第は進んで行った。
「はい、マイヤンさまのありがたいお言葉でした!
それでは皆さん、お手元にグラスをご用意ください。
張り切ってご唱和ください!
我々タスクフォースの初任務の成功を祝して、カンバ~イ!」
パチパチパチパチ
マイヤン王女の挨拶の後、タケシトの音頭で、皆が乾杯した。
しかし、乾杯した後に拍手するって、新入社員の時にはビックリしたが、今ではなんとなく拍手が無いと盛り上がらないって言うか、落ちつかないって言うか、ちょっと物足りなく思ったりするから不思議なものだ。
「リーダー!仕事にはケジメが大事だぜ!
一仕事やり遂げたら、パーっと宴会しなきゃなんないでしょ!
よろしく頼むよ!」
タケシトの発案で、タスクフォースの初任務を祝したささやかな宴会を行うこととなった。
どういう訳か、場所は我々の仕事場兼住居であるタスクフォース本部のリビングルーム。
食事は、俺が用意するという、かなりチープな宴会だ。
極秘プロジェクトの情報漏洩を防止するためとのことだが、たぶん出掛けるのが面倒くさいとか、酔っぱらってもすぐに寝れるとか、安上がりとか、諸々の事情があるのだろう。
ちなみに、今日のレシピは、こんな感じだ。
・温野菜サラダ
根菜類を中心とした野菜を蒸すだけ、簡単だ。
最近は、電子レンジ調理できる蒸野菜のツールがあるから便利だ。
マヨネーズにケチャップを同量、少しウスターソースを混ぜて、気持ちニンニクペーストを入れるだけで、自家製ソースも完成。
・枝豆←ナーチャンからのリクエスト
枝豆は、塩もみして産毛を取っておく。
事前に端っこをハサミで切っておくと、見た目がキレイで、塩味が付きやすいのだが、俺は面倒なので気にしない。
沸騰したお湯に一つまみの塩を入れてから枝豆を投入して、再沸騰してから30秒待つ。
ざるにあけて熱いうちに塩を振って、自然冷却する。
そうすると、歯ごたえがしっかり残った、甘くて美味しい枝豆の完成だ。
茹で時間が短すぎると固くて青臭く、長すぎると柔らかくなって歯ごたえが無くなるので、要注意だ。
ちなみに、枝豆は銘柄と鮮度で味が変わって来る。
少し高くても、大きな豆がしっかり入った、新鮮なものを買って来て欲しい。
・冷奴←同じく、ナーチャンのリクエスト
冷奴は切って盛って、しょうがとネギを乗せる。あとは、お好みで醤油かポン酢で。
絹ごしと木綿で好みが分かれるが、俺は基本的に夏は絹ごし、冬は木綿が好きだ。
そもそも豆腐は安いので、スーパーでちょっと高級な豆腐を選んでも、300円もしないので経済的だ。
・刺身盛り合わせ
刺身は、それこそ切って盛るだけだが、包丁さばきには注意が必要だ。
力を入れずに奥から手前にすっと引き、最後に包丁を立てて切り取る。
ノコギリみたいにギコギコしちゃダメだ。
一匹丸のままだと卸すのが面倒で、ゴミも臭くなるので、基本的にさくになったものを買ってくる。
マグロは、少し塩締めすると、味が良くなるから不思議だ。
タイはさくのまま少し塩を振って、上下から出汁昆布で挟んで、キッチンペーパーで包んでからラップして、1時間ほど置くと、昆布締めになって美味しい。
昆布が無い時は、昆布茶を振ってもまあ美味しくなる。
・イワシの煮付け
イワシは、丸のまま、醤油・砂糖・酒・みりん・水を入れて煮て、しょうがを入れてアルミホイルで落し蓋をする。出来上がったら皿に盛って、針ショウガを乗せる。
煮魚も焼き魚も、盛り付ける時は手前を腹側にして、頭は左側に来るようにするのが基本だ。
・ローストビーフ
ローストビーフは、軽く表面に塩コショウ、お好みでハーブ各種をすりこんでから加熱するのだが、俺の場合はノンフライヤーを使う。
70℃で30分加熱すると、綺麗なローストビーフの出来上がりだ。めっちゃ簡単で失敗無し!
ソースは、いろいろあるけど、俺は単純に辛子醤油で食べるのが好きだ。
和洋折衷で、意外と美味しいのだ。
・自家製アイスクリーム
アイスクリームは、卵黄と砂糖をボールに入れて白っぽくなるまで良く混ぜてから、別の鍋で牛乳と生クリームを沸騰しないように注意しながら加熱して、さっきのボールに少しずつゆっくり混ぜながら入れる。あとは、タッパに移して、冷めたら冷凍庫に。30分置きくらいにかき混ぜると、滑らかになるが、そんなに神経質になる必要は無い。
分量は、全部適当だ。
一人晩酌に特化した、男の料理は、細かいことに拘らない方がいい。
失敗もほろ苦いスパイスだ。
事前の仕込みを少しやっておいたので、1時間ほどで料理が出来上がる。
手際の良さと時短も、男の料理にとって大切だ。
マイヤンは、こんな庶民の食べ物なんて食べたこと無いみたいで、美味そうに一心不乱に箸を運んでいる。
それにしても、驚いたり惚けたり、表情が豊かだ。
ナーチャンは、相変わらず酒癖の悪さを発揮して、手当たり次第に絡みながら、豪快に酒を煽っている。
あの細身のどこに入るが不思議だが、料理もがっつり食べている。
イコタンは、テーブルの端に座って、黙々と食って飲んでしている。
今回の任務の最大の功労者だというのに、謙虚なものだ。
リシュンも、喜んで食べているが、なんか、ワイルドに食べて飲む姿も、何故か絵になる。
テーブルマナーは悪いが、格好いい。
AIは、こういった不公平も改善してくれるのだろうか?
サトータは、例の浪人姿で、タケシトと肩を組んで、笑いながら酒を酌み交わしている。
「リーダー、どれも美味しいです!」
「ビールがすすむぜ!」
皆が満足してくれたら、俺も満足だ。
宴会部長のタケシトが、
「それじゃ、宴もたけなわではありますが、これにて中締めにしたいと思います。
まだ、料理も残っているので、時間のある方は引き続き楽しんでください。
それではリーダー、よろしくお願いします!」
「みんな、今回はありがとう。
ここにいる全員の力をあわせて、なんとか初めての任務を成功させることが出来たよ。
俺なんかがリーダーでいいのかって、いまだに思っているけど、それはともかく、また皆で頑張って、祝杯をあげられるようにしような!
それでは、一本締めでお願いします。
お手を拝借!よおーぉ!」
パン!と皆がタイミング良く柏手を打った。
頑張って働いた後の、気の置けない仲間との、他愛のないやり取りだ。
仕事が上手くいった後の宴会は、サラリーマンの醍醐味だしな。
ながらく、この感じを忘れていた気がする。
もしかしたら、俺はこの世界、このチームを結構気に入っているのかもしれない。
「なんか、こういうのっていいな…。」
そう独り言ちて、俺は眠ってしまった。
そして宴会は、日付が変わってもダラダラと続くのだった。
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酒はともかく、皆でワイガヤで食事を囲んで好き勝手なことを言い合う会って、楽しいですよね?
酒飲めないけど、飲み会に参加するのは好きって人、結構いましたよ!




