第23話 初めての任務~月に叢雲、花に風、ってよくある話なんだよな
本日も、2話めの投稿です!
さあ、自信満々のタケシトは、どんな手段に訴えるのか?
俺がソファーに横になって、煎餅片手にテレビを見ていると、見知った顔が映っていた。
「どーもぉ!ミキオダです!」
「タケシトです!」
「二人合わせて、パンケーキマンです!」
「いやあ、しかしなんですねぇ!
最近はAIとかいうのがどんどん進化してて、なんでもAIって感じですよね!
なんと先日、ついにうちの会社の人事部がAIになっちゃったんですよ。」
「マジ?AIが人事部って、どんな会社?
ちょっと何言ってるかわからないんですけど?」
「いやいや、これがなかなかいい感じでね。
毎日でも、自分たちに時間がある時に、AIが話を聞いてくれるのよ!
しかも、アバターを選べて、自分の好きな相手と話しができる。
俺なんか、推しのアイドルにそっくりなアバター設定してね、晩酌の時にビール片手にいろいろと仕事の話をするのよ。」
「ぷっ!お前、寂しい奴だな」
「うるさい!これも仕事の一環なの!残業代は出ないけど!
それでさ、カミさんと違って、向こうの愚痴なんて一切言わないのよ!
基本、俺の話を興味深く聞いてくれて、感心してくれたり、笑ってくれたり、褒めてくれたりさ。
とにかく優しいんだよ!」
「それはいいねえ!基本的にカミさんと話してても、こっちは聞き役だからな。
向こうがめちゃくちゃなこと言ってても、共感してあげないと機嫌が悪くなって、関係ないことで俺をディスり出すしな。
挙句の果ては、あんたの安月給じゃこれ以上酒なんか飲ませないから!とかなんとか言って、片付け始めるんだよな。
自分は3000円もするランチ食ってさ、俺なんか不味いワンコインランチ食って節約して、浮いた金で晩酌に発泡酒と焼酎飲んでるってのにさ!」
「だろ?いやあ、親身になって聞いてくれるからさ、相手がAIだってことも人事部だってことも忘れて、気持ち良くなって何でも話しちゃんだよ!
そう言えば、俺の部署にパワハラ上司がいたんだけどさ、みんな困ってたんだけど、報復とか怖くて、なかなか人事部なんかに訴えられないじゃん?
どうも俺の話を聞いたAI人事が、複数の人の証言を公平に分析して、そのパワハラ上司を叱ってくれたらしいんだ!
上司の側も、ぐうの音も出なくて、大人しくなってさ、しばらく居心地悪そうにしてたんだけど、どっかに転勤して行っちゃったよ。
でも、風の噂で聞いたら、転勤先ではすっかりいい人になってるってさ!
ありゃ、相当AIに脅されたと見たね!いい気味だ!」
「なるほど、AIってのも、案外いいねえ!」
「だろ?俺はもうAI人事以外は人事と認めないね!」
「いやあ、世の中変われば変わるもんだねぇ。
でも、会社が良くなるんだったら、大歓迎だな!」
「人間の人事部なんて、もうエーアイ(ええわい)!」
「どうも、ありがとうございましたぁ!」
なんだこのベタは漫才は!?
あまりにもわざとらし過ぎて、逆に警戒するわ!
まるで、派手なおばさんが、社長!やす~い!って体をくねらせながら宣伝してるどっかの通販番組と同じじゃねえか!
タケシト、お前ほんとに大丈夫か?
場面は変わって、進捗ミーティングの場で、ナーチャンがいつも通り安定の進行だ。
ちなみに、リシュンのファシリテートは、若干話が長くなるので、ブレストやグループトークの時に使って、普段はナーチャンがテキパキと司会進行している。
「今回は、タケシトさんによる、メディアを使ったAI人事のイメージアップ戦略の結果についての報告です。
リシュンさん、お願いします。
「ああ、わかったぜ。
結論から言うと、大成功だ。」
なんですと?あのベタな漫才が大成功?
「ちょっと待て!あんなのでみんな納得したの?
やらせ感満載だったんですけど?
BPOの審議対象になりそうな番組だったんですけど?」
「いや、その点は大丈夫だ。
俺たちタスクフォースの存在は一部のVIPにしか知られていないので、タケシトがメンバーであるということは隠してある。また、事前にBOPにも圧力は掛けてある。」
VIPにBOP?
VIOと関係あるのかな?
「ユージさま、恥ずかしいところのムダ毛処理とはぜんぜん違います!
トミージョン手術のトミーをピーチと置き換えるよりも違います!」
ピッチャーの肘の手術がセクシーな下着と間違えられるよりも違うとは、相当だな。
そう言えば、お塩さんはどうなったのかな?
「続きを話していいか?
国民は、AI人事のホスピタリティに大いに関心を持ったようだ。
男女の別なく、好きなアバターとマンツーマンでのんびりと会話ができる点が受け入れられたってことだな。
どうせ人事部なんて偉そうにしてる癖に俺たちのことなんかちっともわかってないんだよ!
と思っている人がいかに多いかってことでもある。
嫌われ者の人事部の担当がいなくなって、好きなアイドルが親身に話を聞いてくれる。
誰が嫌がると思う?
しかも、結果的には公正な評価がなされて、仕事もしやすくなる。
それを国民がしっかりと理解したっていうことだな。」
なるほど。
あのベタな漫才の効果かどうかは別にして、AI人事は世論に受け入れられたってことね。
めでたしめでたし。
その時、会議室のドアが開いて、マイヤンが飛び込んできた。
「みなさん、大変です!
元人事部の方々が、集団になって反AI人事のシュプレヒコールをあげながら、国会議事堂前でデモ活動を行っています!」
やっぱ排除される側は、黙ってないよね。
どーすんのこれ?
「やっぱここは俺の出番っしょ!でござる。」
「おー!サトータ!
よろしくな!頼んだ!
全部お前に任せるから、俺の好きなようにやってくれ!」
「リーダー、それを言うなら、お前の好きなようにやってくれだろ?
それでは、行って来るでござる!」
そう言ってサトータは、刀を片手に部屋を飛び出して行った。
うん、本音が洩れた。
でも、もう少し別の言い方をすると、俺に迷惑がかからないように、好きにやってくれ、なんだよな。
まあいいけど。
ってか、刀なんか持って行って、大丈夫なのか?
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やっぱりなんの問題もなく大成功って訳には行かないみたいですね。
次回は、サトータさんのお手並み拝見です!




