第22話 初めての任務~やってみたら意外と簡単に出来ちゃうこともある
さすがのタスクフォースをもってしても、なんやかんやで、1年かかっちゃいました。
でも、1年なんてあっという間ですよね。
何?それは年を取ったからだって?ちょっと何言ってるかわかんないんですけど。。。
ところで、スピンアウトに短編、「産廃屋のおっさん、後輩に人生を教える」をリリースしました!
最初の短編のさらに一か月前のお話です!
ぜひご一読ください!
「それでは、進捗ミーティングを開始します。
サトータさん、前回スケジュールが押していた、結果検証については、その後いかがですか?」
検討段階から早一年が経過した。
すでに人材センターは稼働を開始し、企業内での人事異動のAI化が始まっていた。
人事をAIに任せて良いのか?
といった漠然とした不安は、実際の運用による効果を実感した結果、すでに払拭されていた。
リシュンのAGIは、自らちゃくちゃくと成長しているが、まだ、個別マターのAIとして活用している。
ただし、頼みもしていないのに、彼が自ら名付けた社長代行AI「しゃちょーさん1号」を開発し、各企業には、職場内の意見が分かれた際にAIに判断してもらうことを義務付けた。
これにより、喧々諤々の議論をする時間が削減されるとともに、上司におべんちゃらを言って気に入られて案件の決済を取るとか、上司の無茶な指示に従って時間と労力を浪費することとか、やる気の無い部下のためにする議論を論破して無理やり働かせるとかの無駄が無くなったのである。
確かに、どんな案件もすべての情報を把握している有能な社長に早い段階で決済を仰ぐと、効率がいい。
ただし実際は、一人しかいない社長に小さなことからすべて相談するなんてことは、物理的に不可能だ。
社長には、もっと大きな仕事にマンパワーを使ってもらわねばならない。
しかし、「しゃちょーさん1号」だと話は別だ。
いつでも誰でもなんでも相談できるし、疲れないし、一度に何件でも案件処理できる優れものである。
ってか、これもうAGIと言っていいんじゃね?
もう一つ言わせてもらうと、ネーミングもAIに任せた方がいいんじゃね?
”しゃちょーさん、イイヒトねぇ!ドリンク頼んでもイイデスカ?”
ってな感じでなんとなく、フィリピンパブに来てるみたいな気がするし。
「はい。企業内での人事AIによる業務効率化については、検証が終了しました。
AIを導入した企業と、従来通りの企業の二つのグループに分けて集計したところ、生産性に有意な差が生じました。
というか、劇的な効果がありました。大成功でござる。」
「そうですか。それは良い結果でしたね。
それでは、次のフェーズに移行しましょう。
来月から、国内のすべての企業ならびに役所に、人材センターへの加盟を義務付けしましょう。
続いて、国家レベルでのドラフト制度および企業横断的な人事異動であるトレード制度についての検討状況はいかがですか?」
「それについても、詳細検討まで終了しています。
後は、ゴーサインを待つのみでござる。」
「わかりました。
ただし、急いては事を仕損じる、です。
人事AIの全国展開が軌道に乗るまでは、3か月は見ておいた方がいいでしょう。
では、三か月後にマイルストーンを置いて、ドラフト制度およびトレード制度実施についての判定会議を行うこととします。
ユージさま、よろしいでしょうか?」
「うむ。」
なんか俺、最近”うむ”しか言ってないような気がするんだけど…。
でもまあなんだ。
上手く行ってるなら、言うこと無いよな。
もし上手く行かなくても、俺の意見なんか聞かない方がいいと思うけどね。
と思いながらも、俺は言った。
「そうは言っても、全員が納得してる訳じゃないんでしょ?
そりゃそうだよね。」
世の中、保守的な人間が多い。
今やっている仕事のやり方を変えるためには、多大なるエネルギーが必要になる。
やり方を変えたことによって、今まで大丈夫だった問題が生じたり、想定外の事態への対処が必要となる。
とにかく、こなれて来るまでは、大変なのだ。疲れるのだ。
しかも、手続きを変えることによって、今まで、”歩くマニュアル”なんて言われて得意気にしていた人が、また一からマニュアルを覚えないといけなくなったりする。
やり方を変えることによって、長い目で見たら大きくプラスになるとしても、変化の瞬間は、今までよりも大変になる。そういうものだ。
なので、変化を嫌う人は多い。
この仕事、面倒くさくて大変なんだよ、嫌になっちゃうよ。
と言ってた人が、効率化案に反対しちゃったりすることは少なくない。
つまり、イコタンの施策は、間違いなく反対派のストレスを溜め込むので、そのガス抜きをしてあげないと、国民の不満が爆発して大失敗するなんてこともあり得る。
しかしそうなると、失敗を俺の責任にされかねない。
俺は”うむ”しか言ってないけど、責任は取らされるだろう。
それはまずい。
なので、俺は言った。
「国民みんなの不満や不安をやわらげるためにさ、テレビとかネット使ったらどう?
面白おかしく、メリットっていうのかね、みんなの役に立つことやってんだってことをうまく説明してさ、笑いながら理解してもらうとかいいと思うんだよね」
いままで、何の役にもたっていなかったタケシトが、すっくと立ちあがって言った。
「リーダー、それだ!
さすがはリーダー!素晴らしいアイデアだ!
この件については、俺が全面的にやろうじゃないか!
相方のミキオダにも手伝わせるぜ!」
こいつ、ようやくやる気になってくれたか!
ただの太ったお荷物じゃなかったってことだな!
いてっ!
前言撤回。
リーダーを蹴るとは、こいつはやはりとんでもない奴だ。
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こんにちは、作者のアズマユージです!
『産廃屋のおっさんの異世界奮戦記』を読んでくださりありがとうございます!
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今後も、異世界×環境問題×おっさんの奮闘を描いていきますので、よろしくお願いします!
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イコタンの施策は、なかなか順調のようです!
そしてタケシト!
お荷物だと思われていた彼が、ようやく活動を開始します!




