第2話 異世界召喚~まずは情報の整理が大切です
ナーチャン参上!
そして、環境改善タスクフォース結成!
今回はベースキャンプとなる部屋での様子をお伝えします。
「こちらが、環境改善タスクフォースの皆さんのお部屋になります。
どうか、ご自由にお寛ぎください。
わたくしは、チーム全般のサポートを担当する、ナセ・ニシノナです
ナーチャンとお呼びください。」
シマイ・シライの次は、ナセ・ニシノナですか…。
まあ、メイド服がすごく似合ってて、かわいいからいいけどね。
ただ、スタイルの方はマイヤンよりもスレンダーで、将来的にも期待薄かも…
いてっ!
「あら、足が滑りました。申し訳ありません。」
この世界の女性は、どうしてこんなにも乱暴者が多いの?
せっかくの美貌が台無しだよ!
「それは、ユージ様が失礼なことをお考えになられたからでは?
それよりも、このお部屋について少しご説明いたします。」
それよりもって、軽く流されたよ…
ってか、人の心を簡単に読まないで欲しい。
まぁいいけど。
「このお部屋は、9LDKの間取りとなっております。
リビングダイニングの他、執務室が1部屋、客間が1部屋、寝室が6部屋、資料室が1部屋あります。
今はまだ環境改善タスクフォースのメンバーはユージ様とわたくしの2名ですが、今後4名が増員される
予定と伺っております。」
何?ナーチャンってメイドかと思ってたら、チームのメンバーなの?
俺、すごい奴がいいって言ったんだけど、大丈夫なのかなぁ…
いてっ!
だから、勝手に人の心読まないでってば!
「わたくしは、他人の思いを読み取って言語化し、具体的な企画に展開していくことを得意としております。
かならずや、ユージさまのお役に立てるかと存じます。」
「そりゃすごい!俺、この世界に来る前は体を動かす仕事してたから、企画書とかそういうの苦手なんだよね。」
「はい、ユージさまのご様子を観察するだけで、良くわかります。」
なんか、すごくディスられた気がするのだが…
苦手なものは苦手なので、手伝ってくれるなら、まあ、いいか。
「ところで、他のメンバーはいつ来てくれるの?」
とにかく、俺の能力では、この星の環境を守るなんて大それた任務は絶対無理!
仲間に頑張ってもらって、「ONE TEAM!」とかなんとか言って誤魔化してしまうしか無いよ。
そのためにも、本気で優秀な仲間を探してもらわないと困るんだけど、あの王女さまはちゃんと本気で考えているのだろうか?
「さあ…。わたくしは、全力でユージさまのサポートをと命じられているのみでございます。
あっ、でも、夜のお相手とか、お背中を流すとか、そういうのは無理ですので。ごめんなさい。」
「頼まねぇよ!」
こんなかわいい子に俺なんかがそんなこと言ったら犯罪だよ!死刑だよ!
せっかく転生したのに、いきなりセクハラで死刑なんて、シャレにもならないよ!
俺は上手く立ち回って、優雅なスローライフを手に入れるべく転生して来た男なのだ。
それまでは、色香に惑わされることなく、意志を強く持って、全面的に仲間に頼って、適当にタスクをこなすべく立ち回るのだ。
「もし、ユージさまがどうしてもそういうことをされたいのでしたら、近くに歓楽街がございますので…」
「………。行かねぇよ!」
危ない…。いまちょっと心が動いてしまいかけた。
だがしかし、元の世界で、キャバクラのねーちゃんのSNSのメッセージに本気になって散財した黒歴史を思い出して、自制したよ。
奴らは、ちょっとかわいいからと思って、モテないおっさんをカモにする、優しい悪魔なのだ。
ちょっと気を許すと、骨抜きになって、借金背負って、無間地獄に落ちながらも、通い続けてシャンパンを空けてしまうのだ。
つまり、近寄ると危険なのだ。
アイドルの推し活も、度を超すと同じ末路を辿るのだ。
マイヤンにナーチャン、いかにも危ない。クワバラクワバラ。
「そんなことより、第一王女にちゃんと伝えておいてくれ。
優秀な仲間を寄越すようにとな。
ということで、俺は風呂入って飯食って寝るから、準備を頼む。」
「かしこまりました。準備いたしますので、1時間ほどお時間をください。」
「わかった。よろしく頼む。」
とりあえず、この国の現状を知るところからだな。
そう独り言ちながら、俺は資料室に足を運ぶのだった。
「これは、結構充実しているじゃないか!」
資料室に入った時の俺の屈託ない感想だ。
実は俺は、資料を読んで整理するのは苦手じゃない。
いちおう、それなりに偏差値の高い大学を4年で卒業し、大手企業に就職したのだ。
社内の出世競争は激しく、社畜のように働いて、会社の業績にも貢献し、我ながらいい線を行っていると思っていた。
だが、俺を評価しれくれていると思っていた上司は、自分の旗色が悪くなった途端に、俺を切り捨てた。
それまで、家庭も健康も何もかも犠牲にして昼夜問わず働いていた俺は、その時初めて自分が仕事に、出世に取り憑かれていたことを悟った。
それまで、部下に厳しく当たっていた自分に気が付いた。
自分がされて嫌だったことを、俺は当たり前のように人にしていたのだった。
そして愕然とした俺は、静かに会社を去ったのだった。
後先考えずに会社を辞めた俺は、その後現実と直面する。
就職先が見つからないのだ。
正確に言うと、年収など希望の条件が高すぎたのだ。
以前の給料の8割程度しか要求していないのに、コーディネーターに条件を話したら、鼻で笑われた。
「アズマさん、もっと現実を見ましょうよ。
日本は、終身雇用の社会なんですよ。
特に手に職の無い中途入社の中年に、そんな好条件を出す会社なんてありませんよ。
あっ、これなんかどうですか?
創業者が一代で築いた産廃屋です。流行りの環境ビジネスですよ。
人材が足りないようで、なかなかの好条件で募集していますよ。」
そして、俺は産廃屋に転職した。
それはともかく、俺は、資料室の資料を片っ端からめくって、パラパラと眺めることにした。
結果、今の地球とこの世界は、非常に似通っていることがわかったところで、1時間が経ったようで、ナーチャンから声を掛けられた。
「お食事とお風呂の用意ができました。
どちらになさいますか?
それともわたくしを、というのはごめんなさい。」
「だから、言わねえって!
とりあえず腹減ったからメシにしてくれ」
なぜ俺は、口説いてもないのに振られてるんだ?
それとも何か?あれは例の「押すなよ、押すなよ、押せよ!」なのか?
なんてことを考えながら食卓についたが、そのメニューを見て驚いた。
駅前のスーパーで買って来たと思われる、半額シールが貼ってある総菜と、サバ缶、柿の種ワサビ味。発泡酒に大型ペットボトルに入った安物の焼酎が氷と割りばしともに並んでいた。
「おい、なんだこれは?」
ナーチャンは、優しくにっこりと笑いながら、ドヤ顔で言った。
「お口に合うように、普段のユージさまが召し上がっていらっしゃる献立を徹底リサーチし、完璧に再現させて頂きました。どうぞ、ご遠慮なく召し上がってくださいませ!」
確かに普段の俺が食べているものだけど、恥ずかしいわ!
いやいやいや、無いわぁ!ホント無いわぁ!
「お風呂も、離婚後にお住まいになられているワンルームのアパートを完璧に再現して、追い炊き機能などの無駄を省いて、足が伸ばせない節水型の環境に優しいお風呂にさせて頂きました。」
おいおいおい!
どこまで調べたの?いつ見てたの?
ってことは、俺の生活すべてガラス張りってこと?
勇者にふさわしい美味しいフルコースの食事に、ライオンの口からお湯が出る豪華なお風呂、出来ればサウナに水風呂、外気浴が出来るスペースがあるかな…
なんて思っていた俺がかわいそうじゃん!
ん?ってことは何か?
俺の寝る前の日課である、アレも見られてたってこと?
うっわ!そんなん見るの変態やん!
ってか、ナーチャンにそんなもん見せたら、俺も変態やん!
そうか!それで再三にわたって釘を刺してきたのか…。
謎は、すべて、解けた…。
ナーチャンは、少し頬を赤らめながら言った。
「まあ、そういうことです。」
終わった…。
俺の異世界生活は、初日にして終焉を迎えた…。
チームのメンバーに秘密を知られてしまった以上、俺はどんな顔をしてシリアスなシーンを演じればいいのか?
「誰にも言いませんので、ご安心ください(笑)」
いやいやいや!
笑ってるやん!変態だと思ってるやん!恥ずか死ぬレベルやん!
もうお婿に行けない。こうなれば、責任取ってもらわなければ…
いてっ!
そして俺は、異世界初日にもかかわらず、いつも通りの晩酌を楽しんだのだった。
でもまあなんだ、ナーチャンが隣にいたので、いつもの安酒が格段に旨く感じたのは、内緒だ。
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こんにちは、作者のアズマユージです!
『産廃屋のおっさんの異世界奮戦記』を読んでくださりありがとうございます!
もし「ちょっと面白いかも」と思っていただけたら、ブックマークや感想をいただけると励みになります。
今後も、異世界×環境問題×おっさんの奮闘を描いていきますので、よろしくお願いします!
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次回のテーマは、晩酌です!
晩酌、好きなんですよね。体に悪いとわかっていながら、ついつい飲み過ぎちゃう自分がかわいい!
でも、酒を飲みながら、真面目な話をするのも、しがらみに囚われないアイデアが出てきたりして、有意義なこともありますよ!