第107話 和平交渉〜軍師サムの考察
なんか、国分太一さんの記者会見見てたら、確かに日テレ側の対応も酷いって気がしますね。
理由も告げずに一方的にパワハラだって言われてもねぇ。
もちろん、国分さんの行動にも従来から問題はあったんでしょうが、せめて理由ははっきりさせてくれないと、納得出来ない気持ちも理解できるかもです。
それはさておき、今回は魔王軍側の撤退理由の答えあわせです。
お楽しみください!
「私の情報によると、とにかく勇者ユージは、とんでもないことをさりげなくやってのける人物だそうです。」
得意のどや顔で、唇を少し尖らせながら、軍師サムが説明していた。
「まずは、政局が混乱していたジャポネ王国で、簡単に主導権を握ってしまいました。
召喚されてすぐだと言うのに。」
魔王アサダは驚いて言った。
「そんなことが可能なんですか?
いくら勇者だからと言って、異世界から召喚されてすぐに国を掌握など、俄かには信じがたいですね。」
「いえ、どうやら本当のようです。
そして、次々と新たなアイデアで崩壊寸前のジャポネ王国を見事再建。
しかも、その間に起きた大地震を見事死傷者を出さずに切り抜けたうえ、新たなエネルギーを開発。
AIを活用した様々な経済対策や国民掌握を矢継ぎ早に投入し、ジャポネ王国を人族の中で頭一つ、いや二つほど飛びぬけた国に発展させています。」
「ジャポネ王国と言えば、人族の中では最弱だったはず。
それを、そんな短期間で最強にするなんて!
彼はどんな手を使ったのですか?」
「それははっきりとはわかりません。
しかし、過去の戦争で疲弊していたジャポネ王国が、その後の人族間の戦争において、他の4国に圧勝したことは事実のようです。」
「なんと!」
「しかもその後、我らが宿敵とも言える、月影の宴旅団との同盟交渉を成功させ、我らが魔王軍と対等以上に渡り合うというウルトラCを実現しています。
ちなみに、彼らをして、人族間での戦闘において圧倒的優勢たらしめたのは、件の『指向性EMP発生装置』でした。
彼らは、初めて実戦に投入したその新兵器を用いて、敵味方ともに最小限の人的被害で戦闘に勝利しています。」
「慈悲深い方だということですか?」
「そうとも言えますし、計算高いとも言えます。」
魔王アサダは不思議そうに尋ねた?
「計算高い?」
軍師サムは丁寧に説明した。
「はい。
戦争において重要なのは、彼我の力の差を見せつけ、自らの主張を通すことにあります。
決して、多くの死傷者を出すことではありません。」
「なるほど、死傷者を出さずして、敵の兵器を無力化するというのは、理にかなっているのですね。」
「その通りです。
しかも、戦後処理を行う際、国民感情に対する配慮という点で、死傷者を出さないというのは極めて効果的です。」
「と言うと?」
「つまり、理屈と感情のせめぎ合いと言いますか、意地と言いますか、そういったものへの配慮が要らないということです。
もう少し簡単に言いますと、頭では譲歩せざるを得ないとわかっているものの、家族を惨殺された国民が多いと、世論に配慮して簡単に合意出来なくなるということです。
ところが、死傷者が少なかった場合、感情的な強硬論が出にくいため、冷静で合理的な交渉が可能になるということです。」
「なるほど。
国の代表としては、民意を重視せざるを得ない、国民感情を無視出来ないため、合理的な議論が出来ないことがあるということですね。」
「その通りです。
某近隣の大国が、首相の発言を内政干渉だと言って強硬な措置に出たりするが、大国側も本音では自分たちが質の悪いことをしていると気づいていたりします。
実際、大国の官僚は、無能では務まりませんからね。
ところが、実際は本心から思っているかのように馬鹿な発言を繰り返す。」
「確かに、聞いていて呆れますね。」
「彼らは、国の中枢部からのプレッシャーで、そう言わざるを得ないのです。
仮想敵国を作って、国民の意識をそちらに向けるという意図もあるかもしれません。
しかし、国民感情を逆なでするような施策は、独裁者の政治生命を短くしかねません。」
「それで、死傷者が少ない方が良いということですか。なるほどですね。」
歴史を振り返れば、国民感情を揺さぶる出来事は数多く存在した。
例えば――真珠湾攻撃。1941年、日本海軍が米国ハワイの真珠湾を奇襲し、米国民の怒りを決定的に高めた。これが太平洋戦争の始まりとなったのだが、最近でもリメンバーパールハーバーを題材にした映画がハリウッドで制作されている。
そして――南京大虐殺。1937年、日中戦争の最中に南京で起きた大量虐殺と暴行は、中国国民の記憶に深く刻まれ、今なお両国関係に影を落としている。
さらに――731部隊。旧日本軍が中国東北部で行った人体実験部隊。非人道的な行為は戦後も国際社会に衝撃を与え、倫理と医学の根幹に問いを残した。
韓国では――従軍慰安婦。戦時中、女性たちが強制的に慰安所へ送られた問題は、その真偽のほどは諸説あるものの、戦後も長く外交摩擦の火種となり続けている。
ヨーロッパに目を向ければ――アウシュビッツ。ナチス・ドイツが設けた最大の強制収容所で、ユダヤ人を中心に百万人以上が犠牲となった。人類史における「負の遺産」として、忘却を許されない場所だ。
戦後80年経っても、負の国民感情は払拭されない。
軍師サムは、続けた。
「しかしながら、死傷者を出さずに圧勝するなどということは、通常は絵空事です。
そんなことを実現してしまう、勇者ユージは、とんでもない天才なのでしょう。
そして、さらなる新兵器が我々の眼前に現れた時、私はこの戦いの負けを確信しました。」
魔王アサダは得心したように言った。
「だから、退却命令を出したのですね。
良くわかりました。
しかし、攻めるより、撤退する方が難しいと言いますよね?」
撤退戦の難しさは、ダンケルクの撤退を指揮した英軍や、ガダルカナル撤退を成功させた日本軍が、いまだに「秩序・心理・補給・政治」を同時に管理したといって賞賛されていることからもわかる。
「そうですね。
だからこそ、魔王様にあの作戦をお伝えしたのですよ。」
軍師サムは、相変わらずのドヤ顔で続けるのであった。
これから、ユージは魔王とどういう交渉をしていくのでしょう?
希望的観測をお持ちの方は、ぜひコメントください!
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