第106話 和平交渉〜魔王の葛藤
茨城のリサイクル工場が大規模火災を起こしていますね。
昔から、産廃工場が燃えたら、自ら放火したんじゃないかっていうまことしやかな噂が流れます。
処分費を払って処理するくらいなら、燃えちゃった方が得だって感じでね。
まあ、その後の行政対応や復旧までの逸失利益を考えたら、そんなこと無いはずなんですけどね。
さて、今回は魔王軍側の様子をお伝えします!
その頃、魔王城に引き上げた魔王軍の幹部は、今後の協議を続けていた。
「何故撤退した?
戦力は互角、兵の練度強度は我が方が有利!
あのまま突っ込めば、敵の本拠を落とせたはずだ!」
気色ばんでロクローマルが大きな声を上げた。
それに対し、軍師サムは、冷静に返した。
「ロクローマル、あなたは『耐魔力AGI搭載型指向性EMP発生装置』がどのようなものと思っておられますか?」
怪訝そうな顔でロクローマルは答える。
「よく解らんが、最初に人族が使った兵器は、武器のみを使用不能にしたものだった。
つまり、根性無しの連中のことだ。たいしたものじゃないだろう。
もしかしたら、単なるハッタリかもしれなかったのだぞ?
それにビビッて退却するなど、まるで木像に怯えて勝機を逸するようなものだ!」
小さく首を振りながら、サムが返した。
「そもそも、最初に彼らが使用したのは、『指向性EMP発生装置』です。
これは、高度な電子機器に依存した近代兵器を使用不能にするものです。」
軍師サムの説明に、魔王アサダが頷きながら言った。
「確かに、近代兵器はあれで全滅しました。
通信機器ですら使えなくなりましたね。
幸い、魔道兵器は無事だったので事なきを得ましたが、あれには驚きましたね。」
大きく頷きながら、サムは言った。
「簡単に言うと、強力な電磁パルスで最新の兵器にダメージを与えるものです。
ただし、最近はEMP耐性設計されてる兵器が多く、そう簡単に無力化は出来ません。」
「ではなぜ?」
「恐らく彼らは、濃縮魔素を作って、宇宙空間で爆発させることで、太陽フレアを大きく上回る強力な電磁波を発生させ、それを我が軍の兵器をピンポイントに狙って放出したのでしょう。
結果、今のEMP対策技術では防ぎきれない影響が生じて、すべての電子機器が作動不能もしくは誤作動を起こしたのだと思われます。
しかも、我が軍の兵器のみを無力化することに成功しています。」
魔王アサダは、驚いて言った。
「それほどまでに画期的な兵器を開発していたとは。
恐るべしですね。」
軍師サムは、激しく同意して言った。
「しかし、我が軍には最新の魔道兵器が数多く配置されています。
そのため、ダメージは小さくありませんでしたが、戦線を維持することは出来ました。
結果、3倍の兵力差が一瞬で縮まり、戦力はほぼ互角になってしまいました。
圧倒的なアドバンテージが、一瞬にして無くなってしまったのです。」
そこに、焦れたようにロクローマルが口をはさんだ。
「それが何だと言うのだ?
戦力が互角であるのに、撤退したのは何故かと聞いているのだ!」
「そこで彼らが出して来たのが、さらなる新兵器『耐魔力AGI搭載型指向性EMP発生装置』でした。」
「ハッタリに決まっておる!」
「いえ、敵の技術者は、とんでもない発想とテクノロジーを持つ、本当の天才です。
恐らく、新兵器を使われたら、我が軍の魔導兵器に壊滅的な打撃を受けたものと思われます。」
「それでも、戦力差は互角であろうが!
練度と基礎能力の高い我が軍の兵士が負けるはずは無い!」
「いえいえ、それは、ロケットランチャーと機関銃に対して竹槍で突っ込んでいくようなもの。
敵の近代兵器と魔導兵器の前では、練度の高い兵士も赤子と変わりません。」
「何!ワシの軍の兵士を赤子だと!それは聞き捨てならんぞ!」
魔王アサダが優しく諭した。
「ロクローマル、あなたとあなたの兵士たちの努力は、私が一番良く知っています。
寝食を忘れて訓練に取り組み、持てる力を最大限に引き出せるように、あなたが鍛えて来たこと、まとこに頼もしく思っています。」
「ははっ!有難き幸せ!
しかし、そうであれば、退却という判断は受け入れられません!」
「ロクローマル、私は誰一人犠牲にしたくないのです。
ブラック企業と変わりないあなたの軍の兵士にも、家族がいます。
あなたも、あなたの部下も、皆私たちの大切な仲間です。
それを、無謀な作戦で無駄死にさせる訳にはいかないのです。」
「無駄死にするかどうかなど、わからないではないですか!」
そこにロクローマルが割って入る。
「いえ、結果は火を見るよりも明らかでした。
あなたの無念は良くわかります。
私だって、この戦では煮え湯を飲まされた思いです。
忸怩たる思いで、不眠症になりそうです。
しかし、魔王様の思いを考えると、あそこでは撤退の一手しかありませんでした。」
そこに魔王アサダが続ける。
「ロクローマルよ、サムはこういう事態も想定して、私に策を授けてくれました。」
「策ですと?最期の自爆云々のあれですか?」
「そうです。
軍師サム、ロクローマルに説明してあげてください。」
「はっ、喜んで!」
そう言って、サムは語り出した。
「敵方の中心は、環境改善タスクフォースという、ジャポネ王国の特別部隊です。
そのリーダーは、勇者ユージと言って、常人では計り知れない人物です。」
「タスクフォース?常人では計り知れない?
なんだそれは?」
「どうやら、この星の環境問題を解決すべく、ジャポネ王国が異世界から召喚した勇者のようです。」
その後、サムは伝え聞いたユージの今までの活躍を静かに語るのだった。
魔王軍はこの後どういう手を打つのか?
軍議はまだまだ続きそうです。
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