第102話 正面衝突〜記録は破られるもの
遂に、本格的な戦闘が開始しました!
第2幕の勝負の行方は如何に?
リシュンが開発した指向性EMP兵器は、対近代兵器であった人族との戦いには絶大なる効果を発揮した。
しかしながら、柳の下の泥鰌の逸話通り、対魔王軍戦では期待通りの効果を得ることは出来なかった。
加えて、ジャポネ王国の王城を護る魔導シールドすら、魔王軍側の新兵器である魔導バリスタによって、風前の灯火となっていた。
どんなに素晴らしい記録を打ち立てたとしても、新記録は破られる運命にある。
どんなに強力な兵器も、一度使えば対策を施される。
零式艦上戦闘機──通称「ゼロ戦」。
黎明の空を切り裂くように、白銀の機体が舞い上がる。
日本が誇った戦闘機は、まるで神話のように語られた。
軽快な機動、驚異的な航続距離、そして空戦における無類の強さ。
開戦初期、太平洋の空は彼らの独壇場だった。
フィリピン、マレー、真珠湾──その鋭い爪は、連合軍の空を切り裂き、恐怖と畏敬をもって迎えられた。
だが、栄光は永遠ではない。
1942年、ミッドウェーの海に運命の歯車が軋みを上げた。
空母「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」が次々と沈み、熟練の搭乗員たちは海の藻屑と消えた。
技量と経験に支えられていたゼロ戦の優位は、静かに、しかし確実に崩れ始めていた。
そして、アメリカは学んだ。ゼロ戦の長所と短所を。
軽量化の代償として犠牲にされた防弾装備。
急降下に弱く、速度では劣る。
連合軍は新鋭機「F6Fヘルキャット」や「F4Uコルセア」を投入し、数と性能で圧倒し始めた。
空の主役は、いつしか交代していた。
かつての英雄は、時代の流れに取り残される。
改良の余地を失い、熟練の手を失い、ゼロ戦はやがて「撃ち落とされるための機体」と成り果てた。
戦局は、もはや覆せぬほど傾いていた。
空母は沈み、熟練の搭乗員は失われ、補充された若者たちは、操縦の基礎すらままならぬまま、空へと送り出された。
かつてのゼロ戦の栄光は、もはや過去の幻影。敵機は重厚な装甲と強力な火力を備え、数でも質でも圧倒していた。
そして、昭和十九年。大本営は、ある決断を下す。
「体当たりによる攻撃」──神風特別攻撃隊の誕生である。
それは、戦術ではなく、信念だった。帰還を前提としない飛行。
爆弾を抱え、敵艦に突入する。ゼロ戦は、再び主役となった。
だがその舞台は、勝利の空ではなく、死を前提とした空だった。
そこまで話したユージは、皆に向かって言った。
「今の俺たちには、逃げる場所は無い。
リシュンの指向性EMP兵器は、期待ほどの効果は得られなかったものの、敵の戦力を大きく削ったことに間違いは無い。
あと1時間。
シールドが破られる前に、白兵戦に向けた準備をしよう。
戦力は互角だ。
お互いの真価が問われる局面だ。
気合入れて行くぞ!」
「「「「おー!!!!!」」」」
タスクフォースのミーティングルームに、鬨の声が響き渡り、全員に気合が入った瞬間だった。
しかし、ナーチャンはひそかに思った。
「やはりユージさまは、ゲームチェンジのタレントを使いたくないのですね。
往生際が悪いですね。」
そして、初めてユージに彼の持つタレントを説明した時のことを思い出していた。
「ゲームチェンジとは、そのものずばり、革命を起こすことができるタレントです。
従来のルールや常識、勢力図を一瞬で覆すことの出来る能力です。」
「すげーじゃん!ってか、そのタレント使ったら、何でも出来ちゃうじゃん!俺って最強?」
「はい、何でも出来ます。
ただし、威力がすごいため、その反作用も大きいです。
ひとたび発動すると、全身の毛根が死滅して、すべての毛が抜けてしまいます。
再生することはありませんので、一生ツルツルのままです。
2度目は、さらなる試練が待ってます。
男性としての機能が喪失します。
そして、3度使えば、どうなるかはもうおわかりではないですか?」
そこまで思い出して、ナーチャンはクスっと笑って独り言ちた。
「まあ、ユージさまのことですから、何かとんでもないことを考えているのでしょう。
しかし、これだけ厳しい状況でも、なぜか裏付けの無い安心感を与えてくれる人は、他にはいませんね。
では、私は私の仕事をするとしましょう。」
時は、刻々と過ぎて行った。
そして、キッカリ1時間後。
魔王軍の魔導バリスタが、王城を取り囲む魔導シールドを突き破った。
ロクローマルは、自ら先頭に立ち、自慢の戦斧を振り回しながら、馬上で剛腕を振るった。
初戦の敗退から、溜まりに溜まった鬱憤を晴らす時が、漸く訪れたと言わんばかりの気合の入りようだった。
そして遂に、ジャポネ王国軍と魔王軍との決戦の火蓋が開かれたのだった。
空は、血のように赤く染まり、風は不吉な唸りを帯びていた。
王国の旗が高々と翻り、10万の兵が静かに剣を構える。
その瞳には恐れも迷いもない。
ただ、祖国を守るという誇りと、背負った命への責任が宿っていた。
対するは、漆黒の霧を纏う魔王軍。
地の底より湧き出た魔獣たちが咆哮を上げ、空を裂く飛竜が旋回する。
魔王アサダは、玉座の如き戦車に腰を下ろし、冷ややかな眼差しで戦場を見下ろしていた。
「今こそ、運命を決する時です!」
魔王軍の豪将ロクローマルに対し、王国軍の将軍、蒼雷のレオンが迎え撃つ。
二人の将軍の激突に応えるように、戦場が震え、太鼓が鳴り響く。
弓兵が矢を放ち、魔法使いが詠唱を始める。
炎と氷が交錯し、剣と爪がぶつかり合う。
その様子を眺めていたユージは、ひそかにつぶやいたのだった。
「リシュン、お前だけが頼りなんだから、早く帰って来てよぉ」
やはりユージの作戦は、リシュン頼みってことでしょうか?
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