第100話 正面衝突〜第2幕開催
いよいよ、第2幕の開幕です!
勝敗の行方は如何に?
魔王軍の作戦は上手く行くのか?
ジャポネ王国の王城を取り囲む魔王軍の軍勢は約30万。
初戦で損耗した兵力をすっかり回復し、魔王アサダも本陣にいることから、士気も高い。
加えて、今度は軍師サムも参加しており、抜かりはない。
対してジャポネ王国側の軍勢は約10万。
数では圧倒的に不利だが、籠城戦の定石からすると、1対3の戦力さは、ほぼ互角と言って差し支えない。
戦局が長引けば、人族の他の国の軍勢が援軍に駆け付ける算段となっている。
それまでに魔王軍が王城を陥落させることが出来れば、魔王軍の勝利。
持ちこたえれば、ジャポネ王国の勝利となる。
ただし、魔王軍が中部人民共和国の経済と交通の要衝、海運都市ションパイを押さえたことが、どの程度戦局に影響を与えるかが未知数だった。
ロジスティクスが戦争に与える影響は極めて大きい。
その点で、ションパイ奪取は魔王軍にとっては大きな戦果だ。
一方で、初戦でロクローマルが敗退した点はマイナスであり、現時点では痛み分けと言ったところか。
そして遂に、戦局が動いた。
タスクフォースの本陣で、ナーチャンがユージに報告した。
「魔王軍より、通信が入りました。」
それを聞いたユージは、冷静に言った。
「敵は、なんと言って来ている?」
ナーチャンは、少し声を震わせながら、報告した。
「降伏せよ、と。」
「「「なんだと!」」」
ミーティングルーム内に緊張が走った。
しかしユージは、若干表情を緩めて苦笑した後、表情を引き締め直してから、ナーチャンに向かって言った。」
「では、返答してやってくれ。」
「はい、何と返しますか?」
「バカめ」
それを聞いたナーチャンは少し首を傾げて聞いた。
「今、なんと?」
ユージは、再度言う。
「バカめ、と言ったんだ。
全軍、戦闘準備だ!いよいよ開戦だぞ!心してかかれ!」
「「「オー!」」」
その返事を聞いた魔王軍の本陣では、ロクローマルが怒りをあらわにしてサンドボードに拳を叩きつけた。
「バカめだと?奴らはふざけてるのか?」
いや、ユージは昭和の国民的アニメの老艦長の真似をしただけだった。
「ロクローマル、そんなに興奮していたら、戦局を見誤りますよ。
それに、折角作ったサンドボードを壊さないでください。」
軍師サムはあくまで冷静にロクローマルを諫めた。
「しかし、我々をないがしろにしたことは事実です。
熊を刺激したらどうなるか、目にもの見せてやりましょう。
いつやるの?今でしょ!」
そして、降伏勧告を拒絶された魔王軍は、ハチオ軍による、魔導シールド発生装置襲撃を始めたのだった。
「狙撃隊、前へ!
目標は、敵の魔導シールド発生装置!
合図を待って一斉攻撃だよ!
みんな、抜かるんじゃないよ!」
「「「ラジャー!」」」
「よし、そろそろ頃合いだね。」
そう言ったハチオは、おもむろに立ち上がって大声で指示した。
「撃てっ!一斉射撃だ!貴重な新兵器だ、良く狙えよ!」
バシュッ、バシュッ、バシュッ、バシュッ!
ドガン、ドガン、ドガン、ドガン!
ジャポネ王国の城壁外に設置された魔導シールド発生装置が次々と破壊されて行った。
高さ、間隔を正確に同一に設置されたその装置は、簡単に狙い撃ちが出来た。
「ふん、勇者かなんだか知らないが、とんだ間抜け野郎だね。
どんな素晴らしいシールドも、発生前に破壊してしまえば、無用の長物さね。
さて、ワタシらはこのへんで退却して、後はロクローマルに任せるとするかね。」
そう言ったハチオの前に、一つの人影が立っていた。
その男は、身長こそ約170センチしか無いが、体重は100キロに迫る巨躯だった。
それが、無造作にハチオの前に佇む。
「何?敵か?このワタシが何の気配も察せられずに、こんなにも接近を許すとは、只者じゃないね。
誰だ!お前は?」
その男は、不敵に笑って答えた。
「俺は、ジャポネ王国のタスクフォースに、この男ありと言われている、タケシト・ミザワだ。
どうだ、驚いたか!」
それを聞いたハチオは、不思議そうにつぶやいた。
「タケシト・ミザワ?
聞いたこと無い名前だね。」
そして、傍らにいる兵士たちに聞いた。
「おい、お前ら。
こいつのこと知ってるか?」
しかし誰一人、タケシトのことを知らなかった。
それを知ったタケシトは、かなりショックを受けたようで、ブツブツ呟く。
「そうなんだよな。
だいたい目立つところはリーダーかリシュンかナーチャンが持って行って、俺はなんて言うか、日陰者的な存在なんだよな。
ああ、ムカつくぜ!
おいお前!この舞台の指揮官の、ハチオって奴を知ってるか?」
そう問われたハチオは、得意満面で答えた。
「そりゃあ、ワタシのことだね。
アンタみたいな三下と違って、ワタシはこのスタイルと美貌で有名だからね。」
そう言って、おもむろに振り向いて、上半身を大きく曲げて、交差した長い脚と形のいいお尻をタケシトに向けて見せつける、得意のポーズを取った。
それを見たタケシトは、思わず感嘆の言葉を口にした。
「なんてセクシーなポーズなんだ!
目の毒だぜ!」
そして、素早くハチオに近寄り、両手を合わせて、人差し指をピンと伸ばし、ハチオのお尻の中心を突き刺した。
「ウグッ!な、何しやがる!ううっ。。。」
突然の攻撃を受けてしまったハチオは、お尻を押さえて悶絶し、気を失ってしまった。
そして、そんなハチオを肩に背負ったタケシトは、ハチオの部下たちを簡単に蹴散らして、王城へと帰還して行った。
その様子を見ていたロクローマルは、顔を憤怒に染めながら言った。
「ハチオの尻を攻撃しただと?
しかも俺の得意なポーズで!
なんとも羨ましい!
いや違う、なんとも恨めしい!
全軍、突撃だ!!!
シールド発生装置はハチオ軍が破壊してくれた!
今度こそリベンジを果たすぞ!
行けえ!!!」
そして、タケシトが引き上げた後、岩や叢に擬態していた魔導シールド発生装置が唸りを上げ、初戦よりも広範囲で強力な城壁が展開された。
そして、ロクローマル軍の先鋒は、次々と城壁に跳ね返されてしまった。
しかし、前回の轍は踏まないと言わんばかりに、一旦停止し、被害を最小限に食い止めることに成功した。
しかし、棒立ちになったロクローマル軍には、さらなる試練が待っていた。
レアキャラのタケシトが、またもやいい仕事をしてくれました!
重要な対決において、伏兵の活躍は戦局を左右させることが、往々にしてありますね。
ドジャースのロハス選手の最終回同点弾のように。
それにしても、今年のワールドシリーズは楽しかったなぁ。
次はワールドカップに期待します!




