プロローグ
作者のアズマユージです!
良く考えたら、物語全体のプロローグを書いてなかったので、追加することにしました!
いまさらではありますが、お楽しみください!
総勢30万の軍勢を誇る魔王軍に対して、ユージたち王国軍タスクフォースと神楽耶率いる月影の庵旅団を始めとする人族連合軍は、わずか10万に過ぎなかった。
さすがのアルノルトの戦術をもってしても、多勢に無勢の感は否めず、連合軍の旗色は決して良いとは言えない状況に陥っていた。
「神楽耶さま、そんなに前線に出ると危険です!
もう少しお下がり下さい!」
側近の、カセーフ・ハミータが、危険な最前線で采配を振るう神楽耶に向かって懇願するように叫んだ。
だがしかし、当の神楽耶は、ハミータの讒言を鼻で笑って言った。
「わらわが前に出ずして、どうして勝利を得ることなど出来ようぞ!
見てみよ。
タスクフォースのユージ殿こそ、さらに危険な場所で戦局を見守っているではないか!」
そう言われて隣を見ると、タスクフォースのリーダー、異世界より召喚されし勇者である、アズマユージが、飛び交う弾丸の雨をものともせずに、腕を組んだまま瞑目していたのだった。
その姿を見たハミータは、驚愕に我を忘れて呟いた。
「なんという胆力!
なんという覚悟!
これがあの、神算鬼謀を操る人族の希望、勇者ユージさまということですか!」
実のところ、よそ見をしていたら逃げ遅れてしまい、目の前に飛び交う銃弾にビビって腰を抜かして動けなかったユージなのだったが、彼の前評判の高さ故に、勝手に周りが盛大な勘違いをしていたのだった。
ただ1人、そんな俺の真の姿を知りながらも、相変わらず俺をサポートしてくれるナーチャンが、周りに見えないように俺の足を踏んづけながら言った。
「ユージさま、しっかりしてください。
このままだと、魔王軍に押し切られてしまいます。
ここはいつもの、何かわからないけど上手く行ったよ作戦を実行する時です!」
「いや、なんか今までは確かにそんな感じで上手く行ったけれども!
そんなのわざとじゃ無いし!
そう都合良くラッキーパンチが続く訳無いし!
だって俺、ただのしがない産廃屋だし!」
そんな泣き言を言う俺の、絶対絶命のピンチに、あの男が駆けつけた。
それは、タスクフォースのテクニカルリーダーである長身イケメンのナイスガイ、リシュン・オグだった。
颯爽と現れたリシュンは、ユージにサムアップしながら言った。
「リーダー、遅くなってすまん!
だがな、ようやく完成したぜ!
アルノルトとの協働によって開発した新兵器、『耐魔力AGI搭載型指向性EMP発生装置』だ!
これを使えば、魔王軍の魔導兵器も、近代兵器も、いずれも無力化出来るぜ!
すでにリーダーの指令一つで稼働可能だ!」
「ん?」
良くわかっていない俺に向かって、リシュンが丁寧に説明してくれた。
「耐魔力AGI搭載型指向性EMP発生装置っていうのはな、強力な魔力阻害電波と、電磁パルスを同時に発生させ、魔力を動力源にする魔導兵器と、電子制御を前提とする近代兵器のいずれをも稼動不能にしてしまうものだ。
しかも、AIの未来形であるAGIによって制御され、敵の戦力のみを無力化するという優れ物さ。
これを発動させると、魔王軍など、剣と槍のみに頼る弱々しい兵の集まりになってしまうんだ。
対する俺たちは、最新の近代兵器を使いまくり!
まさに、蹂躙劇の始まりとなるのさ!
人数の差なんて、全く問題にならない。
圧勝出来るぜ!」
なんと!
俺の知らないうちに、なんかすごいものが出来てしまったようだ!
「でかしたぞ、リシュン!
もはや、我々の勝利は決まったようなものだ!」
そう言った俺は、相対する魔王に向かって叫んだ。
「おい、魔王!
もう勝敗は決した!
これ以上の抵抗は、お互いに利がない。
今回は、ひとまず停戦として、共存の道を探る交渉に移るってのはどうだ?」
俺は、なんか良くわからないけど、どさくさに紛れて、このまま戦いを終わらせてしまおうと思って、それらしいことを言ったのだった。
それに、なんか魔王って、おどろおどろしい奴かと思ったら、若い女性じゃないか。
しかも、若すぎず、歳過ぎず、よく見ると美人ではないものの、上品さと包容力を併せ持っている。
ドストライクだ。
どこかの残念王女とは雲泥の差だ。
あいつは、顔とスタイルだけはいいが、性格が破綻している。
器の大きい平和主義者の俺は、これ以上の無益な戦いによる犠牲の拡大よりも、この星のあるべき姿をともに協議する道を選んだ方が、格好いいし、もしかしたら新しいロマンスの始まりになり得るんじゃないかと思ったのだ。
しかし、そんな俺の思惑に対して、当の魔王は納得出来なかったようだ。
と言うよりも、魔王としても、味方のプレッシャーで和睦という選択肢を選べない状況に追い込まれていたのかもしれない。
そして、かわいい顔に似合わない不敵な笑顔を浮かべながら、魔王は言った。
「何を言っているのですか。
どこからどう見ても、我が軍の方が優勢ではなですか。
にもかかわらず、何故に我らが停戦に応じなければならないのですか?
筋が通りません!」
「いや、わかるよ。
貴女も、30万の魔王軍を背負っておられる身。
そう簡単には敵に屈することは出来ないでしょう。
しかし、これ以上戦いを続けたら、貴女の軍勢は全滅してしまいますよ?
それよりも、私と貴女が、手に手を取って、くんずほぐれつお互いの未来を語った方がいいと思うよ!
イテッ!」
後ろで聞いていたナーチャンが、俺の尻を蹴ってから言った。
「ユージさま、セクハラはほどほどに!
もう少し緊張感を持って交渉してください!
今がどういう時か解っているのですか?
いい加減、その長く伸びた鼻の下に力を入れてください!」
俺は蹴られた尻をさすりながら言った。
「わかってるってば!
今俺は魔王ちゃんとお話ししてるの!
ちょっと待ってよ!」
そんな俺たちを見て、魔王の後ろから軍師サムが、その顔を強張らせて言った。
「確かに、強力な新兵器を開発されたようですね。」
それに対し、リシュンが言った。
「ああ、そうだぜ。
俺の開発した『耐魔力AGI搭載型指向性EMP発生装置』を使えば、お前たちの兵器はすべて無力化し、魔法も発動できなくなる。
いかに魔王軍の戦士が屈強でも、俺たちの近代兵器に対し、剣と槍と弓という原始的な武器で対抗できると思うか?
素直に負けを認めて、降参した方がいいと思うぜ!」
二人の軍師の初お目見えだった。
強者は強者を知る。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」の逸話が有名だ。
三国志において、蜀の軍師・諸葛亮孔明と魏の司馬懿は、互いに戦わずして戦う知略の応酬を繰り広げた。
時は西暦234年。
五丈原で対峙していた蜀軍と魏軍だったが、孔明は病に倒れ、陣中で亡くなってしまった。
しかし、孔明の遺言により、蜀軍はすぐにはその死を公表せず、撤退の際に諸葛亮の木像を戦車に乗せて司馬懿に見せた。
車に乗った孔明の木像を目にした司馬懿は驚愕。
「孔明は死んだはずでは…? いや、これは罠かもしれぬ」と疑い、追撃を中止して退却したのだった。
しかし、この場では、意地と意地がぶつかり合う。
軍師サムは、丁寧な口調の中に、迫力ある声で言った。
「あなたがたはふざけているのですか?
それが、この星の、ほぼ全てを総べる魔王軍の長である魔王アサダさまに対しての態度ですか?
もはや許し難き狼藉です!
魔王様が持っておられる物を見てください!」
そう言うサムの言葉にあわせて、何やらコントローラーらしき物を取り出した魔王は、俺に向かってこう言い放った。
「このボタンは、私たちの秘密工場の自爆スイッチです。
このボタンを押すことによって、この星の環境は、壊滅的に破壊されます。
そして、この星は、もはや人も魔族も住むことの出来ない、死の星となるであろう。
あなたたちが我が軍にこれ以上の攻撃を仕掛けた場合は、やむを得ません。
我らは、この星との心中を選ぶことにしましょう。
どうですか?
あなたたちにその覚悟はあるのか?」
それを見たユージは、焦りながら言った。
「お前ら、正気か?
この星の環境が崩壊したら、お前たちも全滅するんだぞ?
魔王アサダは、静かに言った。
「覚悟の上です。
この星の環境を、ここまで破壊してしまったのは、誰ですか?
あなた方人族ではないですか?
私たちは、あなた方が汚してしまったこの星を再生させようと、様々な手を尽くして来ました。
にもかかわらず、あなた方は人族間の勢力争いに明け暮れ、あっという間にこの星の環境に壊滅的な打撃を与え続けて来ました。
このままでは、いずれこの星は崩壊して、生命が住めない星になってしまいます。
人族こそが、この星の環境を破壊して来た諸悪の根源なのです!
人族を壊滅させられなければ、この星の未来はありません。
であれば、いっそのこと、私たちの手で最後の引導を渡した方がこの星のためです!」
そう言って、魔王軍は去って行った。
残された俺たちは、奴の言葉の真偽を図りかねて、後を追うことが出来なかった。
と言うか、本音を言うと、魔王の言葉に返す言葉が無かった。
ユージは、小さくつぶやいた。
「あいつらも、同じ問題意識を持っていたんだな。」
そして、魔王軍の頂点に君臨する魔王を、あと一歩のところまで追い詰めたにもかかわらず、すんでのところで逃してしまった俺たちなのだった。
遅れてやって来た王女マイヤンが、厳しい口調で俺を責めた。
「どうして新兵器を作動させなかったのですか!
あと一歩で魔王軍を一網打尽に出来たのに!
このマヌケ!」
こいつ、顔とスタイルはいいけど、ホント口が悪い。
親の顔が見たいわ。
まあ、あっちに見えてるけどな。
瓦礫の向こうから、マイヤンの父親であるトクガワ19世が、生暖かい目で俺たちの姿を見ていた。
そして、物語は少し前に遡ることとなる。
このお話は、第二部で語られる話ですが、ちょっと先取りして、プロローグにしてみました。
初めて拙作を目にされた方も、以前から読んで頂いている方も、是非お目を通してください!
よろしくお願いします!
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