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3、あの日々

美玖は...本当に俺には勿体無いぐらいに良い子だと思う。

それは今も昔も変わらない。

変わらないんだけど。

だけど。


「ね。こっちには猫さんが居るよ。英二」

「あ、ああ。分かるがはしゃぐなよ」

「だって英二と一緒で2人きりって本当に久しぶりだから」

「いや。気持ちは分からんでもないけど」


俺は美玖の指差す方角に可愛らしい雌の茶色の毛の猫が居るのを確認する。

それから俺はニコニコしている美玖を見た。

本当に心から楽しんでいる様に見える。

俺はその姿に笑みを浮かべながら周りを見渡してみる。


「英二?どしたの?」

「ああ。いや。店員さんを探しててな。この子を抱える事が出来るのかなって」

「え?い、いいよ。そんな」

「まあまあ。せっかくだしな」


それから俺は店員さんを呼ぶ。

すると女性の若いその店員さんが「カップル様ですか?」と話した。

俺は目をパチクリしながら居ると「カップル様限定のイベントを開催中なんです」と店員さんは笑顔になる。

イベント?


「今だけ限定サービスですがお好きな動物と一緒に写真を撮れますよ。参加費は無料です。是非いかがですか?」


そう言われ俺達は顔を見合わせた。

俺は驚きながら言おうとすると美玖がいきなり俺の腕に自らの腕を回した。

それから根気強く「お願いします!」と笑顔で言った。


「お、おい。美玖...」

「良いでしょ?無料みたいだし」

「...まあお前が楽しいならそれでも良いけど」


俺は苦笑いを浮かべる。

店員さんはそんな俺達を見てから「かしこまりました」と頭を下げた。

それから彼女は「どの子と撮りますか?」と優しく言ってくる。

俺達はまた顔を見合わせた。

決まっている。



茶色の毛並みのその子は本当に人懐っこい女の子だった。

俺達に抱えられても嫌がる素振りすら見せない感じで寧ろ此方が癒された。

俺達は店員さんに写真を撮影してもらいその茶色の毛並みの女の子を返した。


「えへへ」

「全くお前は。顔が綻び過ぎだ」

「メチャクチャ幸せだから」

「やれやれ」


店員さんが「お写真を印刷して写真立てでお渡しします。今暫くお待ち下さい」と言ったので俺達は椅子に座り待機していた。

するといきなり美玖が俺に寄り添って来た。


「英二。なんかさ」

「あ、ああ」


顔を赤くしながら美玖はニコッとする。

な、なんだ。

そう考えながら美玖を見ていると美玖は「私達に子供が出来たらこんな感じに撮るのかな?」と言い出した。

まさかの言葉に流石の俺も動揺した。


「美玖...」

「えへへ。...まだ早いかな」

「早いに決まってんだろ。良い加減にしろ。お付き合いもましてや結婚もしてないんだぞ」

「え?じゃあ結婚してくれるの?」

「!」


美玖は期待に満ちた眼差しで俺を見る。

俺はその言葉に冷や汗が噴き出た。

というか...嫌な汗だ。

嫁との関係性を思い出してしまった。


「え、英二?」

「...」


俺は汗をかきながら青ざめる。

そして俺は汗を拭いながら「なんでもない」と否定をした。

そんな俺に対して美玖はゆっくり俺を抱きしめてから頭を撫でてきた。


「英二。大丈夫。落ち着いて」

「...美玖...」

「私はいつでも側に居るよ。英二が何に迷っているのか分からないけどいつでも側に居るよ。だから落ち着いてね」


美玖は俺の髪を漉く。

それから優しく抱きしめてきた。

「私を選んでくれなくても私はいつでも側に居るからね。英二」と言いながらだ。

俺はその言葉に落ち着いてくる。

信じられないぐらいに落ち着いてきた。


「ありがとう。美玖」

「私は幼馴染だもん。これぐらいはしないとね」

「幼馴染...」

「英二が好きな幼馴染。間違いある?」

「...無いな。ありがとう」


それから店員さんが戻って来る。

小さな紙袋が2つ。

その中に先程撮影した俺らの写真が入った写真立てが入っている様だ。

俺達はそれぞれ受け取る。

すると店員さんが俺に耳打ちしてきた。


「頑張って下さい」


まさかの言葉に俺は驚く。

それから店員さんを見てみる。

店員さんは俺に微笑みながら離れた。

そんな店員さんの行動に美玖が聞いてきた。


「どうしたの?」

「いや。なんでもない。大丈夫だ」


俺は「?」を浮かべている美玖を見る。

それから俺は店員さんを再度見る。

そして俺達はそんな優しい店員さんと別れてからペットショップを後にした。



動揺してしまった。

そんな関係性では無いのだが。

そう考えながら俺は横に居る美玖を見る。

美玖はショーウィンドウを見ながら「でも英二。本当にデートみたいだね」と言ってくる。

俺はその言葉に「たしかにな」と話す。


「なあ。美玖」

「うん。何?」

「どうしてお前は俺の事が好きになったんだ?」

「えー?それ聞いちゃうの?英二」

「興味が湧いたからな」

「...英二の事を意識し始めたのはあの日からかな。ほら体育祭でさ。走るの速かったし英二...親切だったから。私、あんな顔が出来るんだって初めて知ったから。好きになったんだよ。あの時に」

「そうなんだな」


そう言いながら美玖は照れ笑いを浮かべる。

俺はそんな姿に笑みを浮かべた。

それから美玖は「あ、英二。この服可愛くない?」と言いながらショーウィンドウを指差す。

アイドルのコスプレ衣装が飾られている。

コスプレ店の様だ。


「アイドル衣装、か」

「嫌?」

「いや。お前が着たら可愛いだろうなって」

「あはは。ありがとう」


それから美玖は恥じらう。

俺はその姿に「コスプレしてみるか」と言ってから店内を見てみる。

美玖は「え。でもこんなフリフリは恥ずかしいかなぁ」と話してから俺を見る。


「...でも英二も衣装を着てくれるなら着ようかな。アイドル衣装」

「俺が着ても似合わないぞ。不細工だし」

「私は似合うって思う。着た姿を見たいなぁ」


いやいや。

そう思ったが否定をさせてくれなかった。

店内に突撃する。

それから美玖は目を輝かせて可愛らしい衣装を見ていた。

まあでもこれはこれで良い光景だった。

なんか可愛いし。

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