本当のクズ。2
玄関の前に佇む姉は、みゆきと同棲する前の毎週の習慣だった頃と同じように、うっすら笑みを浮かべて立っていた。
僕と姉の関係が普通ではないと知ったのは、中学1年の頃だったか。
姉とは年が離れており、その時すでに姉は成人していた。
年が離れていたこともあり、喧嘩などもなく、仲は良かった。
姉と初めて会ったのは、僕が幼稚園の頃。
姉は中学1年だった。
家が隣同士だった僕と姉は、家の前で会ったら姉から声をかけてくれる程度の関係だった。
姉の家はシングルマザー、僕の家はシングルファザーで、隣同士の関係に変化が起きるまでそこまで時間はかからなかった。
お隣さん同士だった2つの家庭が1つになり、アパートから一軒家に引っ越した。
僕の父は昔気質で、妻は夫のために仕えるという考えの人だった。
そんな父の考えに我慢ができなくなった、僕の本当の母は、僕を置いて出て行ってしまった。
そう思っていた僕は母が出て行った『本当の理由』を知らなかった。
性格には難ありの父だったが、やはり外見には恵まれていたため、女性は絶えなかった。
外面だけはよかったため、隣に住んでいたシングルマザーがひっかかるのは当然の成り行きだったと思う。
僕たちは少しずつ、『家族』になっていった。
まだ幼かった僕は、姉と新しい母に慣れるのも早かったように思う。
姉は幼い僕といつも遊んでくれて、お互いに寂しかった気持ちを埋めあっていたのだと思う。
〜数年後〜
その日はとても暑かった。
夜中に目が覚めてしまった僕は、用を足すために1階にあるトイレに向かった。
その時の僕は、まだ小学生になったばかりだった。
夜中に目が覚めたのは、初めてだったかもしれない。
真っ暗闇の家の中、壁に手をつきながらおそるおそる階段を降りていく。
2階には母の寝室、姉の部屋、僕の部屋。
トイレがある1階にはキッチンやリビング、洗面所やお風呂場、そして一番奥には父の寝室があった。
トイレに行ってから、喉が乾いていたためキッチンに向かいシンクの蛇口からそのまま水を飲んだ。
少し顔にも水がかかってしまい、すっかり目が覚めてしまったのを覚えている。
すると、父の寝室の方から話し声が聞こえた。
父の甘ったるい声が今でも耳に残っている。
父と母が一緒にいるのだろうか。
『大人の男と女はおんなじ布団に入ってチューしながら寝るんだって!』
学校の休み時間にそんな話を聞いたのを思い出した。
その時は冗談半分で笑いながら聞いていたが、いざ現実に前にしてみると、中で何が起こっているのか、興味もあった。
少しずつ体温が上がっていき、じっとりと額から汗が下りてきて目がしみてきた。
ハッとして、その日はそのまま音がしないように静かに階段を登ってベッドに入った。
心臓が鳴り止まず、明け方まで目が冴えたままだったのを覚えている。