本当のクズ。1
みゆきの葬儀はつつがなく終わった。
交通事故だったようだ。
仕事終わりで駅からの帰り道にある交差点。
そこから誤って道路に向かって飛び出してしまったようだった。
帰宅ラッシュの時間だったため、周りには大勢の人がいて、すぐに救急車で運ばれた。
僕が警察から連絡を受けて病院に駆けつけた頃には、みゆきはすでに冷たくなっていたようだ。
その場に居合わせた医師からみゆきの訃報を聞いた僕は、そのまま何も考えられずに永遠の眠りについたみゆきをしばらく上から眺めていた。
やはり、僕に幸せになる権利はないのだな。
ようやく理解できた気がする。
この運命からは逃れられないのだと。
警察の人から事故について経緯を聞かされた時、少し気になる話をされたが、僕の耳には届いてこなかった。
みゆきの葬儀のあと、しばらくするとまた日常が戻ってきた。
今まで当たり前のように、ずっと隣にいたみゆきがいない日常。
人1人いなくなったところで、変化するのはその人の周りくらいなのだと改めて思い知らされた。
みゆきの存在は僕の中で思いの外大きくなっていたのだろう。
もう5年も交際をしていたのだから、普通の人にしたらそれはそうなのだろう。
僕も普通になれてきていたのか。
みゆきと出会って、初めて僕も幸せになっても良いのかもしれないと思えた。
みゆきと出会って初めての感情を知った。
みゆきと出会って忘れたくても忘れられなかった出来事が少し薄らいでいるときもあった。
もしかしから、僕のほうがみゆきに依存していたのかもしれない。
付き合った当初は、僕のドス黒く嫌な血を少しでも薄らげてくれるならと、正直誰でもよかった。
しかし今思うと、やはりみゆきでないとダメだったのだろう。
みゆきがいなくなって、あっという間に1ヶ月がすぎ、四十九日も過ぎた。
そして、みゆきと同棲を始めた時から止まっていた時間が動き出した。
金曜の夜、21時を過ぎたときだった。
ピンポーン
玄関のチャイムが鳴る。
忘れかけていた時間が蘇ってくる。
玄関を開けると、そこにはいつものように姉がいた。