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ハッピーエンドと、僕たち。6

私が驚いて男性客のほうをみると、彼は言った。


「みゆきちゃん。一生懸命バイトを頑張る君をずっと見ていて好きになったんだ。僕と付き合ってくれるよね?君も僕のこと、ずっと笑顔で見てくれてたもんね。」


本当に恐怖を感じると、人は何も声が上げられないのかもしれない。

早口で一方的に話す男性客を見て、私は震えることしかできなかった。


「す・・すみません、私・・・」


「わかってるよ。さっき話していた男に付き纏われているんだよね?安心してね。これからはずっと僕が守ってあげるから。」


やっとの思いで出た言葉はとてもか細く、男性客によってすぐに遮られてしまった。


どうしたらこの手から逃れられるのか考えていると、誰かの足音が聞こえた。


『店長だっ!』


そう思ったのも束の間だった。

目の前には殴られて倒れた男性客がいた。



「え?!」


びっくりして、私も腰を抜かしてしまった。



「何やってんの。」


そこには少し息を荒げた彼がいた。




〜数分後〜


気づいた時には私は真っ暗闇の道を、彼に腕を引っ張られて歩いていた。


あの後すぐに店長が裏口から出て来て、彼に話を聞いた後ストーカーとして男性客を通報する・・という話をしていたら、その男性客は一目散に逃げ帰ってしまったようだった。


もう遅いので、警察へは後日話をするということになり、彼が私を自宅まで送ってくれるということになったらしい。

いつの間にか自宅アパートの前についていた。


「ここまで来れば大丈夫でしょ?じゃ。」


そう言って彼は踵を返した。




「・・・なっ・・」


「・・え?」






「好きになったの・・・!」



「わたし、あなたのこと、好きになったの・・!」




気づいた頃には、私は泣きながら叫んでいた。


こんなに自分の感情がコントロールできないのは、初めてだった。


先ほどまでストーカー男に襲われそうになっていたのに、数分後には別の男性に告白している・・・

今までの自分からは想像できない行動だった。



彼の顔が一瞬にして曇って行ったのを、私は見逃さなかった。


彼のことだ。

このようなことは、今まで山ほど経験しているのだろう。

最初から彼女になれるとは思っていない。


蓋をした気持ちがついに溢れてしまったのだ。

どうしようもない気持ち。


私は彼が好き。




でも、彼は・・・



彼から何か答えが返ってくると思うと怖くなった。


こんな時にあの日に会った女性のことを思い出す。

とても綺麗で、スーツをビシッと着こなす女性。


・・・とても敵わない。



「・・俺は・・」



「代わりでいい・・から・・!あの・・人の代わりでいいから!」



彼からの言葉を聞くのが怖くて、彼の言葉を遮って続けた。

しかし、なんて残酷な言葉を放ってしまったのだろう。

彼に対しても、私に対しても・・・




まったく、今思い出しても私のあの日の行動は、あのストーカー男性のそれと同じだった。


自宅アパートの前で、大声での告白。

少しずつ状況を理解していくといてもたってもいられず恥ずかしくなり、つい俯いてしまった。





・・・私は心臓が飛び出してしまうのではないかと思ってしまった。




いつの間にか私は、彼の腕の中にいた。












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