最終話 姉の真実。2
扉の開く音がして、静かに入ってきたのは父親だった。
私の部屋の扉には鍵がついており、部屋に入ってすぐに鍵をかけたはずだった。
「・・・お父さん?」
寝起きのためか、少し掠れた声で父に向かって問いかけた。
「・・真咲、どうして家の中なのに鍵をかけるんだ?おかげでスペアキーを作るハメになったんだぞ。」
父はわざわざ私の部屋のスペアキーを作って、部屋に入ってきたのだった。
父の目はギラついていて、すでに酔っ払っているのがわかる。
父は自分の思い通りにいかないことがあると、すぐに手を上げる。
『殴られる!』
そう思った私はすぐに父に謝った。
「ご、ごめんなさい!つい鍵をしてしまっていただけなの!」
父の行動に恐れをなして鍵をかけていたなど、口が裂けても言えなかった。
「そうか・・そういうことなら、まあいい。」
急に父の声色が優しくなった。
私はとても驚いた。
普段の父はお酒を飲むと口調がキツくなり、誰かれかまわず手を上げていた。
・・・カチャ。
父が後ろ手で鍵をかける音が聞こえた。
そして、ゆっくりと父が私に近づいてきた。
「え?」
私はいとも容易く父によってベッドへ寝かされてしまった。
「・・な・・に?」
声が震える。
私は予感していたのかもしれない。
いつか、実の父親に襲われる時が来るのかもしれないと。
その日は、金曜日の夜だった。
体は大人になりつつもあるが、まだまだ子どもの私の力では、父に必死で抵抗するも大の大人相手ではまったく効果はなかった。
〜
「真咲ー?起きてるのー?」
翌日、母の明るい声で目が覚めた。
母が帰ってきた頃には、すでに父は部屋にいなかった。
本来ならばいつも通りの朝を迎えるはずだった。
目が覚めてから蘇る、昨日の悪夢。
学校の男子が話しているのを聞いたことがある。
昨日のあれは、間違いなく性行為だった。
体が痛い。
心が痛い。
ベッドから起きあがろうにも、起き上がれなかった。
「真咲ー?」
母が、心配そうな声で1階から声をかけてくる。
だめだ。
ベッドはまだ乱れたままだった。
このまま母に入って来られたら、何か怪しまれるかもしれない。
母にはとても言えそうになかった。
ガチャ
「なにー?まだ寝てるの?鍵なんかかけて。」
部屋の鍵はかかっていた。
おそらく、父が部屋を出た時に鍵をかけていったのだろう。
「・・何でもないよ。寝てただけ。でも、体調が悪いからもう少し寝てるね。」
私は何事もなかったように、返事をした。
「そうなの?大丈夫?お母さん、今日は休みだから看病するよ。」
「大丈夫!もう少し寝たら元気になると思う!」
母に勘繰られないよう、平静を装った。
そして、毎週金曜日は私にとっての地獄の夜になっていった。