最終話 姉の真実。1
私が小学5年生の頃かな。
同じクラスの男子からの私に対する目線が変わってきた気がした。
この前までは、仲良く遊んでたのに、急によそよそしくなってきた。
それは担任の先生も同じで、なぜか私だけ贔屓をするようになってきた。
その影響か、クラスの女子たちは私を仲間外れにして、陰口を言っているのを聞いた。
「あの子最近、男子や先生に色目使ってるよ。」
自分ではそんなつもりは全くなかったのだが、思春期の女子特有の体の変化などがあり、少女から女性に変化していっていたのだと思う。
それまで友達だと思っていた男子達から、急に告白を受けるようになり、自分はモテるのかもしれないと思うようになった。
その変化は、学校だけでは収まらなかった。
私の本当の父は、どうしようもないクズだった。
仕事はしていたが、お酒を飲むと手がつけられないくらいに豹変する。
私も母も何度も手を上げられていた。
そんなクズな父親も、酔いが覚めるといつもの優しい父に変わる。
そして、手を上げた私たちに必死に謝り、その姿を見て母は許していた。
母は、その優しさと激しさのギャップにやられていたようだ。
今思うと典型的なDV夫だったのだろう。
そんな父も、私が5年生になった頃から私に対する態度が変わった。
私が着替えている部屋にわざと入ってきたり、お風呂に入ろうとしている時に脱衣所にやってきたり、上げ出したらキリがない。
そんなこと、父のことが大好きだった母にはとても言えなかった。
日に日に父のことを生理的に受け付けなくなっていたある日、私は学校帰りにゲームセンターに寄った。
日々たまるストレスを少し発散したかったのだ。
私は1人でクレーンゲームをしていた。
すると、1人の制服を着た中学生くらいの男子に声をかけられた。
一緒に遊ぼうとしつこく声をかけてきたが、ずっと無視していた。
そんな私の態度に怒り、一緒にいた何人かの友達で私のまわりを囲んできた。
とっさに大声を出して、相手が怯んだ隙に走って逃げ出した。
その時、はっきりと理解した。
私はもう子供ではないのだと。
そういう性の対象として見られているのだと。
そして、足早に家に帰る。
母は看護師のため、仕事が不定期で夜勤もあった。
その日は母が夜勤の日。
家に帰ると、母が夕飯の準備をしていて、父はまだ帰ってきていなかった。
母は夕飯を作って食べると、そのまま仕事に向かった。
しばらくすると父が帰宅した。
私は父と顔を合わせるのが嫌で、夕飯を終えてすぐに自室にこもっていた。
・・・カチャ
何かの音が聞こえて目が覚める。
「・・・ん?」
時計を見ると夜23時を回っていた。
いつの間にかお風呂も入らずに寝てしまっていたようだ。
・・・カチャ
「・・・何の音?」
そして、眠い目をこすりながら音のする方を見る。
ゆっくりと扉が開くと、そこには父が立っていた。