本当のクズ。5
その日は、朝まで一睡もできなかった。
ずっと目が冴えて、心臓がとてもうるさかった。
勘違いや夢なんかじゃなかった。
姉と父は"そういう関係"だったのだ。
子どもながらに、父と姉がいけないことをしているというのははっきりと分かっていた。
朝、重い腰を上げてリビングに出ると、いつものように笑顔の姉とソファに腰を下ろし新聞を読んでいる父がいた。
しばらくすると母も帰宅し、家族みんなで一緒に朝食を食べる。
いつも通りの日常だった。
せっかく手に入れた幸せな家族。
僕が見てしまったものは、そんな幸せな家族を壊すには十分すぎるくらいの出来事だった。
僕は、やっと手に入れた家族という幸せを壊すことができなかったんだ。
僕はその、度々行われる異様な出来事を見て見ぬフリをした。
あの日からだろう。
僕は姉を姉ではなく1人の女として見るようになったのは。
それからまた月日は流れ、その異様な関係性の家族は、表立っては幸せの時間を過ごしていたと思う。
僕と姉の関係に変化が訪れた。
この頃の父は仕事が忙しいらしく、地方への出張なども増えていた。
出張になると2〜3日ほど家を空けることが多くなり、長い時は1週間ほど帰ってこない時があった。
無事に大学受験も終わった姉は、時間を見つけてはまた僕の面倒を見てくれるようになっていた。
金曜日の夜だった。
この日も母は夜勤のため、夜20時には家を出た。
そして、父も遠方へ1週間の出張に出ており、帰ってくるのは明日の昼と聞いていた。
この日は姉が夕飯を作ってくれ、食べ終わった僕は夜20時にはお風呂に入っていた。
ゆっくり湯船に浸かっていると、脱衣所のほうから物音がする。
『ハミガキでもしているのかな』
そう思ったとたんに風呂場の扉が開き、バスタオル1枚の姉が風呂に入ってきた。
「・・えっ!?どうしたの?」
思わず発した言葉は若干声がうわずってしまった。
姉と一緒にお風呂に入っていたのは、小学校に入る前までだった。
「久しぶりにお姉ちゃんとお風呂入ろっか。」
姉は何も気にするそぶりもなく、いつもの笑顔といつもの声のトーンで話しかけてきた。
僕はとても恥ずかしくて、体を小さくして湯船に浸かっていた。
久々に姉に体を流してもらい、一緒に大きめの湯船に入る。
昔一緒に入っていた頃と比べたら、お互い体は成長していた。
1人で入ると大きなお風呂が2人で入ると窮屈に感じた。
最初は少しドキドキしていたが、話しているうちに緊張はほぐれていった。
たわいのない話をした。
学校の話や友達との話、そして好きな子はいるのか、など。
姉は社交性があり、コミュニケーション能力も高い。
姉と話をするのはとても楽しかった。
しばらく談笑していると、姉がこんなことを言ってきた。
「旭、私がお父さんと金曜日に何をしてるのか、知ってるよね?」




