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新章スタート。
タクヤ小学3年生。
コイツ史上最も賢く最も強かった時代編。
でもまあ、どこまでそんなのが続くんでしょうね。
それでは、宜しくお願いします。
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タクヤは喧嘩最強であったし、自身もそのことを全くもって疑ってはいなかった。なにしろコイツは世〇末覇王を自認し、ケ〇オウを自称する程度にはいろいろとヤバい奴だったのだから。
タクヤは物心ついた頃から他の同年代の子供たち――こいつは彼らをア〇バのマネをしたわけではなかったが木偶と呼んでいた――よりも際立って体格が良かった。頭一つも二つも抜けて背が高い上に肉もたっぷりついていたから、見た目からしていかにも腕力がありそうで喧嘩が強そうだった。異常に沸点が低くく、無暗矢鱈に気が強く、何の根拠もないのに自信満々で粗暴なことこな上無し。当然のようにイキリ倒し、当たり前の様に威張り散らしていたし、「我こそがケンカ最強」と信じて疑わず、気分次第で暴力を振るう――ラ〇ウというよりはコンプライアンスなどという概念が存在する遥か以前の漫画版『ド〇えもん』のジ〇イアンを極めて陰湿且つ悪質にしたような奴だった。調子に乗って痛めつけ過ぎた日には「いいか。お前はドジだから階段から落ちた。いいな。転げ落ちたんだからな。わかったな」と念を押し、凄み、そこまででなくても気ままに痛めつけている連中には事あるごとに「親や教師にチクろうもんならソッコーブッ殺す」と脅していたし、いやらしいことに、こいつは大人の前では劇場版のジ〇イアンのように、いや、テレビとは別バージョンのかのガキ大将よりも更に三十パーセント増し――まるで『伝○るんです。』のか○わう君のロボットの如しである――いい奴ムーブを披露することが出来ていた。
小学校三年生のある日。その日もタクヤは、いつものように調子に乗って、彼にとってはバカでクズでゴミでしかないデクどもを甚振ってご満悦であった。どれだけ痛めつけても誰も何も文句など言う筈がないし、増してや、抵抗などしてくるなどある筈もない筈だった。それなのによりにもよって、カースト最底辺のぶっちぎりの弱者と見做し侮りまくっていたあのユキヒロが突然プッツンしやがったのだ。ユキヒロは何の前触れもなく「ああああああああああーっ!」とばかりにタクヤを突き放すと右腕を振り回し始めたのだ。タクヤの周りにいた他のデク達が異口同音に叫んだ。「あっ、大車輪だ!」と。ただ単に腕をぶんぶんと回転させている――ただそれだけのことなのだが、これこそが皆が知り、誰もが認めるところのユキヒロの必殺技(もっとも、誰も彼のそれ以外の技は知らないし、それ以前にどうしてこれが彼の奥義なのかもよくわかってなんかいない。第一そんなにも強烈な技であったならば、その使い手がカーストの最底辺で燻っている筈がないのではなかろうか? 身近な人間でそんな技を持っているのは彼一人だし、しかもこれだけだというのも奇妙な話である)大車輪であった。なにしろこの界隈で最も有名な必殺技である。勿論タクヤもご承知である。タクヤとユキヒロが初めてであったのは幼稚園の時だったのだが、「初めて会った日に」というよりは「初めて会った時に」、更に正確を記すならば「最初に見かけて数秒後に」は直々にこの大技を誘発させている――もっとも、このようなフェイバリットの使い手であることは知らなかったのではあるが――のだから。いることなどあり得ないのではあるまいか?
それではまた明日午後10時にでもお付き合いくださると嬉しいです。
※前日投稿時から翌日の今日迄で大幅に手を加えました。読んで頂いたタイミングによっては長さが倍くらいになっているかもしれません。タイミングによっては700文字くらいの話しかお見せ出来ていなかったのです。「いくら書くのが遅くとはいえ休日にそれでは」と書き加えました。
ご迷惑をお掛け致しました。