gr 00 3-23
ご一読頂けると有り難いです。
宜しくお願いします。
転生当初は、「チートで最強で無敵で無双して、美少女たちにモテまくり」どころか、剣も魔法もくそもない、ファンタジーなどとはほど遠い、夢も希望もあったもんじゃない、ガチでリアル中世ヨ〇ロッパっぽい詐欺のような異世界に、ほとほとがっかりしていたタクヤではあったが、暮らしているうちになんだか徐々に馴染んできた。ウォシュレットとスターのタトゥシールがないのは相変わらず許し難いものではあったが、何といっても、この世界でのタクヤは伝説の救世主――偉大なる勇者なのだ。実際に会いに行けるアイドルであり、劇場はいつだってフルハウス。本人によって語られる冒険譚はウケまくり、目の前にいるスーパースターを誰もが称賛する。元いた世界では考えられないことなのだが、当人はもはや「話しているネタがまんまパクリ」だという自覚すらなく、「これこそが本来あるべき姿なのだ」と信じて疑ってもいやしない。いや、しかし、だがしかし、やはり、コイツはコイツなのだ。誰も彼もがこのスーパーアイドルスターに熱狂しているわけではないのだが。劇場はアルコール有りのせいなのか、中世ヨ〇ロッパ並みに男尊女卑なせいか、入場を許されるのは成人男性に限られるので、タクヤをもてはやすのはそういう連中ばかりである。タクヤとしてはアルコールどころかクスリだって有り――ヤクが儲かるくらいの知識はある――くらいに思っているし、何よりも性別で入場制限をすべきではない――寧ろ若い女の子にキャーキャーされてモテまくりたいのだから、女性の入場料は野郎どもよりよっぽど安くていいし、レディースデイを設けたいくらいなのだ。だが、タクヤのパトロン達によると法律に抵触するから駄目だという。ただタクヤは気がついていない。ワーキャーされたい女性達に自分が拒否られていることを。やむを得ず不衛生そのものな街中を歩かなければならない折に、タクヤに握手を求めてきたり、抱きついてきたり、サインを求めてきたりするのは、どいつもこいつも、むさっくるしい男ばかりで、女性には悉く避けられていうことを。この世界の女性――とりわけ若い女性は、タクヤの胡散臭い上にイキり倒しる感が醸し出す雰囲気が気持ち悪くて、いくら「世界を救った英雄である」と紹介されても、どうしても受け付けないのである。彼女たちから見れば、コイツは−−タクヤなんぞというのは、やはり、心ときめくアイドルなどどいうものからはほど遠いもの、寧ろ、相容れないものですらあるのだ。こんなくっそキモのイキリなんぞは、彼女たちからすれば、「根本から、生理的にムリ」なのである。
如何だったでしょうか。
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それではまた次回にでも。




