gr 00 3-20
定期的に更新とはいかないかもしれませんが、やれる範囲内で投稿してゆくので宜しくお願いします。
「みんな、アンタの話を楽しみにしとる。期待しとるよ。救世主…、いや、勇者殿」
タクヤは単純である。勇者と持ち上げられればすぐさまいい気分である。
「ま、まあな。オレは伝説でグレートな勇者だからな!」
(そして、オレはハイレベルなワルでもあるのだ! ド〇キで万引きしまくりのとんでもないワルなのだ!)
タクヤは気分を取り直し、
「じいさん。この街で一番デカい量販店にオレを連れてってくれ」
「量販店? それは何屋のことかのう?」
(スゴくスゴいワルであることをこれから証明してくれよう!)
「とにかく、ムダにばかデカくて、いろいろといっぱい売ってるところにオレを連れて行ってくれ」
「……」
タクヤは再び愕然とした。
「本当にここなのか? じいさん田舎もんだから、この街のことよく知らねええんじゃねえの?」
「そんなことはないぞ。儂はこう見えて昔はシチーボーイじゃったんじゃ」
(ト〇横みたいなとこに溜まってグダグダしてたとでもいうのかよ?)
「でも、それって何十年も前のことだろ? その間に新しいビルの一つや二つくらい……」
「ビル? ビルってのは何を売っとるのかね?」
(ビルも通じねえのかよ。量販店も知らねえし)
そう。今、目の前にしている建物はあまりにも地味でこじんまりし過ぎてもいる。ビルなどと呼べるものではない。そしてそれ以上に、激安の殿堂たるあのド〇キホーテの原色いっぱいのいかにもないかしてる感がほんの僅かもありゃしない。
(こんなんであのカオスな品揃えがあるわきゃねえじゃねえか!)
あのヤンキー心をアゲアゲにしてくれる武勇伝の舞台たるに相応しいけばけばしさの欠如は、タクヤのやる気をすっかり萎えさせてしまうには十分だった。せっかく仮想ド〇キホーテと見做し、万引きをしまっくってやろうと思ったのに。
「どうかしたのかね?」
「いや。もういいよ」
(文明のレベルが中世ヨ〇ロッパじゃこんなもんなのか? オレは世界遺産を観光したいんじゃねえんだよ。
…ショボい。あんまりにもショボいったりゃありゃしない……)
タクヤは思った。
(神も仏もないのかよ?
異世界転生神様ボーナス……、ワ〇ルドト〇カー……、ホントに通訳だけだしよ。バカみたいに強力で、しかもどんな魔法も使えるどころか、唯一使えるのが収〇魔法だけって……。
…しょっぱいもいいとこだろ……)
タクヤは心の底から落胆していた。
「じいさん。オレを新居に案内してくれ」
(そこら辺に糞尿垂れ流しで、ロクにド〇キもありゃしねえって……)
タクヤが事前に立てていた綿密な計画では、この後質屋に連れていかせ、“ド〇キ”で万引きしまくった戦利品と村でかっぱらってきたブツを綺麗さっぱりさばくつもりだったのだが、もはや換金所に寄る気力も理由もありゃしないし、それよりも遥かにこんな臭くて汚い街を彷徨いたくなんかなかった。
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