gr 00 3-17
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タクヤのステージは第一村人のご老人宅に始まり、次いで村の広場へと移った訳だが、間もなく其処も手狭なものとなった。「此処は通うには交通の便が悪い」という大衆の要望に応え、村から最も近い都会である王国で三番目に大きな都市にタクヤは舞台を居を移すこととなった。気のいいタクヤの言うところの信者達は彼に住まいと専用の劇場を用意してくれておひねりまでくれる――今ふうに言うのならば、頼まれもしないのにファンたちがクラウドファンディングで“実際に会いに行けるアイドル”に歌って踊れる舞台を気前よく提供してくれる上に、其処に進んで集い投げ銭までたっぷりとしてくれる――というところであろうか。これで味をしめた結果が、後にとある親子による、世間からStupid号と揶揄されるものの調達からの件に繋がったのであろう。
実は、間隙の収〇魔法を初めて発動させ“大魔王の忌まわしい呪いによって自殺が許されない芸“によって第一村人に勇者であることを信じさせたその日のうちに、タクヤは凄いことに気がついていた。間隙の収〇魔法――其れはタクヤのワルとしての格を二つも三つも引き上げるものだったのである。なにしろ、タクヤクラスのワルともなると是非ともフカしておきたい武勇伝――「オレってド〇キで万引きし放題だったんだぜ」をホラなどではなく、リアルにしてしまえそうなのだから。この神技が如何に凄く凄いものであるかを理解するには、「モーツアルトやドストエフスキーの真価を認められるだけの知性が必要だ」――オ○エンタルラ○オの一人が自分の笑いを理解する為に必要な知性に語ってことがあるのだが、それによるとやはり、彼の高等な笑いを解るには其の位の知的レベルを要するのは必然であり、当然、其のギャグもネタ人を選ぶ(「アレがか?」等と言う者にはきっとセンス等というものは無いのであろう)ものなのだとか――と、タクヤは信じて疑わない。なんといっても、「間隙の収〇魔法をもってすれば、たとえ現場を万引きジーメンに押さえられようとも、証拠を――盗んだブツを――抑えることなど不可能」なのだ。早速、村のいたる処でやってみたのだが、やっぱりくっそチョロだった。物足りなさを感じたくらいである。村から街への進出が決まり、「いよいよオレの万引きスキルが無敵の神技であることを満天下に知らしめる刻が来たか!」と思った。「街に行ったらやってみたいリスト」のトップがセンスとインテリジェンスに溢れるこの神スキルを満天下に知らしめることなのだから。いや、実際に知られたらマズいのだけど。
タクヤは都会への進出を楽しみにしていたのであるが……。
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