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gr 00 3-8

今宵も宜しくお願いします。



 タクヤは愕然とした。

(それじゃあ何か? 異世界は異世界でもここはいわゆる異世界なんかじゃなくて、ファンタジーもへったくれもねえ、そんなものとはほど遠い、ただ単に中世のヨ〇ロッパっぽいだけってことかよ? ウォシュレットもねえ、それどこころか、水洗便所があるかどうかも怪しい、ただ単なる文明レベルが低いだけの原始世界ってことかよ! そ、それじゃあ、オレは無敵で無双のチーターじゃねえのかよ! オレのオシャレの極みたる星の痣の、スターのシールタトゥもありゃしねえ! モテモテのオレのハーレムどうしてくれるんだよ!)

 堪らなくアニメとかマンガとかゲームとかが恋しくなった。

(そ、それじゃあ、お約束の異世界転生神様ボーナスは……)

 !

 それでもコイツはやはりとことん前向きなヤツであった。「やっぱりオレはスゴくてスゴい」という信念が彼を「ラノベ主人公ではなかった」という絶望から救った。言葉の壁――語学能力の件にこの時になってようやく気付いたのである。

 タクヤが欲した異世界ボーナス――彼が知る限りの最強チート。

 それこそは翻訳対話スキル――ワ〇ルド〇ーカー――

 何故ならばこのスキルこそが“おじさん”をチートキャラ中のチートキャラたらしめているのだから。

 確かに今のところはまだ精霊の声は聞こえてこない。異世界語の、しかも古代語だという魔法の呪文も頭に湧いてこない。だが、ワ〇ルドト〇カー――翻訳対話スキルが機能してるっぽくはあることにやっと気がついたのだ。

(だって、こうして異世界のクソじじいとちゃんと会話が成立しているんだもん)

「たとえこの世界に魔法というものが存在しなくとも、少なくとも自分だけは魔法を使うことが出来る」とタクヤは確信していた。

(このまんまだったら、異世界ボーナスには遠く及ばない、せいぜい異世界支度金ではあるが……。

 まあ、このオレ様に限ってそんなことはあるまい。てか、ある筈があるまい)

 つくづくコイツは選民意識の強烈なポジティブ野郎なのである。

そして「昔取った杵柄」か知能と知識のわりに悪知恵――コンプライアンスゆるゆるの頃の鬼畜ガキ大将バージョンから、現在の、而も映画版の、其れも其の三割増しの“漢”ジ〇イアンの如きムーブを、シチュエーションによって自由自在に使いこなすレベルの――はムダに働く。数少ないタクヤの特技である。

(今んところはまだ魔法は使えない。魔法でこのクソじじいを塵一つ残さず蒸発させるどころか、シンプルにブッ殺すことすら出来ない。かと言って、足を挫いているからフィジカルで圧倒するのも難しいかもしれない。たとえケンカ無敗のこのオレだったとしも。その上で貴重品を物色してこの豚小屋を放火して証拠を隠滅、且つ近所の田舎者どもに目撃されることなくトンズラするとなると……。それにいくらオレが嘗てケンカ最強だったとはいえ、それはあくまでも文明社会でのことだ。それに対して目の前のクソじじいは、オレのいた世界よりも遥かに過酷な、ウォシュレットもスターのシールタトゥもない原始時代を、曲がりなりにもこんなにも無様なヨボヨボの老いぼれになるまで生き延びやがっているようなヤツだ。おまけにいまだ現役の仏師とかヌカしてやがる。いまだに毎日アホみたいに丸太を刻んでいるとしたらムダに腕力があるかもしれん。そういやあ、コ○リュウのヤツもブッ殺される前に仏像なんぞ彫ってやがったし、黒○玄斎なんぞは素手で崖かなんかにバカでかいホトケをキザんてやがったぞ。そんなヤツに拳を封じられるのも、魔○で串刺しにされるなんぞマッピラだ。ましてや、そんなのにベアハッグや鯖折りを喰らうのはマッピラ御免だ。冗談じゃねえ! オレは枯れ專でもなければホモでもねえぞ。こんなクソじじいと肌と肌を密着させるなんて……。オエッ。カンベンしてくれ! 想像するだけで吐いちまう。だとした、オレがとるべき次の一手は……。

 学がないにもほどがある原人並みの知能につけ込むのだ!)

 よくもまあ、コイツというヤツは……。


 今夜も最後迄お付き合い頂きありがとうございました。


 皆さん知ってましたか? 病院って、救急車で運ばれ即入院ってなった場合、退院する時、持ち合わせがなかったりすると、「ちゃんと支払います」って念書書かされたりします。多少でも持ち合わせがある場合はその中でデポジットみたいなのを払わされたりもします。

 ……倒れたくて倒れている訳ではないし、お金も払わないとは言ってはいない……。

 だけどね…………。


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