表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/39

gr 00 1-1

宜しくお願い致します。

お楽しみ頂けると嬉しいです。


   1


 その男――タクヤは、嘗ては手のつけられないワルであり、ケンカ最強。悪の限りを尽くし、そして、例のあの伝説の史上最凶最悪の武闘派暴走族の第十三代目総長であった。

 ……だ、そうである。

 ちなみに十三と同じくくらいこいつが好きな数字は六六六である。この程度にはキ○スト教の知識があるのは、言うまでもなくゲームとかマンガとかライトノベルのおかげである。コイツは端から宗教なんぞというものはくそとも思ってはいないが、悪とか悪魔だとか、ワルいのは大好きである。

 タクヤは一枚の写真をマスコミに公開している。

 そこには確かに彼が――紛れもなくタクヤが――バリバリの特攻服に身を包んだ姿で写っている。いや、「写ってはいる」と言った方が正確であろうか。というのも明らかにいろいろとおかしいのだ。

 第一にその写真における彼のポジションがあまりにも右寄りなのだ。

 あまりにも右寄りに過ぎるーーもちろん、右というのは彼の思想に対して言及しているわけではない。彼はそんな小難しい話は好まないし、第一、そんな知性などないのだから。写真の話に戻ると右に寄り過ぎているというべきだろうか。もっと正確に言うと一番右の端で見切れてしまっているのである。“例のあの伝説の史上最凶最悪の武闘派暴走族”の、しかもその“第十三代目総長”たるものがそんな雑な扱いを受けるものだろうか? “例のあの伝説の史上最凶最悪の武闘派暴走族の第十三代目総長”たる者ならば、当然、写真のセンターでどんと構え、ヤンキー座りでもかましてしてイキがっていそうなものではないだろうか。それが見切れているって……。タクヤ曰く、「オレはシャイボーイだから目立つのがデーキレーなんだよ! それとも何か? テメエ、このオレ様にケンカ売ってんのか! ケンカ最強ナメんじゃねえぞ! 大車輪の餌食にすっぞ! わかってんのか? わーってんのか? クソが!」だそうである。だからと言って、見切れる必要はないのではないだろうか?

 第二にこの写真に写っているうら若き娘さんがた皆が皆が、ここぞとばかりに、いわゆる晴れ着に身を包んでいることである。この写真が公開された折、当然のように、「これはとある地方自治体が催した成人式で撮られたものではありませんか?」という問いがなされたのだが、答えて曰く、「オレたちゃ死ぬほどカッケー死ぬほどイケてる伝説の暴走族だから死ぬほどモテんだよ! 特に十三代目総長であるこのオレは爆死するくれえモテモテなんだよ! そこらじゅうに追っかけのスケどもが死ぬほどわんさかいるんだよ! どいつもこいつも死ぬほどオシャレだから死ぬほどキッチリめかしこんでやがんだよ! ホントのところ、スケどもはどいつもこいつもみんなオレ狙いだったんだけどな! ん? テメエ、このオレ様がモテるわきゃがねえとでも言いてえのか? んなことあるわけねえじゃねええか! ブチ殺されてえのかこのヤロウ! ケンカ最強ナメんじゃねえぞ! 大車輪の餌食にすっぞ! わーってんのか? クソが!」とのことである。どうやら、この頃のタクヤは「死ぬほど」という言い回しにハマっていたようである。また、「死」という単語をなるべく多く口にすることが、ダークでビターでカッコイイとでも考えていたと見る向きもある。ちなみにタクヤの地元の貸衣装屋では晴れ着ととも特攻服のレンタルも行っていたそうだが、そういった自前の衣装を持たないガチではない、若しくはパチモンのゾクに最も人気があったのが、思い出の写真の中でタクヤがイキって着こなしている一品――白を基調としたトリコロールに、背中には金の刺繍で無駄に画数の多い漢字が何かしらのメッセージが刻まれているっぽく縫い取られている特攻服であった。

それではまた。また明日、またこのお時間にお目にかかりましょう。

お待ちしております。


御意見・ご感想等頂けるとの有り難いです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ