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唐突です(実はでもないんですが)が、
『異世界おじさん』――本当の本当に大好きです。
好きな処を上げていったらきりが無いくらいには。
現在連載中のマンガでは実は抜けているレベルで一番好きな作品です。個人的好みで異世界もので同じレベルで好きな作品として上げられるのは『この素晴らしき世界に祝福を』『ベルセルク』『図書館の魔女』といった感じになります。
ただ、『ベルセルク』の原作者である三浦建太郎氏(卒然の訃報は本当にショックでしたし、耳を疑いました)は何かのインタビューで、「新作のアニメは初回は全てチェックしているがその殆ど全ては似たり寄ったりで面白くはなく、作品によっては区別すらつかない」みたいな事をおっしゃっていたと記憶しています。あくまで私の主観ですが此のコメントの対象は主に異世界ファンタジーものであるような気がします。何しろ、現在の主流であり圧倒的な物量を誇る覇権コンテンツなのだから、当然、目にするタイトルも夥しく他と比べものにならないでしょうし、そればかりとの印象を持ち、必然的にそれに対するコメントとであっても何の不思議もないと思います。私の好きな小説家にシオドア・スタージョンという人がいるのですが、この方は「SF(本人はSF作家)の90%は下らない」というようなことを言っていたと記憶しているのですが、三浦氏(言う迄も無く「自称・国際〜」などではない本物のプロフェッショナル――職業漫画家の方)にとっても或いはそんな風に見えていたのかもしれません。愛情の裏返しなのかもしれませんね。異世界ファンタジーに対する。もっともスタージョンに関しては、「SF以外も90%(以上)はゴミ(だとかクズだとかカスだとか)」みたいな事も言っていたみたいですが。
………前置きが長くなりました。
今宵も御一読頂けると嬉しいです。
それではお付き合いのほどを。
タクヤは目を覚ました。
「見知らぬ天井……」
そんなものはそこにはなかった。
かわりに、
「青空?」
それに白い雲。
上半身を起こして周りを見渡す。
「木ばっかじゃねえか。ていうか森ん中かここ? てことは……」
そこは明らかにとある地方都市の風景ではなかった。
「やっべえ。マジかよ。マジでここ異世界じゃね?」
タクヤは大喜びでこの現状を受け入れた。
長らく引き篭りとしてこの手のラノベを読みまくり其の手のゲームをやり込んでいる人間にはわかるのである。そんなことはタクヤクラスの超Á級ともなれば常識でありやはりお約束なのだ。
「とりあえず町まで行って、冒険者ギルドに登録してやらねえとな」
タクヤは颯爽と歩きだした。何しろ自分こそが神に選ばれし勇者だとしか考えていないのだから。
ところが……。
歩けども歩けども、ちっとも町になど辿り着けない、それどころか人里すら見当たらない、それ以前にずっと森の中、全然ここから抜け出せないのである。いい加減飽きてきたし、それ以上に引き籠りのニートにそんなに体力があるはずもない。
「お、おかしくね? こんなん」
自分のような選民がこんなくだらない目に遭うこと自体がおかしいのだ。こんな目に遭うのはモブでゴミくずな一般民衆たる民でよいのだ。
ただタクヤは気付いてはいない。ラノベファンでヘビーゲーマーで異世界というものに精通しているのであれば当然気が付きそうなことが。いや、たとえ詳しくなくとも、異世界というところが基本どういった場所か知ってさえいれば、違和感を覚えるだろうことが。
「ただのモンスターの一匹ですら現れないのはどういうことだろか?」
等とは決してタクヤは考えない。コイツが思うのは、「超上級国民たる世界最強チーター勇者様にこんなカッタリいことばっかさせていいと思ってやかんのか? このクソゲーが!」である。
若しも此処がモンスターが跋扈する様な無法地帯であったのならば、こんなお気楽なクズヤンキーなど、エンカウントした直後に屍肉を晒す他はないというのに。現状はただ単に運がいいだけだというのに。
それでもどうにかこうにか、ようやくこんなところから出られそうな感じになってきた。やっとのことで人様が行き来していそうな道に辿り着けた。そして彼にとっての僥倖はそれだけにとどまらなかった。いかにも異世界にいそうなよぼよぼの年寄りが向こうからやってくるのを見つけたのだ。
「第一村人発見!」
タクヤは飢えてもいたし喉も乾いていた。
「運が良かったなクソじじい! せいぜいこのオレ様の血となり肉となり骨となるがいい!」
タクヤは弱い奴には強いのだ。現世ですらそうだったのに、加えて今や異世界に転生したオレTUEEEEEの、名実ともにスーパーなチーター様なのだ。
前書きからの続きで少し書いておきますと、『図書館の魔女』は異世界ファンタジー系だとは思うのですが、ライトノベル系とは明らかに一線を画します。というか、全くの逆に位置すると申しますか……。あまりにも質量に差が有り過ぎるのです。全くもってライトなどではありません。比較する迄もない程に重厚です。御一読頂ければという以前に、其れこそ字面をぱっと見して頂いただけで解るというレベルで異なります。作者の高田大介氏。抑々アニメとかライトノベルには微塵も関心など無さそう。
それから、タクヤは此の後17年も異世界にいることにはなりません。あと、元いた世界に帰って異世界での経験を映像とともに懐かしむということにもなりません。色々となかったり居なかったりするのですが、根本的に、コイツに、一緒に異世界体験を振り返る友達などというものはいません。好き好んてコイツの側に居る者など居やしません。
………後書きも長く(?)なりました。
今宵も最後迄お付き合い頂き有難う御座いました。
其れではまた明日午後10時にでも。




