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導きの賢者と七人の乙女  作者: 古城貴文
三章 王立学院編

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第43話 夜襲厳戒体制!

 

  

 学院校舎二階の講師室で、ノアは朝から書類に目を通していた。

 自然科学系各講師から提出され始めた授業計画書のチェックである。

「エジェリー、ちょっと休憩しようか!」

 ノアは両手を上にあげ背伸びをしながらエジェリーに声をかけた。


 そんな時、扉はノックされた。

 現れたのはザルベルトだった。

「若様、別れの挨拶に参りましたぞ」

 ザルベルトはマントを纏い、騎馬の旅装に身を包んでいた。

「ザルベルト先生! これから出立しゅったつですか」

 ノアは席を立って、すぐにザルベルトを出迎えた。

「ザルベルト様、おはようございます」

 エジェリーもお茶の用意の手を止め、挨拶にやってきた。

「おお、エジェリー嬢でしたな。本日もまたお美しい! まったく若様が羨ましいかぎりです」

「ザルベルト様は、お上手ですのね!」

「おや、吾輩のモットーは、女性にはお世辞は使わない事ですぞ!」

 エジェリーは『クスクス』と笑って、軽く会釈してからご機嫌でお茶の支度に戻った。


「ちょうど休憩しようと思っていたところです。どうぞお座りください」

 ザルベルトはマントを壁にかけると、ノアの対面に座った。

「良いお部屋ですな」

「こんど自然科学をまとめる講師上席になったものですから。この部屋を頂いたのですよ」

「若様が手をかければ、この学院も益々良いものとなりましょうな」

 ザルベルトは頷きながら、うれしそうな表情を見せた。


 エジェリーがポットとティーカップをお盆にのせてやって来た。

 三人分のお茶を注ぎ終えると、ノアの横に腰かける。

「ほう、お二人が並んで座られるお姿は、すでに様になっておりますな」

 あごに手を添え真顔で発せられたザルベルトの一言は、さらにエジェリーの表情を明るくさせるではないか。

 そんなエジェリーを見ながら、ノアはザルベルトの才能に惜しみない賛辞をおくるのだった。


「それでリフェンサー様とは、お別れはお済なのでしょうか……」

「先ほど今生こんじょうのお別れをしてきましたぞ。吾輩はおそらくこのサンクリッドを訪れる事は、二度とないでしょうからな」

「スティーナさんは……」

「スティーナには、吾輩の作品のすべてを託してきました。そのくらいしか、あの娘にはしてあげられませぬゆえ……」

 ノアも察して、スティーナの事はそれ以上触れなかった。


「しかし若様は違いますぞ! おそらくまた、大陸の何処いずこかで必ず再会を果たす事でしょう」

 ザルベルトは急に熱意を込めて語り始めた。

「吾輩は、この短い人生の中で、あと一つだけ描いてみたい壮大な芸術があるのです。リフェンサー様とでは叶いませんでしたが、若様とならば極上の芸術を生み出す事が出来るでしょう。吾輩は若様と出会えて、本当に良かったと思っているのですよ」


「そんなすごい芸術が残されているのですか? それは一体何なのでしょうか」

「お解かりにならなければ、今はまだ話しますまい……。若様はこのまま、ただ強く、大きくおなりなさい。それだけがこのザルベルトの望みですぞ!」


「さて、伝えたい事は伝えられましたし、これにて失礼させて頂きましょう」

 ノアとザルベルトは最後に固く握手を交わした。



 ノアとエジェリーは、学院玄関近くの馬繋場うまつなぎばまで見送りに行く。

「若様、エジェリー嬢。お見送り感謝いたします」

 ザルベルトは最後に胸に手を添え、深々と頭を下げた。


「ザルベルト先生、道中お気をつけて!」

「ザルベルト様、またお会いできる日を楽しみにしております」

 エジェリーの一言にザルベルトは一瞬悲し気な表情を見せたが、すぐに微笑み返した。

「エジェリー嬢、若様を頼みましたぞ!」

 颯爽と馬に跨ったザルベルトはそう言い残して、その後ろ姿はすぐに見えなくなってしまった。



「行ってしまわれたわね。とても良い方だったのに……」

「そうだね。あの人こそ、『女神に愛された男』真の天才だった」


 約束通りノアとザルベルトが意外な形で再会を果たすのは、まだかなり先の話であった。



  *  *  *  *  *



 そして、厄災は突然やって来た。

 夕方、ノアとエジェリーが校舎から戻ると、ノアの居住する特別棟が何やら騒がしい。

 現在特別棟はノアのみが入居しており、残りの四室は空き部屋となっている。

 最奥の5号室はノアが入居しており、どうやら一号室に誰かが入居するらしい。


 エジェリーは嫌な予感がした……。

「どなた様が入居しるのかしら」

 忙しく働くメイドに尋ねた。

「我々はシュレイダー侯爵家の家臣でございます。こちらのお部屋には、当家のイルムヒルデお嬢様が入居なされます」


 ――やられた!

 エジェリーは、一瞬でこの戦略の有効性に戦慄した。


 ――このままではノアが食べられてしまう!

 エジェリーはノアを置き去りにして、一目散に最奥の部屋に飛び込んだ。


「エジェリー様、一大事です!」

 本日の当番のアイリがエジェリーに飛びついた! 二人はしかと両手を握り合った。

「ええ、解っているわ!」


「アイリ、大至急レベッカとリーフェを呼んできてちょうだい!」

「かしこまりました、エジェリー様」

 アイリが慌ただしく支度をし、風の様に駆け抜けていった。



 程なくしてノアの自室には四人の乙女が集結した。

「只今をもって、ここにイルムヒルデ軍侵攻における緊急対策本部を設置します。即座に第一回緊急対策会議に入ります。皆さん、よろしいですね」

 三人が大きく拍手した。

 ソファーは四人が占領している。

ノアは自分の机の椅子に座り、成り行きを見守っている。


「はじめにアイリ、本日の経過報告をお願いします」

「ハイ!」と歯切れよく返事したアイリは立ち上がった。

「本日ヒトマルマルマル頃、突如本特別棟一号室付近に所属不明軍の侵攻を確認。ヒトヒトマルマル頃、所属不明軍をイルムヒルデ軍と断定、同時に敵軍と認定しました。敵軍は男女混合工作兵により、着々と基地の設営を進めております。ヒトナナマルマルをもって本日の作戦は終了した模様。なお敵将イルムヒルデ嬢は、本日は確認されておりません」


「アイリ、詳細な報告をありがとう。さて我々は強大な敵の侵略の危機にさらされています。大至急迎え撃つ準備に着手する必要があります。まずはみなさんの忌憚きたんのない意見を伺いたい!」


「本部長、意見具申!」

「ハイ、リーフェ。発言を許可します」

「敵はノア様を標的にしている事は明白です。敵基地を先制攻撃による破壊を進言します!」

「ウン、当然の策だわ!」

 レベッカが同調した。

 ノアは、過激な案に苦笑いしている。

「気持ちは痛いほどわかるわ。しかし我々は賢者の後継者ノア防衛軍。決して先制攻撃は許されないの……」

「いかに防衛体制を確立するか……に尽きる様ね」

 レベッカのつぶやきに全員が大きく頷いた。

 この意見には、ノアもホッと胸をなでおろし、満足気に頷いた。


「それでは、予想される侵攻作戦を挙げてみましょう」

 アイリが手を挙げ意見を述べる。

「敵の侵攻ルートは四つのコースが想定されます。一つ目はオーソドックスな廊下からの正面突破。二つ目はテラスデッキを介した窓からの側面攻撃。三つ目は天井裏、もしくは屋根からの上空からの侵攻。四つ目は可能性の域を出ませんが、地下トンネルを掘り進んでの地面下からの侵攻です」

「わたしも同様の認識です。初期の警戒は、廊下ルートと外窓ルートに限定して良いでしょう。しかし今回の侵攻では、非常に有効な戦術が隠されています……」


「夜襲……。ぶっちゃけ、夜這いね…………」

 四人の美少女が『ゴクリ!』と生唾を飲み込んだ。


「今回の侵攻による我々の敗北の定義は?」

「ノア様があんな事やこんな事まで、されてしまう事でしょうか……」

 言った本人のアイリが顔を赤くしてうつむいた。


「そしてノアはきっと抵抗しない!」

 四人の乙女はノアを『キッ!』と睨みつけた!

 ノアは非常に居心地が悪くなってきた……。


「それでは防衛戦の具体策を講じて行きましょう」

「ハイ!」リーフェが勢いよく手を上げた。

「我軍も防衛の砦を築く必要を感じます!」

「具体的には?」

「隣の四号室をわたし達で借りてしまうのはいかがでしょう。より大きな哨戒網を張る事が可能になるでしょう」

「それは名案です! 早速わたしとレベッカ名義で手配しましょう」

「費用はどうやって払うの?」

 レベッカの不安そうな問に、エジェリーは不敵に微笑んだ。

「大丈夫です。わたし達には莫大なN資金があります!」

 エジェリーは座った眼つきでノアを見た。

「ノア、よろしくて!」

「はい……。金庫番の思うがままに……」


「四号室があれば、ワタシ達も二人体制を組めるわね!」

 エジェリーもナイスアイディアとばかりに頷いた。

「わたしとリーフェがAチーム、レベッカとアイリがBチームと言う事でよろしいかしら」

「異議なし!」

「それでは各自準備に入って下さい。奮戦を期待します! 解散!」

 四人の乙女達は速やかに席を立ち、そして散って行った。



  *  *  *  *  *



 厳戒体制の中、最初の休日の午前中。

 イルムヒルデは手土産を持って、戦線布告にやって来た。

 いつもの様に、メイドのセレンダとマゼンダが先に室内に入り、主を出迎える。

 イルムヒルデのドレスは、普段にも増して豪華である。華麗な二門のドリル砲も一段と磨きがかかってみえる。


「本日一号室に入居いたしました、イルムヒルデ・シュレイダーと申します。どうぞお見知りおきを……」

 イルムヒルデは白々しくも、侯爵令嬢に相応しい挨拶を披露した。


「こちらはつまらないものですが、お近づきのしるしに」

 イルムヒルデの挨拶に合わせて、メイドのセレンダが焼き菓子の箱を近くに居たレベッカに渡した。

 イルムヒルデは机を隔てて座っているノアを目指そうとしたが、エジェリーとレベッカが立ちふさがった。

 イルムヒルデはエジェリーと視線を合わせ、そしてレベッカとも視線を合わせた。

「まあ、良いですわ。これからまたあなた達と一緒に遊べると思うと、血沸きに肉踊りますわ!」

 イルムヒルデの言葉は少しおかしかったが、不気味な迫力が伝わって来た。


「わたくし、あなた達が大切にしているモノは、どうしても欲しくなってしまいますの! 今回はとびきりだわ……」

「フフフフッ」と不敵は微笑みを残し、イルムヒルデはきびすを返し帰っていった。


 こうしてイルムヒルデ侵攻軍対ノア防衛軍の戦闘の火蓋は切って落とされた。

 以後、乙女達の絶叫響く、熾烈な攻防戦が繰り広げられるのであった……。







最後までお読みくださり、ありがとうございます m(_ _"m)

応援して下さっている読者の皆様、たいへん感謝しております。


ブックマークまた広告下の☆☆☆☆☆評価を黒く押して頂けますと、

作者はなにより嬉しく、HPは全回復します!

      ヾ(*´∀`*)ノ


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