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導きの賢者と七人の乙女  作者: 古城貴文
四章 王都躍動編
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第93話 聖女の休日5~ホーリーナイツVSパラディン~




「もう大丈夫ですか? 二回戦目は、ぼく一人とあなたたち全員です」

 魔術訓練棟の中央でノアと対峙する聖騎士達ホーリーナイツの姿は実に痛々しかった。

 彼ら自慢の煌びやかな鎧は、土に汚れ、大きく凹みを見せているのである。


「そうですね、皆さんお疲れの様ですからハンデを差し上げましょう。ぼくはゆっくりとそちらに向かいますから、その歩みを一歩でも鈍らせる事が出来れば、あなた方の勝ちとしましょうか」

「な、なんだと~」

 聖騎士達ホーリーナイツはその屈辱的提案に顔を歪ませた。


「あまりぼくを失望させると、本気で怒りますからね……」

 言葉とは裏腹に、ノアは聖騎士達ホーリーナイツに笑顔を見せた。


 

 聖騎士達ホーリーナイツは怒りをにじませながら、守るべき馬車前に戻る。


「つくづく生意気で目障りな小僧だ」

「あいつが精霊スピリット聖騎士パラディンなどとは未だに信じられん」

「俺達で化けの皮を剥がしてやろうぜ!」


「さっきは不意をつかれたが、今度は油断しない。よし、あれで捕らえる!」

「いいのか、あれに生身の人間が触れれば分解してしまうぞ」

「次は失敗がゆるされない。ローゼマリー様はお怒りのようだ……」

「…………そ、それはマズイ」


「おい、あの小僧から魔力を感じるか!」

「いいや、俺は全く感じない」

「オレもだ」

「気をつけろ、何か小細工があるぞ。恐らく強力な魔道具で攻撃してくるはずだ」

「今度は我々が先手を取る! 速攻で我ら必勝の陣を完成させるぞ」

「おお!」 

「あの野郎、死んでも自業自得だからな!」



「それでは始め!」

 中央で審判を交代したフーガが号令をかけた。



 開始早々、一回戦目とは真逆の展開を見せる。

 今度は聖騎士達ホーリーナイツがスタートダッシュをかけ、等間隔にノア大きく包囲した。

 そして徐々に包囲を縮めていく。

 しかしノアは平然と歩みを進める。


「よし、今だ!」

 聖騎士達ホーリーナイツは一斉に剣を地面に突き刺した!


「「神聖監獄ホーリープリズン!」」


 八人の聖騎士を起点にドーム状の結界が完成した。光学的にも白銀のベールが見て取れる。

「聖属性の魔力結界か……。八人で張ってこの程度? 残念過ぎるよ……」

 ノアは結界を見上げながら、ゆっくりと歩む。

「止まれ! 降参しろ! この結界に触れると身体が蒸発するぞ!」

 ノアはやれやれと首を振る。


「魔力結界とはこうやって張るものですよ」

 ノアは解りやすくパチン! と指を鳴らす。

 即座にノアの周りに黒く発光する魔力結界が完成した。

 ちなみにノアはあえて結界が黒く見える様に細工している。


 そしてノアの歩みに合わせて結界同士が接触する。

 瞬時に聖騎士達ホーリーナイツの張った魔力結界は、ノアのそれに吸収され消滅した。

 

「ああ、弱い。弱すぎる。お前たちの弱さは害悪に他ならない……」


「な、なぜ破られるんだ~!」

 聖騎士達ホーリーナイツは驚愕の表情でノアを見た。

「ぼくはお前たちの遥か上位の存在だよ。こんなに薄く脆い結界が、ぼくに効くわけがないだろう」


「おい、みんな! 同時に剣で切りつけ、あの結界を破るぞ!」

「おお!」

 そして聖騎士達ホーリーナイツは渾身の力を込めて剣をぶつけた。

 しかし、そこに衝撃は無かった。

 結界に接触した剣はもやのごとく崩れ、剣身ブレードを侵食していく。

 聖騎士達ホーリーナイツは慌てて崩壊する剣のつかを離した。

 もはや彼らは茫然自失で立ち尽くすだけだった


「おまえ達はさっき、いい事を言っていたね。魔力結界に触れると身体が崩壊すると……。その構成、ぼくはスキだな!」


 ノアは再びパチン! と指を鳴らして結界を解く。


「おまえ、いやあなたは本当にパラディン様なのか!」

 その言葉にノアは怪訝そうに首を振った。

「いいや、違うね。まだ気づかないのかい⁈ ぼくは魔界の王だよ」

 そしてノアは静かに術名を唱える。

大地グランド触手テンタクル!」

 地面から湧き出す土属性グノームのエレメンタルが、まるで触手の様に伸びて聖騎士達ホーリーナイツの四肢を拘束した。

「な、なんだコレは~!」

 一見禍々しく見えるそれは、自由を奪われた聖騎士達ホーリーナイツに恐怖を植え付ける。


「この機会をぼくは狙っていたんだよ。ここで聖女が死ぬのは、ぼくのせいじゃない。お前達の弱さが罪になるのだから」

 聖騎士達ホーリーナイツの顔が恐怖に歪む。

「その大罪を天界の聖母の前で詫びるがよい……」


「聖女さま~~~~~~~~!」

「お逃げください~~!」

 聖騎士達ホーリーナイツの絶叫が魔術訓練棟に響き渡った。


「うるさいな……過剰重力グラヴィトン!」

 瞬時に空気の塊に圧し潰されたように聖騎士達ホーリーナイツは地面にめり込む。

 少し土埃つちぼこりが上がった。



 そしてノアは静かに馬車にたどり着いた。

 ノックはせずに、ゆっくりと扉を開く。


「聖女様方……。お命頂戴……」

「ヒィッ!」

 クラレットが小さな悲鳴を上げた。


「な~んてね!」

 ノアは冗談のつもりだったが、殺気を抑えるのが少し遅すぎたようだ。

 呆然としていたカーマインは我に返ると、突然スカートを抑えた。

 少し漏らしてしまったようである。 


「あ、あの、聖騎士パラディン様。あの者達は、神に召されたのでしょうか……」

 クラレットが恐る恐るノアに尋ねた。

「う~ん、たぶん気絶しているだけだと思うよ。死んじゃっていたらごめんね」


「彼らは少し鍛えなければいけませんね……」

 窓から見える惨劇の結末に、ローゼマリーは小さくつぶやいた。 


「ローゼマリーさん、テレージア」

 ノアは二人の聖女に呼びかけた。

「明日はあなた達がいるうちに、今後の対応について合同の会議を開きましょう。ぼく達が教会に出向きますから、部屋を用意しておいて下さい。三十名程連れて来ると思います」


「かしこまりました、ノア様」

 そしてローゼマリーはクリシュトフ卿に視線を移す。

「明日の公務はすべてキャンセルです。わかりましたね」


「仰せのままに……ローゼマリー様……」














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