99話 野盗と宗教(3)
私は味方の隊の手助けに入ると同時に諜報隊に指示を出す。諜報隊は指示を聞くとすぐに駆け出す。私はこの国中の軍事施設を破壊すると一度、自分の支配地に引き返す。兵を全員集めていった。
「今回の戦いで私はこの地を離れる。ついてくるものはこの場に残れ。去る者はすぐにここを離れろ。恨みはしない。」
兵の間に少しの間、動揺が走る。少しの間、待つと黒田が動き出す。そしてその配下の兵もそれに続く。それを見てほかの兵も動いてよいものなのだと判断し動き出す。しばらく待つとその動きがなくなり最終的には古参の兵、それから元傭兵の部隊、それから少しの犯罪組織に所属していたものたちなどが残る。私はそれを見ていった。
「お前らは自分の意志でここに残った。それを忘れるな。」
私は中野に指示を出しながら松島家に向かって動き出す。ここからは寄り道をせずにまっすぐと進む。
僕は伝令役の兵から衝撃の情報が知らされる。
「もう一回行ってくれ。そんなわけないだろ。」
「当家の詰め所、城すべての軍事施設に攻撃が仕掛けられ、わが軍は全滅し、私は当主の命でここに報告にきたものの領主の安否も不明でございます。」
その時、部屋の扉が開き藤田と吉田が入ってくる。
「どうした、佐藤。そんなに大きなことを出すこともないだろう。」
「申し訳ございません藤田様。」
「しかしあまりにも信じがたい話だったものでつい興奮してしまいまして。」
俺は兵に促しもう一度同じ話を今度は藤田たちに向けてさせる。それを聞いて藤田は吉田に向けて言った。
「お前をあの任務につけて正解だったようだ。向こうもどうやら本格的に動き出してきているのかもしれない。」
「どうやらそのようですね。しかしお任せください。やつらに勝てなくても負けぬところにまでは何とか持っていきます。」
藤田はそれでよいといった顔をし今度は僕に向けていった。
「お前は急いで首都の奪還に向けて動け。こちらのことにかまっている暇はないと思うぞ。」
「分かりました。」
僕は藤田に言われて慌てて動き出す。今回の一軒で作戦の全体像が大きく崩れてしまったのだから作戦を一から練り直さなければならない。さらに現在、敵がどうしているのかなどの調べなければならないことが増えてしまったのだ。藤田たちがここまで何を恐れているのかを気になる気持ちを抑え僕は自分の仕事に戻った。
次の日の夕方、首都に行き偵察を行って戻ってきた兵たちに話を聞く。驚いたことに敵はすでに逃げ出し空になっていたとのことだ。僕は慌てて農民を集め軍を構成し始める。そして次の日の昼に何事もなかったかのように軍を進軍させて占拠する。藤田に報告すると「そうか」との一言だけをもらい、その後すぐに支配体制を確立した。完敗だった。確かに戦には勝てたものの強力な仲間を失い、さらに近くにいる領主たちが安心して藤田のもとに着けるようにはこの戦で我々の強さを見せつけなくてはいけなかったのにこれではただ弱いところを見せただけになってしまった。なにせ名誉挽回の機会もなく敵に逃げられてしまったのだから。
私はしばらくの間、諜報部隊の偵察の報告を聞きながら前に進む。支配地を捨てて2日後の夜のことである。野営の準備をしていると偵察から帰ってきた兵が言った。
「岩田様、後ろの部隊が見える範囲までやってきました。」
「そうか。ようやく来たか。」
私はそういうと軍の指揮を中野に任せると軍の後方に行く。しばらく待つとその部隊がやってきた。一人が前に出てきて言った。
「岩田様、遅くなりました。何事もなく合流出来て良かったです。」
「よくやった、黒田。どうしてもやる気のない兵と別れるためにはお前が動く必要があった。ありがとな。お前も兵も今日はゆっくり休め。」
「分かりました。」
こうして全軍が集まった。