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俺の戦記  作者: かな河
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94話 山場(11)

 俺は予定よりも一日早く戦場に着く。すぐに俺は兵を偵察に出す。この偵察の目的は三つ。一つ目、予定戦場であるここらの地形を確認すること。二つ目、ここらに敵が到着していないか確認すること。三つ目、味方の軍が現在どこをどのくらいの規模で動いているのかを確認するためである。これらの情報は小林家からの情報でもわかることであるがそれでも自分たちの目で確認しないことには安心できない。日が沈み始めると続々と兵士が帰ってくる。兵士の持って帰ってくる情報をもとに味方の軍の位置を割り出し、もともと持っていた地図に書き込む。もちろんその地図に今日偵察で分かった新たな地形などの情報も書き足していく。幸いにも敵の情報はなかったのでこのまま今日はここで野営を行い、次の日に備える。

 次の日、ほかの終結しつつある軍と合流する。朝のうちに昨日までに合流地点付近に集まっていた軍と合流を済ませる。そして俺は小林家の情報をもとに敵の動きを予測し、兵士にはここらの地形を範囲を広げつつもさらに念入りに調べさせる。その日の夜までに全軍集合する。最後の梅田家がそろうと野村の誘いで軍議が始まる。野村が言った。

 「先ほど梅田家から人数を聞き今回の総軍の人数が3956人と確定した。それをもとに今回の戦をどうするか考えてほしい。」

 俺は言った。

 「小林家の情報を頼りに敵の軍の動きを見ていると我々から迎えうちにいかなくてもここで待っていればいずれ戦うことができると思う。そしてその際に使うであろう進軍路もかなり絞れる。」

 「しかしそれでは時間がかかりすぎてしまうのではないか。」

 そう言ったのは吉岡だ。俺はこう返す。

 「問題ない。すでにここに集結していることは向こうは気がついている。こちらに向かってくるのは時間の問題だろう。」

 「どのくらいで来ると予想されているのですか」

 梅田が言った。俺は小林のほうを見る。少し小林が戸惑った様子を見せながら言った。

 「軍事が専門ではないので参考程度ですが道の幅や舗装具合から言って3日以上はかかるでしょうが7日以上はかからないといった具合ではないでしょうか。大野殿はどう思われますか。」

 「俺は4日ほどと踏んでいたから小林殿のと同意見です。」

 「では三日以内に迎え撃つ準備を完成させればいいわけか。」

 松本が言った。それを聞いて野村が言った。

 「時間が少ないと言ったら少ないがかなりのことができる時間ではある。とりあえず小林家には敵軍の情報収集を頼むとしてそのほかの軍はどうするかを考えるとするか。」

 俺は間髪入れずにこういった。

 「なら、わが軍はここらの地形を引き続き調べて回る。その間に石や我が家が改良を施した投石機を作ってもらいたい。もちろん投石機のつくり方は我が家が指導する。」

 「かまわないが簡単な柵なども作っておいたほうがいいのではないか。いくら野戦とは言え陣の周りに簡単な防御を施しておきたいのだが。」

 浜野が言った。周りの領主たちがそれに賛同するようにうなずく。出発前の軍議でこの戦場での陣の敷き方などは決めてあったのだから本当ならすでにそのくらいの用意は終わっていてほしいものだが仕方ない。俺は言った。

 「分かった。それが終わりしだいでかまわない。野村殿、こんな感じでよろしいだろうか。」

 「他に何か意見がないのであればそれでよい。」

 別に何も意見が出ずに終わる。そのまま軍議はおしまいになり各自、自分の軍の元に戻る。俺は何人かの兵士を選び他家に派遣する旨を伝える。それから自分の軍をぐるりと回り不備がないかを確認する。もちろん兵たちが何度も確認しているのだから不備はいつかるはずもない。ただ単に俺の緊張をほぐすためである。さすがに俺も今回のような大きな戦とあっては緊張する。単純な野戦は混戦に持ち込んでしまえばやることがそこまでないと分かっていてもだ。

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