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俺の戦記  作者: かな河
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93話 山場(10)

 俺は小林が戻ってくるまでの四日の間、萩原にお願いし、逃走兵を捕まえ、こちら側に着くように説得させて回った。もちろんこれには裏がある。小林についての情報を探ろうとしたわけだ。敵側にもともとついていた敗走兵の中でも高位についていた人なら何かわかるかもしれない。そう思って調べたのだが結局何もわからずじまいで終わってしまった。もちろんこちらにいる気の利く兵を使い調べたりもしたが何も出てこない。どうしてあそこまで自信たっぷりに裏切り工作ができるといえるのか結局はわからずじまいで終わってしまった。そしてついに小林が戻ってきて会議が始まる。会議の冒頭のっけから小林が言った。

 「今回の交渉で3000人ほどをこちらに寝返らせることに成功しました。」

 会議に出ていたほかの領主たちは驚きのあまりに何も言えなくなった。もちろん俺もだ。しばらくの間沈黙が続き、その後野村が言った。

 「どのくらいその言葉は信じていいのか。」

 「もちろんほぼ確実なこととして考えていいでしょう。」

 ものすごい自信である。しかし本当に全部信じてしまうのはまずい。しかし本格的に戦わないといけない相手の数は七千人ほどで済むというのはものすごい楽になる話である。小林が言った。

 「ここからは皆さんの仕事ですよ。確かに裏切った兵は私の配下にはなりますが、裏切りがばれないようにするためには今回こちらから細かい指示を出すことができません。ですので今回は皆さんで戦を進めてください。」

 そういってあとは任せたというように俺のほうを見る。少し悔しかったので俺は何も言わない。しばらく誰も何も言わなかったので野村が言った。

 「では何か意見はないか。」

 俺のほうを野村が見る。少し考えているふりをしてからこういった。

 「どこかで決戦をやるのがいいですかね。予想戦場がわからない限りなんとも言えませんが今回は奇襲をかけて討ち取るというよりもお互いににらみ合いそれから戦うという堂々とした戦いにしなくてはならなそうですね。」

 それを聞いた松本がいった。

 「なぜ今までのような奇襲から始まる戦ではいけないというのだ。」

 「それは今回の敵の中に味方が紛れていることを考えると敵の状態がわかりづらくさらに敵も闇雲にこちらに攻撃をしなければならなくなる奇襲を使うとどうしても同士討ちになってしまう。だから正面を切って戦い、さらに一時的にでもこちらが有利な体制にすれば裏切りを行う連中はこちらに動きを合わせやすくなり動いてきてくれるかもしれない。それが狙いだ。」

 俺が説明を終える。浜野が言った。

 「どこでどのように戦うかはどうするのか。」

 「それは戦場がどこになるかがわからなければ決められないだろう。」

 しばらくの間は話会いが続く。おもに裏切る予定の軍団についてだ。小林の話では敵軍の三つの指揮系統のうちの一つの軍がまるまる裏切ってくるらしい。それから決めたのはいくつかの予定戦場だ。それが決まるとすぐに各家が領土に戻り出陣の支度を行う。日付と時間を決め予定戦場のうちの一つで落ち合うことになった。俺は自分の馬を倉に取りに行きすぐに出発する。ひたすら馬をかけさせる。所領に着くと休養をさせている兵士を急いで招集をかける。短い休みにはなったが兵にはいい休憩になっただろう。兵が集まるのを待ち、出陣する。

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