90話 山場(7)
俺は少し前に決めた作戦の通りに動けるように準備を重ねる。今回はほかの領主たちに頼み、敵戦力をできる限り減らすために今回は投石を始め、弓といった飛び具をうちの軍が敵軍と衝突するまでに打ち込んでもらうことを決めた。今度の戦は向こうの兵の数もこちらの兵の数も4000人ほどと数の上では拮抗しているように見えるが実際にはこちらの兵は連戦で休む間もなかったため相当消耗している。さらに数の上で拮抗していると先ほど書いたが、それはあくまでも死人や負傷者の人数を差し引いていない。つまり頭数ではこちらの軍のほうが不利なのだ。そのことを考えると今回は念入りに準備しなくてはならなかったのだ。しかしすでに敵陣の近くにまで来ているので実際にできることはそこまでなく、俺たちがやったことといえば他家のために石ころを集めたくらいだ。ついに日の出間際になり小林家のものが攻撃の初めを伝達してきた。俺は敵が迎え撃つ準備をしているうちに突撃をしなければならない。俺は兵に向かっていった。
「敵の中で足を絶対に止めるなよ。とにかく前に進め。突撃。」
一気に兵たちが駆けだす。味方の飛び具が俺たちの頭の上を飛び越えていく。敵陣に着くと敵は混乱しつつも武器を持ちこちらに向かってくる。しかしほとんどが鎧もまともに来ていないような状態でばらばらとこちらに向かってくるので簡単に蹴散らかすことができる。俺は小林家から聞いた敵の野営の様子と実際に今見ている状態を照らし合わせながら敵の大将の居場所を見つけ出す。俺は兵に指示を出しながらそちらのほうに少しづつ進路を変える。それに気がついたのか近くにいた兵が大将のテントを守るように動く。その兵達はさすがにずっと起きていたようで動きが俊敏である。俺はその様子を見るとそのテントからすこしだけ進路をずらし敵の集団との本格的なぶつかり合いを避ける。すでにほかの味方の軍もこちらに突撃しているだろうからあとからくる仲間に任せればよいのでここで無理して取る必要はない。今ここで足を止めてしまえば敵に囲まれてしまうし、混乱が小さくなってしまうかもしれない。、それよりも敵陣のあちこちを破壊して敵の混乱を大きくしたほうがいい。そのままあちこちを駆け回りながら攻撃を続けると、一度敵から離れる。少し離れたところで止まると味方の中で怪我を負い次の攻撃の攻撃に参加できないものたちをなるものたちとそこで分かれる。一度、軍の状態を整えると突撃を仕掛ける。敵陣は混乱しきっている。先ほど大将がいた場所まで戻るとそこには梅田家の軍がいた。陣頭指揮はあの爺さんがやっている。しかし後一つで大将首を取れそうなのだが後ろから回り込まれ攻撃をされているようでどうやら苦戦しているようだ。俺はそれを見ると兵に指示を出す。
「すぐに梅田家の援護にまわれ。」
俺の護衛の者を残しあとは兵の各々の判断で駆け出す。俺自身も槍を使い護衛の者とともに敵兵を突く。そうやって時間を稼ぐ。俺たちの体力が切れかかったころついに梅田が叫んだ。
「梅田家の将 梅田春樹が敵の将討ち取ったり。」
ようやくか。本来ならここで勝どきでもあげたいところなのだがどうやらそうは問屋が卸さない。なにせその声を聴いた兵がかたき討ちだと言わんばかりに攻めてくる。俺は駆けたり転げまわったりしながら敵を殺しつつどうにか死なないようにする。護衛の兵も自分の身を守るのに必死で俺にかまっている暇はない。もちろん俺も守ってもらうことなんてはなから期待していないから問題はない。しかしついに槍が折れる。すぐに俺は槍を捨て、刀に持ち替える。しばらくするとその刀も折れ、ついにはその辺に死んでいる敵兵から奪った槍を使う。しかしその槍はとんでもない鈍らでとても敵兵を突き殺すことはできない。そのため俺は防戦一方になる。しかしその状態で何とか生き延びるとついに松本家と野村家の軍がやってきて何とか命拾いをする。こうして戦は終わった。




