9話 籠城(3)
籠城開始六日目 昨日の策で全て出し切ってしまった俺はひたすら投石を行う。向こうがなにか小細工でも仕掛けてきいてくれたらいいのだけどこうも愚直に攻めてこられたら何も対策のうちようがない。頼みの綱の同盟はむすびにいっている遠藤からの手紙は敵が近くまで来たことで手紙でのやり取りができなくなり進捗状況は一ヶ月前の情報を最後にわからなくなってしまった。この城はこのままいくととても何日も持ちそうにない。というか兵たちにも疲れが見え始めているし今日には確実にこの城は落ちる。しかし前五日の間にほとんど兵たちが疲れを見せることがなかったのは石井によって良い訓練を施されていたからだろう。たった四ヶ月でこの仕上がりなのだからさすが遠藤が紹介してきただけのことある。ちなみに石井は現在近くの別の貴族のところに逃している。戦が始まるまでは、兵の育成の腕を疑っていたけれど使えるかもしれないし念のため逃しておいた。今となってその選択が正解だったと感じた。もちろん領土の防衛に成功すればの話で失敗すればなんにも意味はない。午後になるとあちこちから石垣を登られ交戦中という情報が俺のところに寄せられた。しかし俺はそこに向かうわけにはいかない。なにせ俺が守っているところもぎりぎり守っている状態なのでここから俺がいなくなると周りの兵だけでは支えきれず石垣を登られてしまうからだ。じょじょに石垣から押し込まれていき、ついに城の中心にある本丸の周りに集まり戦っていた。だいたい日没まで後一時間くらいだろう。さてどうするか。とりあえず日が沈んだ後に敵を切り倒し逃げ出そう。そしてゲリラ戦に持ち込んでここらの覇権をもう一度取り戻そう。そんな事を考えながら戦い続ける。そしてふと気づく。敵が今までほど戦いに集中していないというか、後ろを気にしているというか。しばらく考えて気づく。たぶん遠藤だな。それならここから逃げ出す必要はない。というか今は兵の消耗をできるだけへらすため本丸の中に逃げ込むべきだな。そう考えると急いで俺は兵に向かって
「総員、本丸の中に入れ」
そう叫ぶと急いで本丸の中に入る。本丸の中には念のために投石用の石を用意してある。兵の中でも特に腕の立つ兵を戸が破られたときのために一階に残し残りのものは二階、三階から投石をする。三十分もしないうちに敵兵は引いていった。俺は兵たちを並べて人数の確認を始めた。残っていた兵の数は34人だった。兵たちには休ませておくことにした。それからまもなく遠藤と見知らぬ兵たちがやってきた。俺はこういった。
「遠藤、遅かったじゃないか。」
「悪かったな。案外交渉がまとまらなくて」
「いや それでも後一日くらいは早く来れただろ。だってお前一昨日の夜にはついてただろ」
「なんでわかったの。大野からこっちのようすみえてたの。」
「違う。遠藤が来るまで気づいていなかったよ。」
「じゃあなんで気づいたの」
「だってあんまりにもタイミング良すぎるだろ。俺たちが死にかけたら救援が来るなんて。そう考えると近くで待機していて俺が敵の戦力を削るのを待ってそれから攻めてきたと考えるのが妥当だろ」
「そのとおりだよ。しょうがないだろ。同盟結ぶのに結構無理いったからあんまりほかのひとたちの軍を傷つけるわけにいかなかったんだよ。」
「わかった。許すよ、許す」
「そうだ。いま麓で他の貴族たちが待っているから下に行こう。礼も言わないといけないし」
「そうだな。いそいで下山するか。ところで統制派の軍はどうなったの」
「そのことについても下に降りてから説明するよ」
こうして俺は籠城を終えられることができ遠藤が結んだ同盟相手に会うことになった。