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俺の戦記  作者: かな河
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88話 山場(5)

 俺はその夜、また野村に集合をかけられて野村の陣営にいる。野営地はお互いに近くにあるとは言えこう何度も行き来するのは面倒だ。しかし連携の取りずらい相手と組んで戦うとなるとちゃんとこうやって顔を合わせなければ意思疎通が取れなくなってしまうので仕方がないことなのだろう。俺がつくころには小林以外の領主たちはそろっていた。俺が入ってくるのを見ると野村が言った。

 「全員そろったので少し早いが始めるとしよう。小林殿は情報収集の関係で手が離せない状態らしいので待たずに初めていいとのことだ。では前回問題に上がった梅田家の戦力問題のほうから今回は話をしていきたい。私個人としてはこの問題は解決したと思われるのだが皆はどう思われる。」

 野村が周りを見る。特にだれも反対しない。野村もその様子を見てこれでこの話は終わりにする。野村が言った。

 「次の議題なのだが私から提案がある。戦場での細かい動きをもう少し決めてもいいと思うのだがどうだ。というのも今回の戦いでおおっざぱな案しか聞いていなかったため他家の動きを見て少し混乱するところがあった。二度の戦を通じこの戦術にも慣れてきたところでそろそろもう少し細かい動きまで決めたほうが良いと思うのだがどう思われれる。」

  今回、俺の単独で敵の奥深くまで突撃したことに関していっているのであろう。松本が言った。

 「前回が一番、横から圧力をかける軍としてはやりやすかった。やるとしたらそれを見習うのがいいだろう。」

 周りの領主たちもそれに賛成する。別に俺も反対することはない。最終的にうちの軍が深くまで突撃し、混乱を巻き起こし浜野家、野村家で敵に被害を確実に与える。さらに少し時間をおいてから左右からの攻撃を仕掛けることで確実に攻撃をものにするということになった。その話がすむと野村がまた言った。

 「次の敵についてなのだが小林家が二つの敵を補足したそうだ。片方については情報を渡されたのだがもう一つについては人数以外についてはわかっていないらしい。」

 そういって野村は資料を配る。資料によると一つの集団は規模200人程度で軍の編成は俺たちによって壊滅させられた軍の敗走兵で、ほとんど野盗化しているものだ。もう一つは正規軍で規模は4000人ほど。こちらについてはその軍の進行方向と位置についてしか書かれていない。このくらいの軍ともなるとどこかにお偉いさんがいたりするものだがそれについてはまだ情報を得られていないのだろう。全員が目を通し終わったくらいに野村が言った。

 「どちらの敵を攻めるか決めたいのだがいいかな。私としては情報が少ないとは言え4000人の大規模な敵がいいと思うのだがどうだ。」

 誰も反対しない。みんな賛成なのか。俺としてはここはどちらも倒すのがいい気がするのだが兵の負担を考えると誰もやりたがらないのだろう。しかしここでこいつらを放置するとほかの軍と合流したり国元を荒らしたり、補給の部隊を攻撃したりするかもしれず危険である。しかしここは黙っているのが得策だろう。野村が言った。

 「反対するものがいないのならそちらの方向で行こう。大野殿、道はいつもの通り任しましたよ。」

 そういって野村は会議を終える。別に最後の言葉には深い意味はない。ただ単に先鋒の俺にいつもかけている言葉である。

 そのまま俺は自分の陣に戻り行軍路を考える。もちろん途中の野営地を敗走兵の近くにするためである。そうして決めた行軍路を二日ほどたどり敗走兵の近くまでやってくる。そしてその日の夜、他家が寝静まったころ声をかけておいた選り抜きの兵40人が集まる。そして静かに、仲間の見張りにばれにように慎重に敗走兵の近くまで行く。敵はすぐに発見することができた。戦場から逃げ出した安心感と下級の兵しかいないせいか見張りはほとんどいない。そのため敵にばれることなく近くまでやってくることができた。俺は兵に合図を出し散開させ、数少ない見張りを静かに殺す。そしてもう一度、集まり敵のど真ん中に躍り込む。ほとんどの敵兵は疲れて眠りこけている。起きているものをからまずは確実に仕留めていく。その時の物音で寝ていた兵達が起き始める。しかし起きたばかりの装備も十分でない兵ではうちの先鋭の兵を仕留めることはできずただひたすらに敵は負傷者を出していく。この連合軍が始まってから控えていたことなのだが俺自身も今回は前に出て戦っている。そして俺はわざと敵を殺さずに傷つけるだけにしている。そのためあたりは多くの悲鳴が聞こえる。すぐに敵はばらばらな方向に逃げ出す。やはり多くの兵は戦場にトラウマを抱えているのだろう。そして悲鳴によってトラウマがよみがえらせることができたようだ。俺たちはしばらく残党狩りを続けると元の位置に集まる。そして敵の生きているものにとどめを刺して回る。また仲間にばれないように静かに自陣に戻る。

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