86話 山場(3)
俺が捕虜を連れ集合地点に着くと予定通り先について待ていた浜野が向こうとの話を済ませ、待っていた。捕虜の受け渡しを済ませると俺は浜野に連れられて陣内にある領主たちが集まる小屋に通される。浜野とともに先についていた野村が待っていた。俺と梅田は小屋の中の席に着き松本たちを待つ。誰も何も言わない。仕方がない。俺と野村は先ほどの会議の後から少し気まずい状態にあるし、浜野とは昔っから仲が悪い。そのことを雰囲気で察したのか梅田も何も言わない。そのまま気まずい時間が過ぎていく。ついに梅田が耐え切れなくなったのか、
「少し、作戦について話しませんか。」
といった。それに救われるようにしてみんな地図に見入り、軍議を始めた。
一日ほど待つと松本家、吉岡家の軍が現れる。捕虜の引き渡しの作業が終わるころに小林も現れ七ヶ国すべての領主が集まる。総大将の野村の提案で今後動きを確認するための軍議が開かれることになった。会議が始まると野村が言った。
「今回の作戦は敵を一掃が目的である。最初の攻撃場所はここからすぐ近くにある城からほかの城の兵と合流するために出てくる軍の撃破。その後、すぐにほかの小規模な軍を補足、撃破を繰り返しながら敵の戦力を削っていく。敵が全軍まとまるまでこの方法で敵の数を減らすで問題ないか。」
野村が全員の顔を見る。誰も異存はない。もちろん俺もだ。野村が笑っていった。
「これでは軍議にならんな。具体的な攻め方について話そう。」
ここでは多少の議論は出たがやはり皆緊張しているせいなのかそこまで活発なものにはならず終わる。しかし俺的には問題はない。必要なことはすべてやったはずである。あとは現場での判断で的確に動くほうがいい。確かにあらかじめ作戦を決めておくことは大事なことではあるがそれにとらわれすぎて現場で自由に動けないというのは最悪の展開だと俺は考えているためあまりこのような場で戦術的な話には参加しないでいる。
次の日全軍動き始めた。一番、近い城へと向かうためである。軍の戦闘にはうちの軍と小林家の数名がいる。小林家がいるのは道中の情報をできるだけ素早く、戦闘の俺に伝えるためである。行軍速度はこれからの戦に備え、体力を温存するためかなり落して動いている。一日、二日行軍を続けているとついに小林からの情報で敵に動きがあったことがわかる。俺は慎重に自分に与えられた権限の中で軍を制御しながらばれないように敵軍の後ろに着く。たいていの軍は撤退戦でもなければそこまで後ろの情勢を気にしないので後ろにつけること自体は小林家の確かな情報に基づき動ける以上そこまで大変なことではなかった。あとはどこまでばれずに近づいていけるかである。俺は日がくれると同時に情報と自分の経験を信じて少しずつ距離を縮めていく。松本家と梅田家の兵は敵軍の左右につく。しかしこちらはうちの軍ほどは近くにつけてはいないはずである。小林家の情報により敵の数が500人ほどと判明。こちらよりも少しすくない人数だ。布陣の仕方的にもこちらが有利であるからこのまま攻撃を仕掛けても問題ないだろう。敵が城を出てから二日目の日の出の直後、他家との打ち合わせ通り突撃に踏み切る。予想どうり敵の目が完全に覚める前に攻撃をかけられた。また日が出た後のため一緒にいる浜野家、野村家、吉岡家との合同軍であるが同士討ちの恐れもなく敵陣で戦いが始まる。敵は混乱しきっている。一部の敵がやや立ち直り始めたところに左右から松本家と梅田家の軍が押し寄せる。やや梅田家の押し込みが弱く少し不安を感じたが無事に敵は潰走を開始。四方を完全に包囲したわけではないので簡単に潰走できるようになっている。そのため敵の兵士は粘って戦う理由がないのですぐに潰走を始めたのだ。こちらの戦略的には殲滅を行うほうが良いという意見を俺は軍議で出したが火事場の馬鹿力を敵が発揮してこちらの損害を多くするのを恐れた他家の領主たちによって止められ、今回の敵に逃げ道を与える作戦になったのだ。しかしそんなことはどうでもいい。俺は追撃に取り掛かった。敵は組織としての動きをすでにもうやめているので損害をそこまで出さずに追撃を置かなうことができた。そのまま千歩ほど追撃を続けると追いかけるべき敵の軍はなくなった。少しずつ分かれ道などで敵の集団が分かれていったり俺たちの追撃で数を減らしていったためだ。一度全軍集まり小林の情報をもとに次の敵のもとに向かう。




