84話 山場
俺は、ほかの領主たちが集まるまでの間、城の一角にある部屋にこもりひたすら地図と小林家の情報を見ながらこちらの作戦を立て続けた。どうしたって正面衝突の戦は避けられない。なぜならこの正面衝突を避けていてはいつまでたっても敵に大きな損害を与えることはできないからだ。敵の兵力の総数は2万でこちらの総数は4000ほど。しかもこちらの兵の数はあくまでも総数でありここから要所の守備や領国の都合で全員が来れるわけではない。また俺が自由に使うことができる兵の数は400ほどでありそれ以外はいざ戦場に到達したときにどう動くかまるで分らない他家の兵である。圧倒的に分が悪い。とは言え俺はこの戦いになんといしてでも勝たなければなないためひたすら勝つ方策を練り続けた。
俺が到着してから四日ほどたつと首脳陣は全員集まった。それから一日開け松本は会議室に全員を集め会議を始めた。
「七加工同盟の緊急会議を始める。まず最初に現状についてはすでに皆さんに渡してある冊子の通りであるからこれ以上ここで言及する必要はないと思う。」
松本が全体を見回すも誰も異論はない。一呼吸おいてまた松本が話し始める。
「ではこれから二週間後に迫っている敵軍の出撃についての対策を話し合う。何か意見があるもの言ってくれ。」
まず最初に浜野が言った。
「意見ではないが先に大事なことであると思うので伝えておく。私たちは捕虜を統制派の本国に受け渡すための通り道の交渉を行った結果であるがこちらの都合のいいことに我々が送り届けなくてもよくなった。向こうの国に捕虜を引き渡せばよいだけになった。というのも向こうが現在統制派の本国と交戦中らしく、捕虜の交換のため捕虜を必要としているらしい。一応松本殿には伝えたことであるがこの場で行っておく。」
一度ここで浜野は言葉を区切り、こう続けた
「ここからが意見だ。一度、捕虜をすべて向こうに渡すべきだと思う。もし捕虜どもがこの大事な場面で反乱を起こした場合、面倒なことになる。」
野村が言った。
「しかしそれでは捕虜を向こうに届けるときに兵を護衛につけなければならず敵が動き出したときに護衛につけていた分の兵力が使えなくなるではないか。」
それを聞いた俺は言った。
「このことは心配しなくてよいだろう。捕虜の数は一万ほどだだ。このことを考えると一気に全部運び出すためには七ヶ国軍の全軍が必要になる。だから目的地まで全軍で行き、そこからそのまま城に変えず敵の撃破を行っていけばよい。」
「しかしそれでは捕虜一万を二週間以内に動かさなければならない。さらに言えば大野殿は野戦をやるつもりなのか。ここ一年の活躍をいかに見てきているとは言えさすがにその案は賛成することはできない。」
「なぜ賛成できない。援軍もなしに籠城なぞして何になる。野村殿は負けを城の中でこもって待つつもりであるのか。野戦をおこなわなければならない理由はいくつもあるが籠城する理由がどこにある。」
俺が少し声を荒げてこういうと松本が少しなだめるように言った。
「まあ落ち着いてくれよ。確かに援軍なしの籠城はきついものではあるが望みがないわけでもない。それに自分の言い分を起こる前にしっかりと落ち着いて話してもらわなきゃこっちにも通じないよ。」
「そうですね。失礼した。」
どうにもこの軍議というものは苦手だ。たぶん俺が限られた人としか今まで話してこなかったのが悪いのだろう。俺は少し息をはいてからこういった。
「ではこれから野戦で戦わなければならない理由を述べていこう。一つ目は小林家の情報にあるように隣の大国である市川家の内部抗争が終わり始めてきたことである。このことにより敵を早く倒し敵が二つにならないようにしたいからだ。二つめは小国内での優位性を確保するためである。現在、私たちの国の周りのには私たちと似たような小国がいくつもある。これらの中でまた争いが起きないように、もしくは起きても私たちがその争いに巻き込まれないようにするためにはここらの領主の中で圧倒的な領土と力を持った組織としてこの同盟を機能させるためだ。そして3つ目これ以上の長期戦を続けられる領主がこの中にいるとは思えない。かなりの長い期間を戦い続けたためそろそろ内政に大きな支障をきたし始めるようになると考えるためだ。野戦なら籠城と違い素早くすべて蹴りをつけることができる。」
俺が言い切ると少しの間静かになる。みんなこの戦を野戦で進むことの利益と損害について考えているのだろう。しかしどうやってもこのことには思い当ってしまうはずだ。野村が言った。
「どうやって5倍以上いる相手に勝つつもりだ。もちろんこちらの守りを捨てるわけにはいかないから実際には5倍よりももっと少ない数でこちらは戦わなければいけないことになるぞ。」
俺は言った。
「敵が終結する前に各個撃破していけばいい。敵が各城から出て集まるまでに攻撃を仕掛ければいい。」
松本が言った。
「今回はここらかしっかりと話していこうじゃないか。」
そういうと松本は議論をしっかりと統制し始めた。しかしそれでもかなり長い時間の議論となった。
今回は少し長くなりましたね。本当ならもっと軍議の内容を書きたかったのですが長くなりすぎてしまったり書いてる本人が何を言っているのかわからなくなりそうになってきたので止めました。次回も金曜日に投稿ができるように頑張ります




