80話 人心掌握
僕はひたすら攻撃の様子を見続ける。どんどん信者たが死んでいく。しかし少しづつではあるが敵兵も死んでいく。その状態で戦はどんどんと進む。そしてついに戦が終わる。もちろん信者たちの勝利である。藤田は僕についてくるように目で合図すると今、落としたばかりの城の中に入っていく。城の一番奥の部屋まで行くと藤田が言った。
「仮面を外せ。」
僕は仮面を外すと藤田に促されるままに椅子に座る。藤田も僕の正面に座る。藤田が言った。
「なんで今回、俺の指示に従わなかった。」
どうやら僕が儀式を途中で止めようとしたことについて言いたいことについての話らしい。僕は答えた。
「藤田様がどうにも正常な判断を下すことができそうにないと判断したからです。」
「何があって求めるなといっただろ。それは例え俺が正常な判断を下せていなかったとしてもだ。」
「しかし今回の戦で正常な判断を下していればもっと少ない犠牲で戦を終えられたはずです。」
「どの場面で俺で采配が間違っていたというんだ。」
「最初の儀式のところです。敵が攻めてきたところですぐに反撃に出れば犠牲を少なくすることができました。」
「確かにお前の言うことには一理ある。だがそれはあくまでも理屈の上での話だ。もしお前の言うように儀式を中断して反撃に出たとしよう。その場合、確かに犠牲の数は今回よりも少なくなるだろう。しかしその時の信者たちの戦う意義はどうなるか考えたか。」
「考えていません。」
「だろうな。たぶん信者たちの戦う理由は神の使いである俺のために戦うのではなく、自分が生き残るために戦うことになる。しかしそれではいつものような攻撃を行うことはできない。ただ兵士と変わらなくなってしまう。さらに言えば生き残るために戦うのであれば逃げ出してしまえば生き残ることはできる。だから最終的には逃げ出してしまう。そうならないためには死んだときにこの世にのこる子孫がちゃんと生き延びることとあの世で地獄に行かずに済むという保証を与える儀式を行わなければならない。儀式が行われることでこのことが保証され、保証されたことにより宗教のために戦えるようになる。もちろん実際に信者たちがここまで深く考えているわけではないがそれでもこういったものは守らないといけない。でなければ信者たちからの進行を得ることができない。」
ここまで説明を受けて僕はようやく納得がいった。僕は答えた。
「分かりました。今後は藤田様の指示に従うようにします。」
藤田は表情を和らげた。
「なに、意見をするなといっているわけではない。ただ言いたいことがあるのなら軍議の場で行ってくれればいいんだよ。俺にも間違うことはあるからな。それからお前はどうも人死に関しては敏感に動きすぎる。戦争の場なんだからもう少し犠牲に鈍感になれ。じゃないと心が持たんよ。」
「そうですか。どうにかしようと思います。」
「すぐにはなれるもんじゃない。時間をかけてゆっくりと直せ。もうよい少し信者たちにあってから俺は練る。明日からもやらねばならないことがいっぱいある。だからお前も休め。」
そういうと藤田は信者たちに会いに行く。僕は部屋に一人残される。誰もいないことを確認すると一言呟く。
「死にたいして敏感すぎるか。」
大野の元を出る前に先生からの伝言として聞いた言葉を思い出す。
「お前の人間的な部分は人としては大事なのもかもしれないが軍人としては無用なものだ、か。」
どうやら僕はいまだに甘さを捨てられていないらしい
投稿が遅れてしました。最近は投稿が不安定になりがちですね。できるだけ金曜には投稿できるようにはします。




