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俺の戦記  作者: かな河
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79話 戦争と宗教(6)

 僕は藤田とともに統制派の援軍を迎え撃つ準備を整える。信者の軍を戦闘中に統制することはできないので予定戦場を見て回ることしかできない。だからこそ予定戦場付近を見て回り、どのタイミングでぶつかり合うかを考えることが大事になってくる。予定戦場の位置は城の城門につながる大通りなどの複数の道である。さらに吉田から5人ほどの兵を借り、偵察を行わさせる。信者の情報は量自体は多いものの信用度が低い。吉田の兵は兵士としての訓練をしっかりと受けているので農民と比べれば偵察で得た情報は信用が置ける。もちろん大野家にいた兵に比べれば、いやこのことは考えないようにしよう。今の僕は大野家につかえる遠藤ではなく、藤田悠希に使える佐藤太一だ。今のこの状態にでそんなことは考えてはいけない。不審におまわれないようにするためにはこのことは考えないようにすることだ。偵察に行かせた兵の情報と信者からくる膨大な情報を組み合わせて考えると敵軍の大雑把な位置と予定戦場に到着するであろう日程がわかってくる。しかし問題はどの予定戦場にたどり着くかはいまだにわかっていない。なぜなら予定戦場はすべてが城の近くにあるため、敵が近くに来るまでは戦場を絞りむことができない。仕方がないのですべての予定戦場で確認を行っている。ちなみに吉田は城攻めに集中している。でなければ城攻めのほうが終わってしまう。もし城攻めが終わってしまうと援軍が途中で引き揚げてしまうかもしれない。だから吉田にはこの計画に関わらせていない。ついに敵の距離が近づき予定戦場が確定する。それと同時に藤田が信者を集める。吉田にはすぐにでも城を落とせるように準備をするように伝える。

 ついに敵の援軍が近くに来たという情報を手に入れる。僕たちはまた軍議を開き最後の確認を行う。藤田が言った。

 「動きを確認するぞ。吉田、お前はどうする。」

 「農民軍と援軍の戦いが始まったのを確認と同時に城を落とし、そのままもう一つの城のほうに向かう。」

 「問題ない。進軍速度はできるだけ早くしろ。虚を突けば城の内部の敵を少しでも減らすことができるからな。」

 「分かっています。そして農民軍が来るまでひたすら耐えて待ちます。」

 「そうだ。佐藤はどうする。」

 「僕は農民軍を組織を手伝い儀式の準備を進めます。儀式が終わり次第、攻撃に移れるように準備を整えます。」

 「それでいい。絶対に儀式を行え。そして何があっても儀式を終わりまで取り仕切れ。これが一番大切になる。」

 「わかりました。しかし途中で攻められたりした場合でも続けろというのですか。」

 「そうだ。何があってもだ。」

 藤田はそのまま軍議を打ち切る。各々持ち場に着き準備を始める。藤田は信者を集める。そして農民軍を組織し始める。それを僕が手伝う。援軍は僕たちからの攻撃を警戒してなのか城から少し離れたところに陣を敷きそのまま野営の準備を始める。それを見て藤田は儀式の準備を始める。農民軍には武装状態のまま儀式に参加させる。ここまでは既定路線あるので何も問題はない。儀式についての相談のために藤田のもとに向かう。しかし藤田は自信に満ちた顔をし「問題ない」とだけ答えた。しかし藤田の顔はとてもまともな人間の顔ではなかった。僕は藤田に言われたことを無視して慌てて水面下で儀式の準備を止めようと動いたがよほど藤田は念入りに動いていたらしく止められずについに儀式が始まってしまった。儀式が始まると僕にできることは何もなく、藤田に事前に指示された動きに従いながらただひたすら無事に終わることを祈ることしかできない。しかし問題は起きた。儀式の途中に攻め込まれたのだ。たぶん全員がろくに警戒もせずに儀式に参加していたのが裏目に出たのだろう。僕は慌てて農民に指示を出そうとしたが藤田に思いっきりたたかれ思いとどまる。農民たちは何もきずかない。壇上の様子も後ろから攻撃が行われていることについてもである。そして藤田もひたすら儀式を続ける。後ろのほうにいる農民たちは無抵抗で殺されていく。それでも農民も藤田も何も起きていないという顔でひたすら儀式を続ける。さすがに敵は抵抗もせず逃げもせずにいる集団が不気味になったのか、攻撃の手を緩める。しかし藤田はそのことも気にせず儀式を続ける。そして農民たちの興奮が最高潮になったときにいつも通り儀式は終わる。そして藤田は唱え始めた。

 「シイテコオスクイウノレオカイホウセヨ」

 徐々に農民たちもいいはじめついにまた一つの音になった。またそれと同時に敵に向かってただひたすら前に向かう、誰一人として後ろに下がろうとしない、あの攻撃を始めた。

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