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俺の戦記  作者: かな河
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77話 戦争と宗教(4)

 僕は、藤田とともに吉田のもとに向かった。吉田と合流するとこの間、藤田と僕で考えぬいた策を伝える。僕もこの作戦を伝えるのには大きな不安がある。どうしても吉田の負担が大きくなってしまうからである。しかし驚いたことに吉田はこういった。

 「やるべきことはこれだけでいいのか。それなら簡単だ。」

 それを聞くと藤田は言った。

 「やっぱりそういうか。お前ならそういうと思ったよ。とにかくこの役目はお前に任せた。」

 「いくらでも受けてやりましょう。」

 そういいながら不敵にも吉田は笑い出した。

 次の日、僕と藤田は一度民衆を解散させる。その際に次に僕たちが行くべき城の名前を言いそこで待つと一言残していく。その城はここらの統制派の小領主をまとめて取り仕切っている地域の有力者の住む城へである。吉田は僕たちと別行動で向かう。吉田のもとにいる正規の兵も一度解散しばらばらになりながら城へと向かう。僕たちはむこうの城に着くと吉田の正規兵が全員、現れるのを待つ。その間に城下町ではある問題が頻発した。それは藤田の支持者が町の中に入り込み、役所に襲い掛かるということだ。もちろん裏では僕たちが糸を引いている。襲い掛かる役所は決まって税金の徴収窓口、軍事施設など民が日頃から快く思っていないところを狙って攻撃している。そうすることで支配体制の弱体化を図りつつ民からの反感を買うことを避けるようにしているのだ。吉田の兵の数は全体で500人。現在は負傷者がいるため400人ほどになってはいる。全員、集まるまでにしばらくの時間が必要になった。兵士が全員が集まると吉田は一か所に兵士を集める。そして城に向かい大規模な攻撃を仕掛けた。今回は僕たちは自分たちの身の安全のため吉田の軍とともに行動している。ちなみに攻撃の結果は失敗に終わっている。というのも藤田の支持者が町で暴れまわったせいで城の門が常に閉ざされた状態になり、城の内部を選挙することができなかったからだ。その日の夕方、野営地の中心で三人で集まったときに吉田が言った。

 「作戦の第一段階は成功させました。あとは敵が策に乗ってくるのを待つだけです。」

 藤田が言った。

 「よくやった。しかしここからが大変なんじゃないか。」

 「そんななことはありませんよ。普通の将軍ならばそうかもしれませんが私は近衛兵の士気を担当し続けてきた吉田家の棟梁ですよ。田舎の貴族相手にこのくらい楽勝ですよ。」

 「そりゃ、そうか。昔お前が持っていたのはあの近衛兵だものな。」

 二人が顔を見合わせて大笑いをする。僕はいったい何のことなのかまるで分らず、ぽかんとした顔をしながら二人のことを見ているとその様子に気づいた藤田がこう言った。

 「近衛兵と聞いて何を思い浮かべるか行ってみろ。」

 僕は返した。

 「選りすぐりの先鋭と聞いていますのでまず戦いたくないと思いますね。」

 それを聞いて二人がまた笑い出す。藤田が言った。

 「それは大間違いだ。いや正確には在っているのだが近衛兵に選ばれる資格は兵の腕っぷしではなく家柄だ。つまり近衛兵は大清帝国の領内を探し回ってもどことも比べることができないほど弱い軍団だったよ。」

 「そうですか。しかしそれが今回のことと何が関係あるのですか。」

 今度は吉田が返す。

 「年に一回、国中の軍を集めて行う大演習がある。しかしそこで近衛軍のその脆弱ぶりを地方の貴族に知らせるわけにもいかないので毎年、毎年先祖代々うちの家は頭を捻ったものだよ。」

 「おかげで近衛兵の弱さは中央の一部の大貴族たちにしか知られずに済んだわけだよ。いやほんとにあれには助かったよ。俺としても吉田家の功績には感謝せずにはいられない。今度は、まともな兵を与えたわけだし、普通の形で功績を残してくれよ。」

 ここまで聞いて僕もようやく意味が分かり笑い出す。少しの間笑い続けたと僕は言った。

 「いろいろな経験をしておくものですね。本当にどこで何が役に立つのかわかりませんね。」

 藤田が笑いながら言った。

 「いやいや、大清帝国時代からその特技は役に立っていたぞ。なんやかんや言って最後の20~30年は近衛兵のおかげで政権が維持できたようなものだからな。」

 僕たちはもうひと笑いした。と同時になぜあれだけの自信をもってこの作戦を吉田も藤田もできると言い切ったのかがよく分かった。普通の軍人ならこれだけのことをやるのは嫌がる。なにせ作戦が失敗してしまう危険性はそもそもものすごく高いし、成功したとしても吉田の手元にいる兵は全滅に近い状態になる可能性が高くなる。

 次の日の朝、吉田はものすごく苛烈な城攻めを始めた。ただ城を囲い兵糧が尽きてしまうのを待つのではなく、城の中に入り敵を全滅させんとするような城攻めだ。しかも吉田の兵はとんでもなく勇敢であるように見える。たぶんこのくらい優秀な兵は世界中のどこを探してもいないだろうというくらいだ。そして吉田もとても近衛兵を指揮していたとは思えないほどの優秀な指揮官だ。しかし敵も簡単には引かない。なにせ向こうは城壁を使い身を守っているのだから。こうしているうちに何日も何日も経ってしまった。

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