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俺の戦記  作者: かな河
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76話 戦争と宗教(3)

 僕はある夜、藤田に相談を持ち掛けられた。

 「このままではまずい。」

 「どういうことですか。」

 「進行速度のことだ。」

 「しかしそれは吉田殿が精一杯、力を注いでいるいるので待つしかないのではないでしょうか。」

 「そういうことを俺が言ってほしいのではないことくらい付き合いが短くてもお前ならわかるだろ。」

 「すいません。少し考える時間をください。」

 現状を説明しよう。現在軍を藤田都僕が率いる農民軍と吉田が率いる正規兵の軍の二つに分けている。おもに僕らが攻めているのは兵糧が詰まっている倉庫や役所である。その間に吉田が正規軍を率いて城を落とす。農民だけで城を攻めるのは犠牲が出すぎるためやらず、すべて正規軍に任せることにしたのだ。ここらにいる統制派の軍は基本的に数が少なく練度も低い兵である。大野たちが治めている地方に軍の大部分が遠征しているためだ。だからこそ攻城戦でもあっという間に勝負がつく。そして連戦連勝ではある。しかし領土の拡大速度はそこまで速くない。というのもここらは城の数が多い。ここらも多くの小国に分かれているためである。しかし領土を大きくしないことには得られる物資の量も少なく、作戦の遂行能力がいつまでも低いままになってしまう。そのことを藤田は問題にしているわけである。しかし領土の拡大速度を大きく上げるためにはこちらの能力が高まらない以上、敵の戦力を減らすこと以外の方法はない。敵の戦力を大きく減らすためにはこれしかない。その方法を藤田に言うと藤田が返す。

 「やはりそれしかないか。なら今すぐに詳細をここで詰めるしかないな。」

 「藤田様、吉田を呼んでこなくてもよいのですか。」

 「別にかまわないだろう。原案をここで練って、それを向こうがきたときにもう一度詰めればいい。俺は多少だが軍事を学んでいる。さらに言えばお前は多少といった段階ではなく学んでいる。」

 そういわれ僕は少しの不安を覚える。もしかすると藤田は僕の素性を調べているのではないか。しかしそんな僕の不安を抱いていることには藤田は気がつかないでいる様子のまま言った。

 「お前が屋敷で読んでいる本を調べさせてもらっただけだ。お前が個人で保管している本はもちろん屋敷の蔵書の中から選んで読んでいたものからすべて調べさせてもらった。その中に軍事についてそれもかなり高度なものが混じっていたから気がついただけだ。どうせお前のことだ実践の経験がないことを不安に思い、学んでいることを俺に伝えなかったのだろう。」

 少し僕は安心する。どうやら身元がばれたわけではなさそうである。さらに学んでいることも不審に思われることもなく理由付けされたなら一安心である。しかしこれからはもう少し警戒を強くしなければならない。僕は藤田にこういった。

 「実践経験のない机上の兵学でよろしいのなら手伝いましょう。」

そう決まると僕たちは作戦を練り始めた。




 俺は松本家にお願いしておいた設定してもらった梅田家との会談に向かう。面会の場所は梅田家からの希望で敵の城の近くとなった。どうやら攻略がほとんどすすんでいないようで焦っているようだ。会談の場では簡易的な小屋に机といすだけが置かれ中にはすでに梅田家当主の梅田 香帆(うめだ かほ)が待っていた。俺は梅田にうながされて梅田に机をはさんで向かい合う形で席に座る。前回の会議では向かい合うことがなかったし、疲れていて気がつかなかったが梅田はきれいな女だ。やばい、話が変なところに行くところだった。梅田が切り出す。

 「この度は援軍を引き受けていただきありがとうございます。」

 俺が返す。

 「そんなことはどうでもよい。援軍の条件についてすぐに話会おう。自分の領土から長く離れていたくない。もちろんちゃんと援軍としての役割は果たすよ。」

 「そうですか。ではこちら側としては200人の兵を貸していただければいいです。」

 「それは兵だけでということか。」

 「はい。そしたらあとはこちらの指揮下の組み込まさせてもらいます。もちろん戦が終わり次第返還します。」

 「それはだめだ。うちの軍との合同戦線を組ませてもらう。それがこちら側としては譲ることはできない。」

 向こうは少し恨みっぽい顔をする。たぶん自分の作戦能力のなさを指摘された気分になったのだろう。他家に自ら願い出て合同戦線を組むというのは武門の家の人間としてはあまり気持ちのいいものではない。なぜなら他家と組まなければ勝つことができないと自白するものであるからだ。梅田が言った。

 「女だからといって舐めないでください。作戦の遂行ぐらいできます。」

 俺は言った。

 「そういうことではない。こちらとしてはよくわからない相手に兵を貸すことはできないからこう言っている。この条件で以外貸すことはできない。」

 梅田はしばらくの間黙って考えてから言った。

 「分かりました。」

 かなりしぶしぶといった感じではある。気にせずに俺は言った。

 「見返りには領土の分割の際に我々が提示する案に賛成することだ。」

 「分かりました。」

 「兵の数は250人だ。うちの出せる兵数の最大数だ。」

 「分かりました。」

 こうして梅田との会談はあっけなく終わった。

今回は思ったよりも長くなりました。もしかしたら来週も長めになるかもしれません。

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