75話 戦争と宗教(2)
僕たちが二日間、寝ずに頑張って手に入れた支配下に政治などを行き届かせる。本来なら二日という短期間では終わらないような作業ではあるが入念な議論と準備によって終わらせることに成功したのだ。僕はしらなかったことなのだが議論して決まったことはできる範囲で実行するときのための準備が進められていたのだ。すべての準備が終わると藤田のもとに向かう。藤田は僕たちが内政を進めている間にも三つほどの城を落としていた。もちろん大量の死体を残しつつである。僕たちはその様子を見ながら新たに手に入れた土地の戦後処理を行いながら藤田のことを追いかけた。僕たちが追いつくころには藤田はまた一つ新たな城を落とす作戦の途中であった。僕たちは藤田に会うために本陣に行った。藤田は本陣のどこからでも見える位置で微塵も動かずに立っていた。陣にいる農民も不気味なことに何も言わず、そして微塵も動かず、城をにらんでいる。吉田の提案によって僕たちは仮面とマントをつけた状態で藤田の前に出てひざまずく。藤田は僕たちのことがまるで見えていないかのように動かずにいる。そのままかなりの時間がたつ。敵の兵たちは時々こちらに対して挑発してくるがこちらからの動きはない。しかし藤田が突然右手を上げ大声で何かを唱え始める。すると農民たちも唱え始める。最初は全員が違う部分を唱えていたものがそろい始める。ついには一つの声になる。
「シシテコオスクイオノレオカイホウセヨ」
藤田が右手を振り下ろすと唱え続けたまま敵に向かいゆっくりと進行する。そして虐殺とその味方の死体を踏みながら敵兵に無謀に向かっていく惨状が始まる。ただし前回と違い敵は城にこもり続けているのだからこちらの攻撃は簡単には届かない。しかしそれでもついには城門が破られそこから中に入る。なだれ込むのではなくゆっくりと歩きながら入っていく。いくら殺されようとお構いなしという感じでだ。そして今回も大量の死体を残し戦が終わる。藤田は戦が終わると城内に入る。僕たちは藤田の後ろを歩く。藤田は信者に声をかけたり抱き合いながら何かを語り合う。すると信者たちは不思議なことに目に少し生気がともる。そうやりながら二時間も三時間もかけながら城を一周する。城の本丸の中でもそうやりながら一番奥まで行く。一番奥の誰もいない部屋まで行くとようやく藤田は俺たちに声をかける。
「仮面を取って構わない。この短期間で内政を敷いてくれたのか。よくやってくれた。」
藤田は俺たち全員の顔をゆっくりと見ながら言った。それからこういった。
「この後については飯を食いながら話そう。」
そういうと横にいるものに言い、飯を持ってこさせる。すると大量の骨付きの肉が運ばれてくる。運んできた者たちを部屋から出すと藤田は手で直接、肉をつかみ噛り付く。他の者たちも食らいつく。僕も周りを見習い肉を食べる。かなり濃い味付けだ。食事がひと段落着くと藤田が言った。
「今後についてだが軍を二つに分ける。一つは吉田が率いる正規軍。もう一つは俺と佐藤が率いる農民軍だ。お前たち二人は領地で内政と外交に専念しろ。何か言いたいことはあるか。」
誰も異論がなく、このまま会議は終わる。僕はなぜ自分が藤田と一緒に農民軍を
率いることになったのかを不思議に思いながら会議を去っていく。




